目次
太平洋・日本海・津軽海峡が囲む、広大な渡島半島
北海道の南西部に位置する渡島(おしま)半島は、太平洋、日本海、津軽海峡という3つの海域に面した半島だ。それぞれの海からの新鮮な魚介類や、駒ヶ岳に抱かれた町で楽しむグルメ、豊かな水が生み出したおいしいものを発見しに行こう!
大沼湖畔に佇むカフェレストラン「ターブル・ドゥ・リバージュ」
大沼公園広場から、散策路を歩きながら10分ほど。いくつかの小島を巡り、アーチ形の湖月橋のほとりに見えてくる「ターブル・ドゥ・リバージュ」。
店内には真空管アンプが置かれ、静かにジャズが流れるが、窓の外からは鳥のさえずりが聞こえてきて、夕方になると虫の声も加わる。お客さんに、鳥の声はBGMとして流しているの?と尋ねられることもあるそうだ。
おすすめはビーフシチュー。大きなお皿になみなみとデミグラスソース、大ぶりの大沼牛、近郊で採れた新鮮な野菜と、ボリュームたっぷり。
「北海道らしく、ちょっと野趣溢れる感じというか、具材も大きめにしています。デミグラスソースは3時間以上かけて作っています」とスタッフの林智子さん。
デザートにおすすめしたいのは、アップルパイ。ここ七飯(ななえ)町ではリンゴ栽培が盛ん。日本で初めて西洋リンゴが栽培された地でもあるという。
そして、湖畔から出発する「湖上クルーズ」も人気だ。5月から10月中旬の期間限定で、遊覧船で大沼を約30分間巡り、景色と一緒にランチやお茶を楽しむことができる。
「ここはね、あまり変わらないのがいいですよ。この静かな時間は、なかなかない」。大沼で生まれ育った川村さんは言う。国定公園だからこそ、変わらない景色。車も通らず、静かに移ろいゆく自然を感じることができる。
ターブル・ドゥ・リバージュ 食 自然
住所:北海道亀田郡七飯町字大沼町141
電話:0138-67-3003
URL:https://gengoro.jp/rivage/
※雪のため冬期間はお休み。2024年度は12月いっぱいまで営業予定。
駒ヶ岳の麓で生まれた「大沼ビール」を味わう
大沼公園の近くで造られているクラフトビールがある。1997年よりビール製造を始め、今年で28年目となる「大沼ビール」だ。専務取締役で醸造を担当する蜂矢寛さんにお話を伺った。
大沼ビールは、麦芽の味わいを楽しめるドイツスタイル。仕込み水は、横津岳の伏流水で、アルカリ性の軟水で口当たりがとても柔らかいのが特徴だという。
淡い金色ですっきりした飲み口の「ケルシュ」はどんな料理ともあわせやすく、コクがあって香ばしい「アルト」は肉料理に、ホップの香りが強い「インディア・ペールエール(IPA)」はスパイスの効いたドライカレーにおすすめ。
前出の「ターブル・ドゥ・リバージュ」でも味わえるほか、大沼公園周辺では、「道の駅 なないろ・ななえ」、コンビニエンスストアなどでも販売している。
最近では、長期熟成させて楽しむ「かんこま地ビール」も話題になった。こちらは七飯町、森町、鹿部(しかべ)町のみでの限定販売。この「かんこま」には「環・駒ヶ岳」の意味が含まれている。駒ヶ岳を囲む地域全体で盛り上げたいとの思いから。
蜂矢さんに渡島半島の魅力を伺うと「やはり、水資源には恵まれていますよね。そして渡島半島は広いので、何日かに分けて周って、それぞれの町を楽しむことができる地域なんじゃないかなと思います。地域の魅力を発信できるお手伝いにビールを通じて取り組みたいですね」と語ってくれた。
大沼ビール 食 買物
電話:0138-67-1611
URL:https://onumabeer.com/
噴火湾のたらこを新たなお土産に。注目集める「たらすみ」
大沼公園から、車で20分ほどの鹿部町。ここは、太平洋・噴火湾(内浦湾)に面した漁業の町。スケソウダラの卵を使った、たらこの生産が盛んだ。
「スケソウダラは、産卵のために12月に噴火湾に入ってくるんですよ。一番、皮が薄くて成熟している卵を使って、たらこを漬けているので、きめが細かく粒がサラサラしています。それに漁港までは車で5分ほど。仕入れて、すぐにさばいて漬けることができるんです」と、一印高田水産・専務取締役の高田未花さん。
そして、良質なたらこが手に入る環境だからこそ、大きすぎて規格外になってしまうたらこへの思いがあったという。
「大きなたらこは、ほぐして販売していたのですが、イクラは、ほぐせば価値が上がるのに、たらこは価値が下がってしまう。かわいそうだな、と社長である夫が言うんですね」
そんなとき、偶然、カラスミの作り方を知り、たらこでもできるんじゃないかと思いつく。そこから、大きなたらこを使った商品開発が始まった。鹿部町をはじめ、大学の先生や、さまざまな人々の協力を得て、約5年をかけて「たらすみ」が完成した。
「ここの前浜(噴火湾)で採れてできたたらこを、七飯町の地酒「郷宝」で漬けるんです」。そして手返ししながら乾燥させて、低温熟成させる。
「たらすみ」は、たらこの粒がなくなるぐらい、しっとりと濃縮されている。スライスして、薄切りの大根で挟んだり、削ってパスタにかけてもおいしい。ガスコンロで軽く炙るのもおすすめだ。ぜひ、たらこの新しい魅力を知ってほしい。
一印高田水産 食 買物
住所:北海道茅部郡鹿部町本別15
電話:01372-7-2013
URL:https://1zirushi.com/
日本海に面した乙部町へ。シリカ水のクラフトビールを味わう
渡島半島を東から西へ横断し、日本海側の乙部(おとべ)町へ。まずは滝瀬海岸「シラフラ」に向かう。取材時は、あいにくの小雨だったが、霧がかかる景色が幻想的。
ここでは、乙部町の水でクラフトビールを醸造している「北海道乙部追分ブリューイング」を訪ねた。醸造所にビアレストランが併設されており、発酵タンクを眺めながら、造りたてのクラフトビールを味わえる。
原料となる水は、乙部岳から流れる姫川近くの水源から。シリカ(ケイ素)を多く含んでいるのが特徴だ。このシリカ水は「ガイヴォータ」として販売もされている。そしてビールの原料には、まだ一部だが、乙部町産の大麦や蜂蜜、ホップも使用。
「乙部にも自生しているホップがあるので、それをうまく栽培したいですね。水も乙部、造る場所も乙部。乙部のビールを造りたいというのが夢です」と店長の山内章弘さん。
ビアレストランでは、ブロッコリーなど地元の特産や旬の食材を使った、本格的な石窯ピザが人気。秋以降は、梨のデザートピザ、サクラマスなども登場予定。
北海道乙部追分ブリューイング 食 買い物 自然
住所:北海道爾志郡乙部町館浦686-2
電話:0139-56-1265
URL:http://www.otobe-oiwake-brewing.jp/index.html
(併設ビアレストラン)ギルドエンデバー食
電話:0139-56-1300
URL:http://www.guild-endeavour.jp/index.html
北海道南端の町で、新名物「いかとんびパスタ」を味わう
渡島半島の南に位置する福島町。晴れた日には海の向こうに津軽半島が見え、北側は大千軒岳に抱かれる。
するめの生産地として知られている福島町で、話題となっている新メニューの「いかとんびパスタ」。「いかとんび」とは、イカの口部分のこと。そこからクチバシのような硬い部分を外し、ガーリック和風パスタにたっぷりと加える。町内のいくつかの飲食店で味わうことができる。
「居酒屋 留(る)」で、いかとんびパスタを作ってくれた澤田留美子さんは「この辺の人たちは、昔はよく、いかとんびを塩辛にして食べていたよ」と教えてくれた。
まぐろ定食には、昨日、獲れたばかりの生のクロマグロがたっぷり。山菜のニヨの煮物にフノリのお味噌汁、ここならではの味が嬉しい。福島町へ訪れたなら、津軽海峡の恵みをぜひ味わってほしい。
居酒屋 留 食
住所:北海道松前郡福島町字福島289
電話:0139-47-3457
かあさんが伝える鹿部の魅力「浜のかあさん地元料理体験」
鹿部町の「道の駅 しかべ間歇泉(かんけつせん)公園」はとても賑やかだ。温泉の蒸気を利用して蒸し釜料理を楽しんでいる人たちもいた。店内で地元食材を購入し、蒸すことができるのだ。
ここでは「浜のかあさん地元料理体験」が開催されている。鹿部漁協女性部のみなさんと、鹿部町で水揚げされた新鮮な海の幸を使って、地域の家庭料理を作って楽しむ。
取材時には、朝に獲れたばかりの「アブラコ(アイナメ)」が登場。ウロコを取ることから始める。かあさんの一人、柳澤時子さんが、部位によって包丁のどこを使えばいいのか、丁寧に教えてくれる。
その間に、甘エビ丼に取りかかる。甘エビの殻をむき、盛っていく。簡単な作業だけれど、美しく盛り付けるのはなかなか難しい。
料理をしながら話は盛り上がり、漁師をしている家族の話や、噴火湾の旬の魚のおいしさ、家庭での調理法など、海の恵みとともに暮らす鹿部町の人たちの豊かな暮らしが伝わってくる。
ちなみに、この料理体験と、併設する「浜のかあさん食堂」では、魚介を鹿部漁港から適正な価格で仕入れることを心がけている。それは、魚を大切にし、町の漁業が続いていくための取り組みでもあるから。
ぜひ、海と暮らす鹿部のかあさんの味に出合ってほしい。
道の駅 しかべ間歇泉公園 食 体験
住所:北海道茅部郡鹿部町字鹿部18-1
電話:01372-7-3500(鹿部温泉観光協会)
〔浜のかあさん地元料理体験〕
URL:https://shikabe.jp/taiken/
〔浜のかあさん食堂〕
URL:https://shikabe-tara.com/
魅力が尽きない、広大な渡島半島
渡島半島では、一つ一つの町が、個性的だった。同じ北海道でも、海の色、魚種、海に注ぐ川も、地元の人たちが愛でる山も違う。
豊かな海の幸とそれを大切に活かす取り組み、歴史ある観光地で守られる自然、ゆったりと流れる時間。日本海側ではダイナミックな景観にも出合った。津軽半島が見える最南端を巡り、歴史を体感した。そして各地で味わうこだわりのグルメ。
広いからこそ、ゆっくりと巡ってほしい。そして初めての町で、新たな発見をぜひ楽しんでほしい。
※掲載施設の情報は変更されていることがあります。お訪ねの際はあらかじめご確認ください。
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