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水無月とは?名称の由来や語源、和菓子についても解説

水無月(みなづき、みなつき)とは、旧暦の6月をさす和風月名(わふうげつめい)。現在では新暦の6月の別名ともされているが、本来は新暦とは1~2カ月のずれがあり、2023年は7月18日~8月15日にあたる。また、この季節に作られる和菓子の名称としてもおなじみだ。

 
本記事では、

 
・水無月という和風月名の由来
・この時期の風習「夏越の祓」
・和菓子の水無月について

 
を解説する。

 
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旧暦6月の「水無月」

 
日本では、旧暦6月を「水の無い月」と書いて「水無月」と呼び習わしてきた。6月と聞いて梅雨を思い浮かべる方にとっては、やや違和感のある名称だが、この和風月名の由来はどんなものなのだろうか?

 

「水の無い月」か「水のある月」か

水無月の由来は諸説あるが、水無月の「無」は「ない」ではなく、連体助詞の「の」であり、水無月=「水の月」であるとする説が有力だ。

 
旧暦6月は田植えの時期にあたり、その田植えが一段落して田に水を引く「水張月(みずはりづき)」「水月(みなづき)」を語源とする説も、「水の月」と似た考え方だ。人々の暮らしを支える一大仕事だった田植えを仕終えた月、すなわち「皆仕尽(みなしつき)」であるとする説もある。

 
「な」を「鳴」とし、水の力が鳴り響く月と考え、水の力が新たな事物を生み出す月、という説もある。田んぼの稲の成長と結びつくような、生命力溢れる名称だ。

 
また、田植えを終えたこの時期は、梅雨があけて日照りが続くタイミングでもあり、暑さで水が干上がる「水の無い月」という説も、文字通りの語源として現代の我々には理解しやすい。

 

旧暦の6月は現代のいつ?

そもそも、旧暦の6月とは現代のいつにあたるのか?旧暦6月とは、旧暦の年初から数えて6番目の月のこと。新暦に置き換えると6月末から8月初旬にあたる。

 
旧暦6月は「季夏」とも呼ばれるほか、風待月(かぜまちづき)、常夏月(とこなつづき)、青水無月(あおみなづき)、涸月(こげつ)、鳴神月(なるかみづき)、林鐘(りんしょう)、葵月(あおいづき)、涼暮月(すずくれづき)、松風月(まつかぜづき)などのさまざまな異称がある。

 
ちなみに旧暦とは、明治6(1873)年に太陽暦が採用される前まで日本で使われていた太陰太陽暦のこと。月が新月となる日を、各月の始まりと考えた。そのため、一カ月の長さは新月から新月までの約29.5日となる。旧暦の年初は年によって異なり、新暦の1月下旬から2月下旬となる。

 

水無月の夏越の祓(なごしのはらえ)

 
宮中では、旧暦6月と12月の晦日(みそか)に「大祓(おおはらえ)」という禊(みそぎ)の行事を行なっていた。これが全国の神社にも広まり、半年に一度、心身の不浄を清める「夏越の祓」と「年越の祓」となった。

 
夏越の祓の代表的な行事は「茅(ち)の輪くぐり」。神社の参道などに大人の背丈ほどもある大きな茅の輪が設けられているのを、目にしたことがある方も多いだろう。この輪をくぐることで穢れを払い、無病息災や家内安全を願う。

 
くぐり方は各社により違いがあるが、一般的には横倒しの「8の字」を描くように、左回り、右回り、左回りと3回くぐり、最後に正面からまっすぐくぐって、神社に参拝する。「水無月の夏越の祓する人は 千歳の命延ぶといふなり」という『拾遺和歌集』の歌の詞を、唱えながらくぐることもある。

 
また、神社では「人形代(ひとかたしろ)」という人の形をした紙に息を吹きかけ、その人形で体をなでて穢れを移し、それを川や海に流すというお祓いも行われている。

 

和菓子の「水無月」

 
京都では6月30日に、三角形に切った白い「ういろう」に、炊いた小豆をのせた「水無月」という和菓子を食べる風習がある。この形は、氷室から切り出した氷を模しており、小豆の赤色には邪気払いの意味が込められている。京都の夏越の祓に欠かせない季節の銘菓だ。

 
作り方は、小麦粉、米粉、砂糖を混ぜ、水で練った「ういろう」生地を蒸籠に流し込んで蒸し、その上に大粒の小豆や甘納豆をのせて再び蒸し上げるというもの。食べる前に少し冷やし、涼感を楽しむ食べ方もおすすめだ。近年は抹茶味や黒糖味など、生地のバリエーションも豊富。米粉ではなく葛粉で作る和菓子店もある。

 
なお、旧暦6月1日は「氷の朔日(ついたち)」と呼ばれ、平安時代の宮中では、西賀茂地区の氷室に保存していた氷を食べる「氷室の節会」という暑気払いの風習が行われていたという。本格的な夏を前に、涼をとる風雅な行事であったことだろう。

 
当時、高級品である本物の氷を口にすることができなかった庶民は、氷の形を模した水無月や、冬の間に餅を寒ざらしして乾燥させた「氷餅」などを食すようになった。これがやがて、夏越の祓の行事食として定着したというわけだ。

 

水無月のほかの和風月名

 
水無月は旧暦の6月。では、ほかの月名は?ここでおさらいしておこう。

 
1月:睦月(むつき)
2月:如月(きさらぎ)
3月:弥生(やよい)
4月:卯月(うづき)
5月:皐月(さつき)
6月:水無月(みなづき、みなつき)
7月:文月(ふみづき、ふづき)
8月:葉月(はづき、はつき)
9月:長月(ながつき、ながづき)
10月:神無月(かんなづき)
11月:霜月(しもつき)
12月:師走(しわす)

 

半年を振り返り心穏やかに過ごす

水無月は、1年の折り返し地点に当たる季節。この時期の日本は気温や湿度が高く、夏バテなどの体の不調を感じ始める時でもある。半年がんばった自分をねぎらい、ここで一息ついてみてはいかがだろう。

 
近所の神社で茅の輪を見かけたら、ぜひ立ち寄ってみてほしい。アジサイやクチナシなどの花に目を向け、鳥のさえずりに耳を傾け、季節の変化を感じる……そんな小休止をしてから、残りの半年へ向けて気持ちをリフレッシュしたい。

 
 

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