(そらもと けんいち)
江田島ポタジェ&レストラン ブリコラージュ ディセット 店主、NPO法人ブリコラージュ江田島 理事長。1969年、広島県江田島市生まれ。広島修道大学入学を機に島を出る。2004年「used select shop RiCKLE!」オープン。2013年に広島市安佐南区長束に「gallery キヲクの空箱」をオープンし、翌年には、RiCKLE! 内に「花根商あめつゆがごとく」をオープン。2019年「RiCKLE! 幸せな閉店」を経て、2020年、江田島に「ブリコラージュ ディセット」をオープン。キヲクの空箱との二拠点生活を楽しみながら、江田島の豊かな旬の食材を集めて地産地消率90%以上の身土不二を実践している。
https://www.instagram.com/soramotokenichi/
“島を耕す” 100年先を見据えて
広島市からフェリーで約40分、呉市からも車で約30分とアクセス抜群の、瀬戸内海広島湾に浮かぶ江田島(えたじま)。この島で週末のみ開く話題のレストランを訪ねると、店を切り盛りする空本健一さんが人懐っこい笑顔で迎えてくれた。
高校卒業後、故郷の江田島を離れ広島市内へ。2004年からは郊外で古着のユーズドセレクトショップを手がけた。当初は周りに店もないような場所だったが、空本さんの旗振りでイベントを開催すると次々と人や店が集まり、街は活気付いた。15年余りの月日が流れ、50歳を前に次の一歩を生まれ故郷で踏み出すことに。
▲四郎五郎岬に佇むBricolage 17。自然と調和した美しい建物を造り、荒れた敷地に種を蒔くことから始めた。
「何をするかは決めていなかった。ただ、若い頃には気付かなかった『宝』が島には溢れていると知りました」。可能な限り江田島産の食材を使ったレストランで島の魅力を発信していこうと、「舞台」となる場所を探し始めた。出合ったのが、裏宮島に沈む夕日が絶景の島西部の四郎五郎岬。移住者夫妻が開いたカフェがあったが、2018年の豪雨災害で土砂崩れがあり、営業が難しくなっていた。思いを伝え、会話を重ね、半年後、「あんたに任せるよ」と託された。


▲(上)総檜造りの店舗。ガラスの向こうには広いウッドデッキが。(下)ビニールハウスを改装したゾーンでは古いピアノとアートが融合。まったりと寛げる。
▲(左)総檜造りの店舗。ガラスの向こうには広いウッドデッキが。(右)ビニールハウスを改装したゾーンでは古いピアノとアートが融合。まったりと寛げる。
2020年夏のオープンに向け動き始めた矢先、世界をパンデミックが襲う。飲食店としては最悪の船出。しかし11月、静かに開店した「Bricolage 17(ブリコラージュ ディセット」はSNSを中心に評判を呼ぶ。なんと現在までの5年弱、満席にならなかった日はたった5日しかないという。
▲敷地内のポタジェ(食べられるお庭)には果樹、野菜、ハーブが生き生きと育っている。
このレストランの本質である金曜日の食材調達に同行した。走り慣れた島の道、空本さんは軽快に車を走らせる。島内4カ所の産直販売所を巡り、顔馴染みの農家の皆さんとおしゃべりしながら野菜を選ぶ。たまたま立ち寄った豆腐店の即売コーナーで立派なカリフラワーを見つけると「ラッキー! スープはこれでいこう」。空本さんが「スーパーファーマー」と敬愛する城山数則さんの畑ではサニーレタスを収穫。「みずみずしさが全然違うんよ」と思わず笑みがこぼれる。
▲山一面に広がる城山さんの段々畑にて。城山さんの作る野菜や果物はレストランになくてはならない存在。
▲(左)漁師の静間さんから直接仕入れたサワラ。(中)母が育てたブロッコリー。(右)江田島食材の数々。
事前にメニューは決めず、その日出合った食材だけで料理を考える。店名の「ブリコラージュ」が意味する「ないならないで、あるもんで美しいものを作る」のが空本さんのスタイルだ。「農家さんが手塩にかけて育てた野菜や果物、漁師さんから届く新鮮な魚介類……。なるべくシンプルに素材が持つエネルギーを引き出したい」。空本さんが丹精込めて手入れする敷地内のポタジェから花やフレッシュハーブを摘んできてあしらえば、江田島を丸ごと盛り付けた一皿に。


▲(上)薪火の石窯で焼く「しまのぱん souda!」の西村京子さんと。(下)島の陶芸家、若狹祐介さんの器。
▲(左)薪火の石窯で焼く「しまのぱん souda!」の西村京子さんと。(右)島の陶芸家、若狹祐介さんの器。
料理、空間、そよぐ風、虫や鳥が遊ぶ庭、目の前に広がる海、そして空本さんとのおしゃべり……。「五感をフルに使って、ここでの時間と体験が完成する。Bricolage 17というインスタレーションアートを訪れる人たちに届けていきたい」。茶目っ気たっぷりにこう続ける。「こんな暮らし方、働き方に触れて『江田島に住もうかな』なんて、ついうっかり思ってくれる人が増えたらいいよね」


▲(上)「おスコーンプレート」は、ポタジェでハーブや花を自分で摘んできて仕上げる一皿。五感で楽しむ。(下)島の焙煎所「セレーノ」のコーヒー。
▲(左)「おスコーンプレート」は、ポタジェでハーブや花を自分で摘んできて仕上げる一皿。五感で楽しむ。(右)島の焙煎所「セレーノ」のコーヒー。
今年2月、瀬戸内の多島美と広い空を一望できるサンセットデッキ「sora to umi」が完成した。「10年ごとに板を張り直す。9回繰り返した100年後にも変わらぬ美しい夕日が見られるといいな」と空本さん。「未来との約束を交わしたこの場所で、目線は100年先を、視点は地球を俯瞰して、この島を耕します」
▲瀬戸内海を望むデッキ「sora to umi」。クラウドファンディングでの支援で完成。夕暮れ時には茜色に染まる絶景が広がる。
Bricolage 17
住所:広島県江田島市沖美町是長字四郎五郎1782-11 夢来来内
URL:https://www.instagram.com/bricolage17etajima/?hl=ja
広島県江田島市へのアクセス
東京(羽田)、札幌(新千歳)から広島空港へJAL便が運航。広島空港から江田島市まで車で約1時間半。
※最新の運航状況はJAL Webサイトをご確認ください。
JALでは国内23半島の絶景や美食を通じ、半島の魅力発信・認知度向上を目指す半島プロジェクトを展開しています。その一環として、江能倉橋島半島地域の「Bricolage 17」にて、屋外ダイニング「星降るレストラン」を10月18日(土)に開催。劇場型ダイニングと銘打ち、時間と共に彩り移ろう瀬戸内の多島美と美食のマリアージュをお楽しみいただける特別な設えで、和食・イタリアン・中華・無国籍から地域のおいしいを知る腕利き料理人をお招きし、オール江田島産の食材にこだわった、五感をくすぐるお料理で皆さまをお迎えします。
詳しくはこちら
https://hoshifuru-restaurant.com/etajima
(SKYWARD2025年8月号掲載)
※記載の情報は2025年8月現在のものであり、実際の情報とは異なる場合がございます。掲載された内容による損害等については、一切の責任を負いかねますのでご了承ください。
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