とっておきの話

スペシャル対談 指揮者・大友直人さん×JAL植木義晴会長「人生を豊かにする“感性”を育てるために」

専門分野はまるで違うけれど、言葉を交わしてすぐに意気投合したという指揮者の大友直人さんとJALの植木義晴会長。
人生において大切にしていること、仕事に対する信念……。
“リーダーの目に映る世界”を余すところなく語り尽くした。

 
―お二人はどのようなきっかけでお知り合いになられたのですか?

 
大友直人(以下、大友) 昨年、偶然パーティーで席が隣になったのがきっかけでお話しさせていただいて、お目にかかるのは今回が2度目ですね。植木さんのお名前やお顔はそれまでも写真などで拝見していましたが、実際に言葉を交わしてみて「なんてお話ししやすい方なんだ」と。

 
植木義晴(以下、植木) 私も初めてお会いしたときに「友達になれそうだ」と感じました。言葉にするのは難しいですが、少しお話しただけで“同じような感覚”を持っていらっしゃる方だと感じたんです。

 
――植木さんも、普段からクラシック音楽に触れていらっしゃるのですか?

 
植木 私は幼い頃から、何に対しても興味津々で。そんな性格をよく知っていた母は、私が「やってみたい」と言ったことはなんでも挑戦させてくれました。音楽といえば、小学1年生の頃からバイオリンやギターに触れていましたが、素養があると言えるかどうか(笑)。

 
大友 それは素晴らしいお話ですね。まず、無意識のうちに感性が刺激されている、ということがあると思います。それから、習い事を続けるということは、ある意味勤勉でないとできない。たとえ短期間であっても「何かを習う」ということは、とても大事なことなんですよ。

 
植木 今の大友さんの言葉を亡くなった母に聞かせたら、すごく喜ぶと思います。母はきっとそれをわかっていて、なんでも応援してくれたんでしょうね。母が唯一口にしていたことは「3年は続けなさい」ということ。3年経ってやめたいと思ったらやめてもいい。でも言い出したからには、それまでは続けてみなさい、と。母は若い頃に音楽学校に通っていたので、三味線やお琴、鼓などを得意としていました。彼女はこんなふうにも言っていました。
「バイオリニストにならなくてもいい。でも、ある時期に一生懸命取り組んだ経験は、必ず残る。だからいろいろなことをやっておきなさい」と。まさに大友さんがおっしゃったことにつながりますね。 

 
――音楽をやっていて良かったと思う瞬間はどんな時に訪れますか。
 
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▲JAL植木義晴会長。

 
植木 大友さんはまさしく私の大好きな言葉を、そうとは知らずに言ってくださいました。それは「感性」です。今、会長という立場にいて感じることですが、「データ」や「前例」、「論理」などでは決められないことが社長や会長のもとに議題として上がってくる。最終的には何で決めるか。私は「“感性”で決めたんだ」と言うわけですが、目の前に存在するものしか信じられない人にとっては「感性ってなんですか?」となりかねない(笑)。けれど私にしてみれば「六十何年生きてきたすべてが私の感性であり、今日この判断をするためにこれまでさまざまな判断を下し、時に失敗をしてきたんだ」と。この感覚、大友さんにはわかっていただけると思うのですが。

 
大友 これは非常に面白いテーマですね。今、音楽の世界でも感性が鈍りつつある、と言いますか、感性を磨くことが非常に難しい時代になってきているのかもしれません。例えばLPからCDになった際、「音が劣化した」とよくいわれました。これは言い換えれば、実際の音をデジタル化する過程で実は多くの“生の音が持っている情報”が失われているということなのです。日々このような音に囲まれていると逆に生の音のなかにある情報がなかなか認識できなくなってしまう。
世の中にあるたくさんの情報をどれくらいキャッチできているか、ということは、その人の「感性」や「感受性」によるものなんですね。なるべくいろいろなものを見て感性を磨いていくことが大事だと思います。

 
――大友さんは、「琉球交響楽団」という沖縄のプロのオーケストラの音楽監督もされています。それもご自身の感性に突き動かされたからでしょうか。

 
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▲指揮者として活躍する大友直人さん。

 
大友 沖縄には素晴らしい伝統音楽が根づいていて、芸能においても非常に優秀な人材を輩出しています。エンターテインメント産業も他の地域と比較しても盛んであるように思えます。

 
植木 確かに、一世を風靡した安室奈美恵さんをはじめ、沖縄出身の歌手の方はたくさんいらっしゃいますね。きっとベースのようなもの、まさしく感性が身に付く何かがあるのかもしれないですね。

 
大友 きっとありますね。だからこそ、人材の育成に力を入れるとものすごく強い地域になると思うんです。

 
植木 大友さんの今までのお話は音楽を中心とした世界の話ではありますが、これはさまざまな問題に置き換えて考えることもできます。なんでもAIがこなすようになった世界で人間が必要とされるのもまさにそうしたものですよね。AIに負けない価値のある人間になっていく必要がある。そのためには、おっしゃっていたとおり、本物を観たり聴いたりすることが大切なんですね。「生で聴こうよ」ということだと思います。

 
大友 私は、機械についてはまったく弱いのですが、植木さんは現場で飛行機を操縦していらしたわけですから、これも素晴らしいことだと思います。航空会社で、実際に飛行機を操縦したことのあるキャプテンがリードを取る、これに勝るリーダーはなかなか現れないと思うんです。
車を例にとっても、パンクしても故障しても、自分で修理できる人って実はほとんどいないですよね。本当に緊急事態になったときに、もしかしたら現代人はお手上げになってしまうかもしれない。その仕組み自体を知っているということがとても大切だと思います。まあ、私が身を置いている世界は限りなくアナログなので、時代に取り残されているともいえるのですが……。

 
植木 でも逆に言うと、そこが絶対に変わらない部分でもあるんですよね。いくら「VRゴーグルを通して世界の観光地を見た」「友達とテレビ電話をした」と言っても、“現物”を見ないと感性が育たない。だから、現物を見るための手段として、私は「飛行機」というものはこれからも必ず残っていくものだと思う。その意味では、成長性のある、夢のある事業に携わることができて幸せだと感じています。

 
大友 こうしてお話をさせていただいていても、本当に共感することばかりで話が尽きないですね。

 
植木 お会いしてすぐに、「共通する概念を持っている方なんだろうな」と感じたのは間違っていなかったんですね。ぜひ、またお話ししましょう。

 
spechialinterview
 
 

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