砂漠に浮かび上がる黄金色の建築と豊かな緑―インド、バダ・バーグ

黄色い砂岩でできた建造物が夕日に照らされ輝くことから“ゴールデンシティ”の愛称を持つインドの都市・ジャイサルメール。その小高い丘の上にある王室墓苑バダ・バーグが今回の撮影の舞台です。そこで出合ったのは、砂漠のなかとは思えないほど豊かな水と緑、そして中世から今も続く城郭都市での人々の営み。歴史が現在につながることを実感した、撮影の模様をお届けします。

 

▲廟のなかを通り抜けるシーンでは、柱や壁に施されたレリーフの芸術的な細工をアップでご覧いただけます。墓苑の周囲にはマンゴー畑が広がり、野鳥のさえずりも聞こえてきます。

 

歴史を重ね今に至る、生きた都市の素顔

 
日本からJAL便でデリーのインディラ・ガンジー国際空港へ飛び、そこから乗り継いでジャイサルメール空港へ。タール砂漠のなかにぽつんと佇む素朴な空港で撮影クルーを迎えてくれたのは、今回撮影する王室墓苑バダ・バーグを所有する一族の女性・スニディさん。12世紀にジャイサルメール王国を建国したラーワル・ジャイサル王から続くロイヤルファミリーの一員です。彼女との出会いによって私たちは、ジャイサルメールの歴史や文化を深く知り、肌で感じる機会に恵まれました。

 

オアシスとマンゴー畑に囲まれた美しい墓苑

 
バダ・バーグはジャイサルメールの中心地から車で約20分離れた丘の上に位置しています。いくつも連なる廟はジャイサルメールの特徴である砂岩で建造されており、それぞれに繊細で見事な彫刻が施されています。周辺には巨大なダムがあり、広々とした池や緑溢れるマンゴー畑が広がります。朝方には野生のクジャクが散歩する姿も。砂漠地帯のなかにいることを忘れそうなほど、豊かな時間が流れていました。このバダ・バーグは一般公開されており、誰でも見学することが可能です。

 

 
撮影地を案内してくれたスニディさんと、ご主人のシャクティさんは「ここはジャイサルメールで一番美しい場所。私たちもいつかここに入るのよ」と話してくれました。廟には花が供えられ、お参りや手入れをする人の姿も。ここは遺跡ではなく今を生きる人々にとって身近で大切な場所であることを実感させられます。神聖な場所で撮影できることに感謝しながらシューティングを開始。この日は晴天に恵まれ、抜けるような青空と黄金色の建築、鮮やかな緑のドレスのコントラストが印象的なカットを撮ることができました。

 

宮殿での暮らしと庶民的な街並みが寄り添う不思議な都市

 
こちらはジャイサルメールの中心地。タール砂漠の中なかに浮かび上がる砂岩の宮殿は、まるでアラビアンナイトの世界のよう。インドと中央アジアの交易の要衝として栄えたこの地には、王族の宮殿や、富裕な商人たちが築いたハヴェリと呼ばれる壮麗な邸宅がいくつも存在しています。

 

 
城郭のなかには今も人々が暮らしています。歴史を感じさせる豪奢な宮殿のすぐ隣に、庶民的な地元の人々の生活の場が寄り添う、その対比がとても新鮮です。ハヴェリの豪華な建築様式や緻密な装飾は圧巻の一言。建築や美術に興味のある人なら何時間でも街歩きを楽しめそうです。

 

 
撮影クルーが宿泊したホテル「ナチャナハヴェリ」は、18世紀に建てられたハヴェリ。撮影地を案内してくれたシャクティさん夫妻の住居で、一部がホテルに改装されています。壁や窓枠、手すりなど、至る所に施された細工が美しく、間近でしげしげと眺めてしまいます。柔らかで加工に適した砂岩はジャイサルメールの特産物。彫刻や工芸品に加工をする工房を見学すると、職人たちが手彫りで緻密な細工を彫り込んでいました。

 

スパイスの刺激と、体に染み渡る甘さと

 
現地の食事は、日本でも馴染み深いメニューから、初めて口にするものまでさまざま。宿泊したホテルのレストランで食べたビリヤニ(インド風炊き込みご飯)は、スパイスが効いていながら食べやすく、優しい味わい。街中には地元客で賑わうラッシースタンドがあり、この地方特有の濃厚でクリーミーなマカニアラッシーが味わえます。食事や休憩の度に振る舞われるのはチャイ。スパイスの香りと甘みが喉の渇きと疲れを癒やしてくれました。印象深かったのはグラブジャムンというスイーツ。シロップに漬けたドーナツのような揚げ菓子で、“世界一甘いお菓子”とも言われています。目が覚めるような衝撃的な甘さですが、不思議とまた食べたくなるクセになる味です。

 

インドのお土産スナップ

▲左/砂岩の加工工房で購入した器。滑らかに磨き上げられている。右/ジャイサルメール城下の市場で売られていたカラフルなエコバッグ。

 

▲左/手描きの細密画のポストカード。象、馬、ラクダはそれぞれラジャスターン州の都市、ジャイプール、ウダイプール、ジャイサルメールを象徴するモチーフ。右/サリーの生地を利用したパッチワークの小物入れ。

 

インド、バダ・バーグへのアクセス

東京(羽田・成田)よりJAL便でインド、インディラ・ガンジー国際空港を経由しジャイサルメール空港へ。ジャイサルメール中心地からバダ・バーグへは車で約20分。

 

カレンダー撮影:谷口 京

たにぐち けい/フォトグラファー。1974年京都市生まれ、横浜育ち。日本大学芸術学部写真学科を卒業後、ニューヨークを拠点に独立。雑誌や広告撮影のかたわら「人と自然の関わり」をテーマに世界約60カ国を旅したのち帰国。ヒマラヤをはじめ国内外の山に登る冒険好き。

 

 
 

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