半島彩発見

【薩摩半島】温暖な気候とシラス台地が育んだ、自然美と絶品グルメを堪能する

文/真下武久 撮影/秋田大輔

▲長崎鼻灯台から海越しに望む開聞岳は薩摩半島屈指の絶景!

鹿児島のシンボルといえば、錦江(きんこう)(鹿児島)湾に浮かぶ桜島。地図上で見ると、その桜島を挟んで東西にふたつの大きな半島が突き出ている。東側が大隅半島、西側が薩摩半島だ。

 
今回の旅の舞台は、西側の薩摩半島。砂むし温泉で有名な指宿(いぶすき)温泉や、カツオの水揚げ地として知られる枕崎、鹿児島茶の中でもブランド茶とされる知覧茶の茶畑など、鹿児島らしい魅力がたっぷり詰まった薩摩半島を巡ってみたい。

 

竜宮伝説が残る、薩摩半島最南端の岬へ

鹿児島市内から錦江(鹿児島)湾を眺めながら1時間ほどドライブすると、薩摩半島最南端の長崎鼻灯台に到着する。鹿児島市内から足を延ばすのにちょうどいい距離だ。

 
海に突き出た灯台からは「薩摩富士」として知られる開聞岳(かいもんだけ)が一望でき、晴れた日には遠く洋上に浮かぶ屋久島や硫黄島の島影まで見える。半島の先端までやってきたという開放感とダイナミックな景色がたまらない。

 
長崎鼻の別名は「竜宮岬」。古くからの言い伝えによると、浦島太郎が竜宮城へと旅立ったとされる岬がここなんだとか。近くには乙姫(豊玉姫)を祀った龍宮神社もあり、縁結びのパワースポットとして人気を集めている。その伝説にふさわしく、夏場はウミガメの貴重な産卵場所にもなっている。

 

薩摩長崎鼻灯台
住所:鹿児島県指宿市山川岡児ヶ水字長崎1579-2
電話:099-805-1002(鹿児島海上保安部交通課)

 

指宿温泉といえば「砂むし温泉」でデトックス!

▲砂で蒸されること10~15分で全身ポカポカ。砂の重さも心地いい!

 
長崎鼻灯台までやって来たら、同じ指宿市内にある指宿温泉にも立ち寄りたい。温泉天国といわれる鹿児島の中でも、指宿といえばやはり名物の砂むし温泉は外せない。砂浜の地熱を利用した温泉は世界的にも珍しく、世界で唯一天然の砂むし温泉が楽しめるのが指宿なのだ。

 
砂むし温泉施設で受付を済ませたら、浴衣に着替えて海岸へ。指定された砂の上に横になると、あとはプロの砂かけスタッフが全身を包みこむように砂をかけてくれる。砂の中の温度は50~55℃。大地に包まれているような感覚と、じんわりポカポカと温まってくる感じが心地いい。

 
健康にも美容にもいいとされる砂むし温泉は、市内にいくつか日帰りOKの専用施設や宿泊もできる温泉リゾートがあるので、旅のプランに合わせて選びたい。いずれにせよ、指宿まで来て砂むし温泉を体験しないのはあまりにももったいない!

 

 

指宿温泉の名物グルメ「温たまらん丼」に舌鼓!

▲「黒豚と郷土料理 青葉」の「温たまらん丼」。小鉢のサツマイモのレモン煮も美味!

 
砂むし風呂でたっぷりと汗をかき、心身ともにデトックスしたら、そろそろお腹も空いてくる頃。指宿市内にはいくつかご当地グルメがあるものの、砂むし温泉の後にいただくべきは「温たまらん丼」に他ならない。

 

▲「温たまらん丼」には、砂むし温泉の源泉でゆでた温泉卵を使用。

 
というのも「温たまらん丼」は砂むし温泉の源泉で作った温泉卵(通称:おんたま)を使った創作丼だから。砂むし温泉の温泉卵を使用していれば、他の具材はなんでもOKとのこと。現在、17の参加店舗がそれぞれ創意工夫を凝らし、黒豚や魚介、名産のオクラなどを使ったバラエティ豊かな「温たまらん丼」を提供している。

 

▲上/昭和46年創業。有名な指宿谷門畜産の六白黒豚などを使用する「かごしま黒豚販売指定店」。下/地元産の赤卵をゆでた温泉卵はとろ~り濃厚!

▲左/昭和46年創業。有名な指宿谷門畜産の六白黒豚などを使用する「かごしま黒豚販売指定店」。右/地元産の赤卵をゆでた温泉卵はとろ~り濃厚!

 
JR指宿駅前に店を構える「黒豚と郷土料理 青葉」もそのひとつ。こちらでランチタイムに提供する「温たまらん丼」は、店名のとおり、地元指宿谷門畜産などの六白黒豚を使用している。熱々のゴハンの上にのるのは、特産のイモ水飴を使った秘伝の甘辛ダレで焼き上げた黒豚三枚肉のロースト。さらにその上に季節の野菜と温泉卵がのってくる。濃厚なタレに温泉卵がとろ~りと絡んだ絶妙な味わいは、う~ん、たまらん!

 

黒豚と郷土料理 青葉
住所:鹿児島県指宿市湊1-2-11
電話:0993-22-3356
URL:https://aoba-ibusuki.com/

 

カツオ漁業の町、枕崎で味わう本場のカツオめし

▲カツオ節もカツオだしもかけ放題の「枕崎鰹船人(ふなど)めし」。

 
指宿エリアから西へ車で約60分の枕崎は、全国有数のカツオの水揚げ量を誇る。地元のブランド魚である「枕崎ぶえん鰹」を味わうなら、漁港近くの「枕崎お魚センター」へ向かいたい。

 
「『ぶえん』は漢字で表記すると『無塩』となります。このあたりの方言で『塩をしなくても食べられるくらい新鮮』という意味なんですよ」とは「枕崎お魚センター」スタッフの岩坪洸樹さん。

 

▲上/予約すれば、カツオの解体見学付きのカツオわら焼きタタキ体験も。下/枕崎独特のさばき方でカツオをおろす。

▲左/予約すれば、カツオの解体見学付きのカツオわら焼きタタキ体験も。右/枕崎独特のさばき方でカツオをおろす。

 
「枕崎ぶえん鰹」は一本釣りしたカツオを船上で活き締めし、急速冷凍したもの。生のカツオに負けず劣らず鮮度抜群だという。併設のレストラン「枕崎みなと食堂」の人気No.1グルメが、この「枕崎ぶえん鰹」を使った「枕崎鰹船人(ふなど)めし」。漁師が釣ったカツオを船の上でさばき、ゴハンの上にのせて食べる漁師メシを現代的にアレンジした丼だ。

 

▲上/カツオのオブジェが目印の「枕崎お魚センター」。下/本枯れ節を使っただしが飲み放題という大人気サービス。

▲左/カツオのオブジェが目印の「枕崎お魚センター」。右/本枯れ節を使っただしが飲み放題という大人気サービス。

 
「枕崎みなと食堂」では、カツオ節が取り放題、さらには本枯れ節を使っただしも飲み放題。というワケで、この「枕崎鰹船人めし」もそのまま食べてもいいし、カツオ節をたっぷりかけて食べてもいいし、最後にだしをかけてお茶漬け風にして食べてもいい。

 

▲上/自らの手でわら焼きしたカツオのタタキは、旅ならではの思い出の味。下/ビックリするくらいの強火で焼くのがポイント!

▲左/自らの手でわら焼きしたカツオのタタキは、旅ならではの思い出の味。右/ビックリするくらいの強火で焼くのがポイント!

 
また「枕崎お魚センター」ではカツオわら焼きタタキ体験も行っている。同センター直営の鮮魚店スタッフが丁寧に説明しながらカツオ丸ごと一本を目の前でさばいてくれる。今度はそのカツオを自らの手で豪快にわら焼きに!そのまま氷水で締め、わらのスモーキーな風味を閉じ込めたら、最後はできたてのカツオのタタキを召し上がれ!

 

枕崎お魚センター
住所:鹿児島県枕崎市松之尾町33-1
電話:0993-73-2311
URL:https://makurazaki-osakana.com/

 

カツオの“おだし”をお土産として持ち帰る

▲お土産として人気No.1のだしパック「本枯れ黄金だし」。

 
カツオ漁業で知られる枕崎は、実はカツオ節の生産量日本一。その生産量は年間約1.2万トンにもなり、全国の生産量の約5割を占めるほどだ。そんな枕崎で70年以上、3代にわたって続く水産会社、中原水産が運営する「枕崎おだし本舗 かつ市」は、枕崎から世界に向けてだし文化を発信している“おだしカンパニー”だ。

 

▲上/おやつやお茶請け、お酒のおつまみにもいい「かつおせんべい」。下/薩摩半島南部の郷土料理「茶節」を味わうならこちらの「旨味茶節 本枯れ節」をどうぞ!

▲左/おやつやお茶請け、お酒のおつまみにもいい「かつおせんべい」。右/薩摩半島南部の郷土料理「茶節」を味わうならこちらの「旨味茶節 本枯れ節」をどうぞ!

 
漁港近くの直営店は、まさにカツオ節土産の宝庫。熟成カツオ節「本枯れ節」とコクが特徴の「焼あご」を絶妙にブレンドしただしパックや、2011年に鹿児島県水産物品評会にて県知事賞を受賞した名物「かつおせんべい」、薩摩半島南部に伝わる郷土料理「茶節(ちゃぶし)」のもとなど、いかにも枕崎らしいお土産の数々に出合えることだろう。

 

枕崎おだし本舗 かつ市
住所:鹿児島県枕崎市東本町74-1
電話:0993-72-2232
URL:https://katsu-ichi.com/

 

全国第2位のお茶どころが誇るブランド茶

▲知覧茶を扱う茶商「下堂園」の定番茶葉「千両」。

 
鹿児島市内までの帰路は、全国茶品評会で連続日本一を受賞した「知覧茶(ちらんちゃ)」の故郷である南九州市を通っていきたい。知覧茶とは、南九州市の頴娃(えい)町、知覧町、川辺(かわなべ)町でつくられたお茶のこと。一般的な山深い茶畑のイメージとは異なり、知覧茶の茶畑はシラス台地の平坦な土地の上に遠く広がっている。緑のじゅうたんのようなランドスケープはどこまでも清々しい。

 

▲南九州市の各地に広がる知覧茶の茶畑。

 
「知覧茶の主要品種は『ゆたかみどり』という茶葉です。寒さや霜に弱いため、この薩摩半島の温暖な気候と水はけのいいシラス台地という環境に非常に適していたんです」

 
そう説明してくれたのは、昭和29年に茶商として創業し、現在は同地に有機栽培の自社農園も有する「下堂園」の岩越守さん。岩越さんによると「知覧茶は深く濃いグリーンの色合いとともに、強い火入れによりほのかな香ばしさが漂うのが特長」とのことだ。

 

▲左/鹿児島県産ショウガをたっぷり使った和紅茶「しょうが紅茶」と、100%オーガニックの自社畑の茶葉による「有機ほうじ茶」。右上/「らさら荒田本店」では知覧茶に合う甘味も提供している。右下/お茶にまつわる雑貨やお菓子も販売する。

 
おいしい知覧茶を味わう、あるいは知覧茶をお土産に持ち帰るなら、「下堂園」直営、鹿児島市内に構えるティースペース「らさら荒田本店」に立ち寄りたい。

 

下堂園
URL:https://shimo.co.jp/

 

らさら荒田本店
住所:鹿児島県鹿児島市荒田1-38-10
電話:099-250-2338
URL:https://lasala-tea.jp/

 

その先の鹿児島に出合う、薩摩半島プチトリップ!

鹿児島湾の西に延びる薩摩半島は、鹿児島市内からも日帰りできる距離感がちょうどいい。もう少しゆったりと旅をするなら、今回紹介した砂むし温泉が楽しめる指宿温泉に泊まるのもいいだろう。

 
その他、イッシー伝説で知られる池田湖や指宿のシンボルである開聞岳、「薩摩の小京都」と称される知覧武家屋敷庭園など、見所も尽きない。ぜひ自然豊かな薩摩半島を訪れてほしい。

 
※掲載施設の情報は変更されていることがあります。お訪ねの際はあらかじめご確認ください。

 

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