旅への扉

食べておきたい絶品スイーツを紹介! 山形、フルーツ王国

文/露木朋子 撮影/角田 進

さくらんぼにぶどう、洋梨、りんご……。
山形の四季の移り変わりを教えてくれるのは輝くばかりのみずみずしいフルーツやその個性を生かした鮮やかなスイーツだ。
季節の美味と出合いに、心ときめくフルーツ旅へ。

 

多種多品種を生産する果樹園は通年大忙し

farm

▲左/洋梨の棚仕立て栽培。右/収穫直前のシャインマスカット。

 
東に奥羽山脈、西に出羽三山や朝日連峰。秀麗な山々に囲まれた盆地には、ミネラルをたっぷりと含んだ水が流れ込む。山形県がフルーツ王国といわれるゆえんは、まずその立地が挙げられる。そしてはっきりとした四季、とりわけ夏に昼夜の寒暖差が大きいという果物栽培に向いた気候。このような地理的条件、気象的条件に加え、山形県生まれの果物に誇りを持つ地元の人々の情熱も忘れてはならない。

 
hatakestyle

▲左/果樹園併設のカフェにはパフェなども。右/「耳たぶほどの柔らかさが洋梨の食べどき」と高橋さん。

 
「この辺りは、何種類もの果物を作るのが一般的なんですよ。ウチの果樹園でもさくらんぼ、ぶどう、洋梨、柿、りんごなどを育てています」。

 
そう話すのは山形県上山市の「高橋フルーツランド」の高橋利洋さん。化学肥料を使わず、100%有機栽培で果物を育てる観光果樹園の三代目である。ひと口に「さくらんぼ」といっても、山形県が誇る人気ブランド“佐藤錦”だけではない。シーズンの始まりを告げる“紅さやか”、ポピュラーな“ナポレオン”や稀少種の“大将錦”、そして晩生の“紅秀峰”……。ハウス栽培のさくらんぼが出荷される5月下旬から露地ものが出回る7月上旬まで、そのシーズンも長い。さくらんぼの次はぶどう、そして桃と洋梨の季節がやってくる。息つく暇もない。

 
「洋梨もラ・フランスをはじめ、爽やかな風味のマリゲットマリーラ、酸味が少なく食べやすいカリフォルニアなど5~6種類は育てています」。

 
大玉で質がいいと人気の上山産の洋梨は、“棚仕立て”で作るのが特徴だ。花の時期に枝に一輪だけ残して間引き、大切に育て、味を凝縮させていく。棚のため、果実の管理もしやすく、満遍なく日が当たるこの製法は40年来のものだという。一つ一つの果物に生産者が丹念に手を掛け、目を配る。この積み重ねが果物王国・山形を支えている。

 
「果物の美味しさは酸味と甘みのバランスにある、と私は思っているんです。例えば、ぶどうのスチューベンやナイアガラ。昔ながらの、あの中粒ぶどうの酸味のある味わいを好まれる方も多いですね」。

 
若者の果物離れを防ぐきっかけになればと始めた「ハタケカフェ」も8年目。山形フルーツのアピールに一役買っている。

 

高橋フルーツランド
電話:023-673-4706
URL:www.takahashi-fl.jp/

 

バラエティーに富んだ地元の果物の魅力を手軽なスイーツで発信

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▲左/「ぶどうパフェ」は8月下旬から。中央左/しゃっきりとした味わいの「りんごサンデー」。中央右/「さくらんぼサンデー」など、シーズン中は常に4種以上のサンデーを味わえる。右/5月中旬から登場する「さくらんぼパフェ」。

 
目の前に広がるさくらんぼやりんご畑を見ながら、旬の果物パフェのでき上がりを待つ。待ちわびたパフェは─例えばぶどうの季節なら─シャインマスカット、スチューベン、ナイアガラ、藤稔、そしてトップには赤いオリンピアと5種類ものぶどうがこぼれんばかりに盛られている。果実のみずみずしさにも心ときめくが、種類ごとに違うぶどうの味わいにもハッとさせられる。ここは、全国からの観光客で賑わう山形県天童市の「oh! show! café」。王将果樹園が経営する、人気の一軒だ。

 
「洋梨はラ・フランス、さくらんぼだったら佐藤錦。県外からの皆さまに圧倒的に人気なのが、やはりこの2種類です。でもそれだけではない、もっともっといろいろな品種を召し上がってほしいと2016年にこのカフェを、そしてこのパフェを始めました」(王将果樹園広報・須藤亜由美さん)。

 
パフェのコンセプトはずばり「多品種食べ比べ」。使用するフルーツはもちろん自社園でその日に収穫されたもの。まさにfarm to tableのフレッシュスイーツだ。

 
「さくらんぼの時季には、シーズンの前半後半でパフェに使う品種のラインナップも変わります。さくらんぼだけでおよそ25種類を栽培している果樹園だからこそ、できることだと思います」(須藤さん)。

 

oh! show! café
oh! show! café
電話:0120-15-0440
URL:www.ohsyo.co.jp/
※11月末~5月中旬まで冬季休業

 
yamagatapurin

▲左/(左から)タケダワイナリーとコラボした「大人のワインプリン ルージュ」「シャインマスカットプリン」「ラ・フランスプリン」、定番の「山形プリン(プレーン)」。右/数量限定の「山形生プリン」のみイートインできる。

 
一方、地元のフレッシュな果物と懐かしいスイーツのマリアージュが評判を呼んでいるのが、プリン専門店「山形プリン」だ。かみのやま温泉を代表する老舗旅館「古窯」の名物、“窯プリン”のスピンオフとして2018年秋に誕生した。

 
「“古窯といえば、ディナーの締めくくりのプリン”と言ってくださるお客さまも多いですね。新たなプリン作りを考えたとき、自然と地元のフルーツが浮かびました。プラムやぶどう、メロンなど、洋梨やさくらんぼに隠れがちな県内のフルーツをより深く知っていただける糸口になれば嬉しいです」(山形プリン店長・佐藤江里子さん)。

 
基本のプリンももちろん県産の材料が主体だ。濃厚な味わいのやまべ牛乳と雑味のない内山形鶏卵の紅花卵を使ったプリンはこっくりと滑らか。それだけでも風味豊かだが、それぞれのフルーツと出合うとまた味わいの幅が広がる。

 
「新鮮なフルーツをコンポートにしたり、ムースにしたり。それぞれの特性やテクスチャーが生きるよう考えて、プリンと組み合わせています」。

 
冬から春にかけては「おとめ心」「いちご姫」など山形ブランドのいちごを使ったプリンも登場。山形の四季をぎゅっと詰め込んだスイーツは、お土産としても喜ばれている。

 

山形プリン
shop
電話:023-665-1955
URL:https://yamagata-purin.com

 

山寺の新名所は果物をまるごと使ったジェラテリア

COZAB GELATO

▲左上/かつて祖父が営んでいた商店を店舗に。店名も祖父の名前に因む。左下/地元の農家・渡辺誠一さん(左)が作るすももはピカイチ、と石田さん。中央/ジェラートは2種組み合わせるのがお勧め。右/届いたばかりのすももをすぐ加工。

 
『奥の細道』などでも知られる名刹・山寺のほど近く。紅葉川沿いの「COZAB GELATO」には、開店直後から途切れることなく人々が訪れる。お目当てはもちろん、本場イタリアの手法そのままで作るフレッシュなジェラートだ。作るのは石田大さん。埼玉県出身でエンジニアから転身した、異色の経歴を持つ。

 
「イタリア料理好きが高じて、30歳でイタリアへ修業に。帰国後、都内のリストランテで働いていたのですが、現地で感じた食材のパワーやライブ感が全く感じられなくて……」。

 
悩んでいたときに訪れたのが、奥さまの祖父の故郷、山形の山寺だった。「風景、豊かな四季。ここはイタリアだと思いました(笑)。何より、地元の果物に力があって魅力的。これならばイタリアで食べて大好きだった、ぶつかってくる感じのジェラート作りができるかな、とひらめいて」。

 
果物の甘さと香りだけでなく、えぐみや酸味、皮の周りのうま味までをも生かすジェラート。糖度を均一に合わせることなどはせず、“自然そのまま”の風味を大切にする。

 
「そのためには樹上完熟したフルーツが必要です。それが入手できるのは山形だから。さすが果物王国です」

 
使用する果物は、かんきつ類以外はほぼ山形県産。平日は6~8種、週末は9種類前後が並ぶジェラートは、すべて当日に一人で仕込む。「果物そのものよりも果物っぽい」味わいを目指して。

 

COZAB GELATO
問い合わせ:info@cozabgelato.com
URL:https://cozabgelato.com/
※1~3月まで冬季休業

角田 進
つのだ すすむ/フォトグラファー。日本大学藝術学部写真学科卒業。上質な暮らし、心地よい時間をキーワードに、料理、インテリアからファッションまで、幅広い分野で活躍中。

 

山形へのアクセス

yamagata
東京(羽田)、大阪(伊丹)、札幌(新千歳)、名古屋(小牧)から山形空港へ、JALグループ便およびコードシェア便が毎日運航。山形空港からはレンタカーなどで各方面へ。

 

(SKYWARD2020年3月号掲載)
※記載の情報は2020年3月現在のものであり、実際の情報とは異なる場合がございます。掲載された内容による損害等については、一切の責任を負いかねますのでご了承ください。
※最新の運航状況はJAL Webサイトをご確認ください。

 

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