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情緒あふれる温泉地をめぐる、冬に行く日本の温泉旅行のすすめ

写真・文/藪内成基

どっぷりと肩まで湯につかって体を癒やし、心身をリフレッシュできる温泉。特に体の芯が冷える冬は、温泉が恋しくなる季節。雪見風呂や、雪景色に包まれた温泉街を散策するなど、冬ならではの温泉体験のほか、しぼりたての新酒が出回る冬だからこそ雪見酒も味わいたい。冬の旅行におすすめしたい国内の温泉地を紹介しよう。

 

冬限定の幻想的な風景

冬の温泉旅行の魅力のひとつに、冬限定のライトアップや、湯船から雪景色を眺める“雪見風呂”がある。日本各地には、こうした冬ならではの風景が楽しめる、特別な温泉郷が存在する。

 

乳頭温泉郷(秋田県仙北市)

かまくらが並ぶ乳頭温泉郷

▲かまくらが並ぶ乳頭温泉郷。

 
秋田県の乳頭温泉郷には10種類以上の源泉があり、泉質のバリエーションも豊富。ブナの原生林に囲まれて深呼吸し、山菜やきのこ料理に舌鼓を打てば身も心もリラックスできる。冬には温泉郷にかまくらがつくられ、ライトアップされた光景は美しく、幻想的な雰囲気を演出してくれる。

 
7つある温泉宿のうち、歴史を感じたい方には「鶴の湯」がおすすめ。秋田藩主、佐竹公の湯治場だった由緒ある温泉で、当時の警護の武士が使ったという茅葺き屋根の長屋(本陣)が当時の姿を残す。泉質や効能が異なる4本の源泉はいずれも自噴水で、貴重な温泉資源を持っている。

 

銀山温泉(山形県尾花沢市)

雪景色の銀山温泉街

▲雪景色に包まれる銀山温泉街。

 
「大正ロマンの湯の町」として知られる銀山温泉は、江戸時代初期に栄えた「延沢銀山」の名称に由来している。温泉地を流れる銀山川の両岸に軒を連ねるのは、大正末期から昭和初期に建てられた洋風木造多層の旅館群。ガス灯の明かりが冬の銀世界を灯し、昔ながらのノスタルジックな景観が一層引き立つ。

 
大浴場や露天風呂などで湯めぐりを楽しむのもいいが、貸切風呂でゆっくりと癒やしのひと時を堪能してみるのはいかがだろう?彩色された鏝絵で有名な老舗旅館「古山閣」では、ヒノキ造りの貸切露天風呂が楽しめる。光が差し込む昼間も、間接照明で照らされた夜間でもムードたっぷりの時間を過ごせるはず。

 

城崎温泉(兵庫県豊岡市)

城崎温泉の夜景

▲由緒ある城崎温泉。

 
1300年もの歴史をもつ由緒ある温泉街は、日本を訪れる外国人観光客向けガイドブックであるミシュラン・グリーンガイド・ジャポンで二つ星評価を受けている。

 
「小説の神様」と呼ばれた文豪、志賀直哉が愛した宿としても知られる「三木屋」は、創業300年を誇る老舗旅館。3階建ての木造旅館は、国の登録有形文化財に指定されており、歴史深さが滲み出ている。宿泊期間中は、温泉街に点在する7つの外湯に何度でも入ることができ、湯めぐりを楽しむことも可能だ。また、冬にぜひ味わいたいのが名物のカニ料理。刺身やしゃぶしゃぶ、ボイルなど、日本海で水揚げされた新鮮なカニを思う存分味わえる。

 

黒川温泉(熊本県阿蘇郡南小国町)

ライトアップされた黒川温泉

▲黒川温泉のライトアップ。

 
緑豊かな山々に囲まれた、熊本県と大分県の県境付近。約30軒の旅館が集まる温泉地には、「上質な里山」の景観が形成される。クリスマス頃から3月末にかけては、手作りした約300もの竹の灯篭が温泉街を流れる田の原川に吊るされる「湯あかり」が開催され、繊細な細工を施した竹から溢れる灯りによって、街は優しい光に包み込まれ、ロマンチックな雰囲気に。

 
“美しい月を望む森に、時を忘れる宿を”として誕生した「黒川温泉御処 月洸樹」では、露天風呂で月光浴を楽しむことができる。360°展望できる天空の露天風呂からは、満点に輝く星空と雲海を望める。広大な森の中にわずか8室の客室しかない贅沢な空間で、安らぎのひとときを。

 

冬の風物詩、雪見風呂と雪見酒

屈斜路湖畔の池の湯

▲屈斜路湖畔の池の湯。

 
北海道や東北地方など、雪が多いエリアの温泉地では雪見風呂が体験できる。その中でも、屈斜路湖畔の池の湯(北海道弟子屈町)は、雪が積もった大自然の中で味わえる雪見風呂。

 
また、屈斜路湖と同じく道東の阿寒湖はマリモで有名だが、阿寒湖南側に広がる阿寒湖温泉(北海道釧路市)の旅館・ホテルは、ほとんどが阿寒湖に面している。そのため、温泉から冬の阿寒湖が一望できるのが大きな魅力。心地のいい凛とした肌寒さを感じながら、泉質と自然の豊かさを肌で感じてみて。

 
雪見風呂と一緒に楽しみたいのは雪見酒。冬はしぼりたての新酒が出回る季節。せっかくなら日本酒どころで、雰囲気を味わいながら飲んでみてはいかがだろう。日本酒どころとして知られる新潟県や秋田県、山形県には、温泉地も数多くあり、雪見酒のサービスを提供する宿もある。露天風呂でもし晴れていれば、夜は月見も一緒に楽しめる贅沢なひとときを体験できる。

 
ただし、入浴中の飲酒はリスクも伴うので、飲みすぎや体調にはくれぐれも注意を。温泉であたたまった後に、宿の部屋でおいしい日本酒を楽しむのもおすすめだ。

 

温泉効果を最大限にする方法

温泉に浸かる女性
せっかく温泉に入るなら、入浴を楽しむだけでなく、効果・効能を最大限に活かしたいもの。外湯をめぐる場合は、あがった後の冷え対策もお忘れなく。温泉をより楽しむためにできる簡単なひと工夫をご紹介。

 

かぶり湯などで体を慣らしてから

急激な温度変化は体に負担をかけるため、かぶり湯などで足元からゆっくりなじませて入浴する。

 

入浴後はシャワーを浴びない

温泉にはたくさんの成分が含まれている。入浴後にシャワーを浴びる人もいるが、浴びないほうが入浴の効果が高く維持されるといわれている。

 

1日の入浴は3回まで

入浴回数にも注意。温泉によっては体への刺激が大きいことから、過度な入浴はかえって体調を崩す原因にもなる。個人差はあるが1日の入浴回数はおよそ3回が目安といわれている。より多くの外湯をめぐりたくなる気持ちもわかるが、くれぐれも無理のないように注意しよう。

 

冷え対策の泉質を選ぶ

温泉効果を下げないように、湯冷めにも注意が必要。風呂上がりに髪をしっかりと乾かす、身体を冷やさないなどの工夫もあるが、特に冷え性の方は、冷えに効く温泉を探すこともできる。例えば、泉質に「塩化物泉」が含まれている温泉。塩化物泉は「温まりの湯」と呼ばれることもあるほど、「湯冷めしにくい」という効果が挙げられる。塩の成分が皮膚に膜をつくり、皮膚からの水分の発散が抑制され、湯冷めしにくいのだ。入浴後の散策はほどほどに、体がポカポカしているうちに宿に戻って、ゆるりと体を休めよう。

 
ゆっくりと時を過ごし、リラックスできるが冬の温泉。忙しい日々から少し離れて、癒しの旅に出かけてみてはいかがだろう。
 
 

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