バリ島のウブドはデンパサール国際空港から2時間弱の距離ですが、道すがら小さな寺院の祭事に参加する民族衣装の人々で賑わっていたり、工芸品を売る店が並んでいたりと、伝統溢れる景観を車窓からも満喫できます。
森と田園に囲まれた芸術・文化の中心地であるウブドには、美術館やギャラリーも数多く、この地を訪れる観光客の数は年間300万人以上。海辺のリゾートとはまた違う、文化的な側面が多くの人々を魅了しています。
私が滞在した宿はウブドの中心から少し離れた村の一角にありましたが、道幅が狭いので、市内の駐車場から先は施設の係員たちがバイクで荷物と人間を分散させて運びます。舗装もされていない道を、小型のバイクに二人乗りで移動するのはなかなかスリリングでしたが、田園の美しい景色に地元の農家が飼育している動物たちや、日用品を入れた大きな籠を頭に乗せて歩く女性など、観光地とはかけ離れた世界が広がっていました。
近所の村を散歩中、鳥たちのさえずりに交じって、どこからかガムランの音色が耳に入ってきました。集落の寺院の敷地を覗いてみると、庭の一角では10代くらいの女の子たちが舞踊の稽古をしているところでした。目を大きく見開き、しなやかに伸ばした指先を優雅にうねらせ、先生の指導を受けながら一生懸命に練習をしています。バリにはいくつもの舞踊団がありますが、彼女たちもきっとそのうちきらびやかな衣装に身を包み、立派な舞台でその踊りを披露することになるのでしょう。
19世紀ごろから発展し続けてきたこうしたウブドでの文化活動は、戦後ヨーロッパから移り住んできた芸術家たちの影響もあって知名度が高まり、最近では世界中の作家が集まる文芸フェスティバルが開催されるなど、ますます盛んになっています。バリ島へ行かれることがあれば、ぜひウブドまで足を延ばし、英気を養ってみてください。
やまざき まり
漫画家・文筆家・画家。日本女子大学国際文化学部国際文化学科特別招聘教授、東京造形大学客員教授。1967年東京生まれ。84年にイタリアに渡り、フィレンツェの国立アカデミア美術学院で美術史・油絵を専攻。比較文学研究者のイタリア人との結婚を機にエジプト、シリア、ポルトガル、アメリカなどの国々に暮らす。2010年『テルマエ・ロマエ』でマンガ大賞2010受賞、第14回手塚治虫文化賞短編賞受賞。2015年度芸術選奨文部科学大臣賞新人賞受賞。2017年イタリア共和国星勲章コメンダトーレ受章。2024年『プリニウス』(とり・みきと共著)で第28回手塚治虫文化賞のマンガ大賞受賞。著書に『ヴィオラ母さん』『ムスコ物語』『歩きながら考える』『扉の向う側』『貧乏ピッツァ』、作品集『ヤマザキマリの世界 1967─2024』など。現在、『続テルマエ・ロマエ』を集英社「少年ジャンプ+」で連載中、第1・2・3巻が好評発売中。
(SKYWARD2026年9月号掲載)
※記載の情報は2026年9月現在のものであり、実際の情報とは異なる場合がございます。掲載された内容による損害等については、一切の責任を負いかねますのでご了承ください。
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