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まさかり形の半島で自然の恵みを満喫
四方を津軽海峡、太平洋、陸奥(むつ)湾、平舘(たいらだて)海峡に囲まれ、明治時代には会津から多くの人々が移り住んだといわれる下北半島。“まさかり”のようなユニークな形のこの半島には、古くから人々の心の拠りどころとされてきた「恐山(おそれざん)」、本州最北端の町であり豪快なマグロの一本釣りで知られる「大間町(おおままち)」など、雄大な自然を感じられる名所がたくさんある。
まさに“青い森”と呼びたくなるような木々が生い茂る山道を駆け抜け、表情をくるくると変える海を眺めながら周遊できるこの半島は、どこを走っても極上のドライブコース。最北端の半島だからこそ楽しめる風景や、ここでしか味わえない味覚を探しに出かけてみよう。
下北半島の祈りの地、「恐山」へ
最初に訪れたのは、比叡山や高野山とともに、「日本三大霊山」のひとつともいわれる「恐山」。釜臥山(かまふせやま)をはじめとする下北半島の中央に連なる山々がこう呼ばれており、長きにわたって下北半島の人々が心の拠りどころとして信仰してきた。「恐山菩提寺」の創建は862年。慈覚大師円仁(じかくだいしえんにん)が夢のお告げに導かれ、開山したと伝えられている。
草木が生い茂る山道を車で上っていくと景色が明るく開けていき、「霊場恐山」に辿りつく。まずは菩提寺にお参りして、参拝コースへ。そこには火山活動が生み出した迫力のある景観が広がり、古くから「この世とあの世をつなぐ場所」と考えられてきたというのもうなずける。ごつごつした岩肌はときに地獄にたとえられ、いつしか「地獄谷」「無間地獄」など、場所ごとにさまざまな名前がつけられるようになったという。
地獄のような風景の果てに見えてくるのは、まるで鏡のように山々を美しく映し出す「宇曽利湖(うそりこ)」。白い砂浜が広がる湖のほとりは「極楽浜」と呼ばれ、この世のものとは思えない神秘的な風景に、時を忘れてしまいそうになる。
昔から「死ねばお山に行く」といわれてきたように、「恐山」は地元の人々のあつい信仰と共に大切にされてきた。人々が死者を弔い祈りを捧げてきたこの場所で、ひととき自分と向き合い、生と死について思いを馳せてみてはどうだろう。
霊場恐山/恐山菩提寺 自然 歴史文化
住所:青森県むつ市大字田名部字宇曽利山3-2
電話:0175-22-3825(恐山寺務所)
URL:https://aomori-tourism.com/spot/detail_47.html(青森県観光情報サイト)
※開山期間は、毎年5月1日〜10月31日
室町時代から続く海辺の温泉で疲れを癒やす
数々の秘湯を巡るのも、下北半島を旅する楽しみのひとつ。半島の北側にある風間浦(かざまうら)村には、室町時代より続く「下風呂(しもふろ)温泉郷」がある。温泉好きのみならず、地元の人々にも愛されている海辺の温泉郷だ。海から山の斜面にかけていくつもの温泉旅館が並び、目の前には「津軽海峡」のパノラマビューが広がる。
旅の疲れを癒やそうと選んだのは、「下風呂温泉 海峡の湯」。かつてこの温泉郷には、泉質の異なる共同浴場「大湯」と「新湯」があり、長く愛されてきたが、2020年、老朽化のために惜しまれつつ閉鎖。その両方の湯を楽しめる新しい浴場として誕生したのがこの温泉だ。
男湯と女湯、それぞれに白濁した「大湯」、透明に近い「新湯」の2種類の浴槽があり、いずれも源泉かけ流し。浴槽はもちろん、壁など至る所に特産の「青森ヒバ」が使われており、その香りにも癒やされる。熱めの湯の違いを楽しみながら津軽海峡を眺め、爽やかな海風に吹かれるのも心地よい。
下風呂温泉 海峡の湯 体験
住所:青森県下北郡風間浦村下風呂字下風呂71-1
電話:0175-33-2116
URL:https://www.yukaimura.com/kaikyonoyu.html
厚切りの「大間まぐろ」を心ゆくまで堪能
下北半島をさらに北上して、本州最北端の町、大間町へ。やってきたのは、旅人のみならず、地元の漁師たちにも愛される温泉施設「おおま温泉海峡保養センター」。お湯の快適さもさることながら、全国にその名が知られるブランドマグロの「大間まぐろ」を目当てに訪れる人が後を絶たない施設でもあるのだ。
併設のレストランで注文したいのが「大間産まぐろ丼」(3,850円/税込)。濃厚な味わいの赤身、口溶けのいい中トロ、脂の旨味を楽しめる大トロの3種の部位がバランスよくのせられ、しかもかなり厚切り。メニューに登場するのは不定期なので、確実に食べたいときは予約がおすすめだという。
同施設は日帰り入浴だけでなく、宿泊もできる。その場合はぜひ、「大間まぐろ・陸(おか)まぐろ(大間牛)食べ比べプラン(1泊2食付き)」を予約したい。夕食には「大間まぐろ」と共に、「陸まぐろ」と称される「大間牛」が提供され、「すきやき」か「陶板焼」かを選んで、贅沢な食べ比べが楽しめるのだ。
「うちでは漁のシーズンが始まると、年間を通して質の高いマグロを提供できるように買い付けして、鮮度がいいうちにマイナス60℃で急速冷凍して提供しているんです」と話すのは、同施設の副支配人、正根千草(まさねちぐさ)さん。心ゆくまでマグロを楽しんだ後は温泉に浸かり、部屋でのんびり寛ぐのも最高だ。
おおま温泉海峡保養センター 食
住所:青森県下北郡大間町大字大間字内山48-1
電話:0175-37-4334
URL:https://www.omaonsen.com/
美しいブドウ畑が広がる北のワイナリー
下北半島でブドウ栽培を始めて20年以上。「サンマモルワイナリー」は、自社農園のブドウを使ったワインを醸造する、本州最北端にあるワイナリーだ。工場が併設された直営ショップを訪れると、すくすくと若い木が育つブドウ畑が迎えてくれるのがうれしい。
「下北半島の気候はフランスのブルゴーニュ地方に近いといわれていて、特にこのワイナリーのある地域が、ワイン用のぶどうの栽培に適しているんです」と教えてくれたのは、支配人の笠井哲哉さん。ブルゴーニュの代表品種「ピノ・ノワール」の他、「ライヒェンシュタイナー」や「シュロンブルガー」など、日本では希少な品種が育つのも、下北の冷涼な気候ならではだという。
店内には30~40種類の多彩なワインが並ぶ。その中で、クマのエチケットが目を引く「下北ワインDanger」は、華やかな果実感とすっきりとした酸味のバランスがよい白ワインだが、実はこんなエピソードがあるという。「近年、畑のブドウをクマに食べられてしまう被害に悩まされています。クマも食べたくなるほどの甘い品種のブドウで造ったのが、このワインなんです」と、製造部の吉田詠実(えいみ)さん。
1本1本に込められたつくり手の想いを感じながら、好みの味を探すのもワイナリーを訪れる醍醐味。気になったものはテイスティングもできる。持ち帰ったワインと共に、旅の思い出を反芻するのも楽しみだ。
サンマモルワイナリー 食 買物
住所:青森県むつ市川内町川代1-6
電話:0175-42-3870
URL:https://www.sunmamoru.com/
大地の味を楽しめるソフトクリーム
「青森三大ソフトクリーム」のひとつとして、全国のソフトクリーム好きにその名を知られている「ミルク工房 ボン・サーブ」。下北半島にある「斗南丘(となみがおか)牧場」直営の工房だ。自社牧場の生乳を75%という高い配合率で使って作られるソフトクリームは、地元でも熱いファンが多い。
のどかな風景と自社牧場を遠くに眺めながら、最初のひと口を。そのピュアな味わいは、濃厚なのにすっきりとして、口の中で軽やかに溶けていく。「元気な牛のおいしい牛乳で乳製品を作るため、牛舎の中は牛が自由に歩き回れるように整えて、健康的に飼育しているんです」と教えてくれたのは「斗南丘牧場」の社長、原英輔さん。聞けば、牛たちは自社で栽培した牧草やトウモロコシなどを食べているのだという。健やかな牛のミルクはまさに、下北半島の大地の味なのだ。
最初は基本の「みるく」を味わうのがおすすめだが、他のフレーバーも魅力的だ。「モカ」は工場でコーヒーをドリップして加え、「ワイン」は前出の「サンマモルワイナリー」の「下北ワイン」の赤ワインと白ワインの両方を使う。生乳のおいしさをいかしながらも、フレーバーの香りや風味のよさもしっかり感じさせてくれる、ここでしか味わえない極上のソフトクリームだ。
ミルク工房 ボン・サーブ 食 買物
住所:青森県むつ市田名部字内田42-606
電話:0175-28-2888
URL:http://www.tonamigaoka-farm.com/
手付かずの自然に心動かされて
下北半島は本州最北端にあるからこそ、守られている大自然がある。手付かずの自然だけが見せてくれる絶景があり、名もなき風景にまで心を動かされる。さらには、海や山がもたらす、極上の食の恵みもある。わざわざ時間をかけて足を運ぶからこそ、その感動もひとしお。この半島はきっと、新しい旅の魅力を教えてくれるに違いない。
※掲載施設の情報は変更されていることがあります。お訪ねの際はあらかじめご確認ください。
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