アートな岩々とグラン・ブルー。壮大なランドスケープがその舞台

ここは普通判・卓上判カレンダーの2月に登場する岡山県の玉野市と倉敷市の境に位置する「王子が岳」。標高約234mの小高い山なのですが、巨岩や「ニコニコ岩」をはじめ、ユニークな奇岩などダイナミックな造形が重なり合い、その後方には静かな碧き瀬戸の海が広がるというシチュエーション。いったいどうしたらこんな風景ができるのか。あらためて自然の凄さ、パワーを感じてしまいます。岩々のシルエットと美しい瀬戸内のコントラスト。壮大なランドスケープと小さな人間との対比。私たちがここを撮影場所に選んだ理由が、きっとおわかりいただけると思います。

 

▲心が洗われるランドスケープ。雄大で穏やかなグラン・ブルーの世界が広がります。

 

奇岩の名所は、アクティブスポーツのホットスポットに

 
雄大な瀬戸内海を見守るかのように佇んでいる大きな岩々。遥か昔、ここに百済(くだら)姫の子どもである「柴坂の王子」「坂手の王子」「筈割(はずわり)の王子」「峰の王子」「日の王子」「錫投げ王子」「谷の王子」「瓶割り王子」という8人の王子が住んでいたことから、王子が岳と名付けられたといわれています。現在では「ボルダリングの聖地」としても知られており、オリンピックで競技自体が注目を集めていることもあって、週末には多くのクライマーで賑わいます。また、スカイスポーツも盛んで、パラグライダーのフライトポイントもあり、体験飛行もできるそうです。思い思いに楽しむそんな人たちを横目に、我々は目をつけていた撮影ポイントへ急ぎました。

 

スリリングなロケは数あれど

 
撮影ポイントは、大のオトナでも足がすくむ、そそり立つ岩の上。見ての通り柵などはありません。それでも今回のモデルであるバレエダンサーの七瀬莉砂さんは、ためらうことなく切り立った岩の先端近くまでいきます。そして軽いストレッチを終えると、そのキュートな姿からは想像できない力強いダンスを披露してくれました。かたやフォトグラファーの谷口京氏は、最適なカメラ位置を模索。探し当てたポジションは足場が狭かったので、念のためザイルを体に巻きつけてのシューティングになりました。見ているほうは緊張感漂う一瞬が続きますが、そこは百戦錬磨のクルーたち。何のトラブルもなくスムーズに撮影を終えました。

 

ひと仕事終えたあとのおたのしみといえば……

 
まずは食事。特に見知らぬ土地ともなると期待はさらに膨らみます。今回のロケで一番印象に残ったのは、王子が岳のふもとにあった「いしはるうどん」というごく普通のうどん店。実は別の月に掲載する下見も兼ねて「うどん県」香川にも足を延ばし、本場のいろいろなうどんをいただいたのですが、ここが一番おいしく感じました。ほかの撮影クルーも同意見でした。

 

ひと仕事終えたあとのおたのしみ、その2

 
タウンウォッチングもロケでのたのしみの一つです。知らない街ならなおのこと。この日は、江戸時代の面影が今も残る倉敷の古い街並みを散策。そして前々から気になっていた「児島ジーンズストリート」へ繰り出しました。ご存じかもしれませんが、今やこのエリアは世界の名だたるメゾンも注目している日本のデニムの聖地と呼ばれているほどです。よさそうなジーンズがいくつかありましたが、そんななかで目に留まったのは、なんとインディゴブルーの豚まんとソフトクリーム。ちなみにソフトクリームはブルーベリー味でした。

 

岡山のお土産スナップ

▲左/岡山土産の定番といえば「きびだんご」。ちなみに「黍(きび)」は五穀の一種です。右/倉敷で見つけた丈夫そうなデニムのトートバッグ。

 

 

王子が岳へのアクセス

岡山空港からJR岡山駅まで高速バスで約30分。JR岡山駅から(JR宇野線宇野駅行き) JR宇野駅まで約50分。JR宇野駅からバスで約40分。タクシーで約20分。
車の場合は、瀬戸中央自動車道児島ICから山頂付近駐車場まで約20分(約11km)。駐車場あり。

 

カレンダー撮影:谷口 京

たにぐち けい/フォトグラファー。1974年京都市生まれ、横浜育ち。日本大学芸術学部写真学科を卒業後、ニューヨークを拠点に独立。雑誌や広告撮影のかたわら「人と自然の関わり」をテーマに世界約60カ国を旅したのち帰国。ヒマラヤをはじめ国内外の山に登る冒険好き。

 

 
 

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