縁結びの聖地として知られる出雲大社から西へ約1km。日本海に面して広がる「稲佐(いなさ)の浜」は、日本神話に彩られた出雲を象徴する場所だ。
稲佐の浜は、「国譲(くにゆず)り神話」の舞台であり、八百万(やおよろず)の神々を迎える「神迎神事(かみむかえしんじ)」が行われる浜として知られる、出雲でも特別なパワースポットとされている。
出雲大社には、稲佐の浜でいただいた砂を納め、代わりに清めの砂を受け取る「お砂の交換」という古くからの習わしがある。

本記事では、その由来や正しい参拝順、砂の扱い方やマナー、アクセスや周辺観光までをわかりやすく解説する。
目次
稲佐の浜とは? 国譲り神話の舞台と歴史的背景
国譲り神話の舞台|なぜ稲佐の浜なのか
稲佐の浜は、島根県出雲市にある海岸で、『古事記』『日本書紀』に記された国譲り神話の舞台として知られる、日本神話ゆかりの地だ。
出雲を治めていた大国主神(オオクニヌシノカミ)のもとへ、天照大御神(アマテラスオオミカミ)の命を受けた使者・建御雷神(タケミカヅチノカミ)が降り立ち、出雲の国を天に譲るよう求めた。その舞台と伝えられているのが、稲佐の浜である。

浜辺では神と神による力比べや交渉が行われ、やがてオオクニヌシノカミは国を譲る決断を下す――。
日本神話における大きな転換点となった場所が、稲佐の浜だ。
国を譲る代わりに、オオクニヌシノカミが願い出たのは、自らを祀る大いなる宮を建てること。
その願いが結実したとされるのが、現在の出雲大社である。
神迎神事とは? 今も神々を迎える稲佐の浜
稲佐の浜は、神話の中だけの場所ではない。
旧暦10月10日には、全国から集まった八百万の神々がこの浜に上陸するとされ、その神々をお迎えする「神迎神事」が、今も行われている。
目の前に広がる静かな海と砂浜。その奥に、神話の時間と現代が重なり合う。
稲佐の浜は、今も“神々を迎える場所”として息づいている。
弁天島とは? 稲佐の浜の象徴と豊玉姫命

稲佐の浜の波打ち際には、小さな島「弁天島(べんてんじま) 」がある。
島に祀られているのは、海の神である豊玉姫命(トヨタマヒメノミコト)。
神々は海の向こうからやって来る。
出雲に伝わるこの考え方を、弁天島は静かに示している。
浜に立ち、島を眺めるだけで、稲佐の浜が“神々を迎える場所”であることが自然と実感できるだろう。
出雲大社と稲佐の浜はどちらが先? 正しい巡り方ガイド
公式推奨ルートは「まず稲佐の浜から」
出雲大社を参拝する前に、稲佐の浜に立ち寄る人は少なくない。
ここは、神々が最初に降り立つ場所とされているからだ。
旧暦10月10日、全国から集まった八百万の神々は、まず稲佐の浜に到着し、そこから出雲大社へ向かうと伝えられている。
その流れにならい、浜で一礼してから大社へ向かうと、気持ちも自然と整う。
お砂の交換とは?稲佐の浜と出雲大社での作法・手順

稲佐の浜では、浜の砂を少量いただく「お砂取り」をして、出雲大社でその砂を納める「お砂の交換」という習わしがある。
1. 稲佐の浜で砂を採取する:
砂をひとすくい程度集める。小さな巾着袋またはジッパー付きの袋などを用意しておくといい。その後、出雲大社へ向かう。

2. 出雲大社の素鵞社(そがのやしろ)へ:
出雲大社は鳥居から入り、拝殿(写真左)、そしてご本殿を参拝。その後に、境内の奥にある素鵞社(写真右)に参拝。

▲(左)拝殿、(右)素鵞社。
3. 砂を交換:
素鵞社の床縁下に砂箱がある。まずは稲佐の浜で採取した砂を入れ、その後、代わりに砂箱にあるお砂をいただく。

4. 持ち帰る:
持ち帰ったお砂は自宅の敷地に撒いたり、お守りとして持ち歩いたり、お清めの砂として家の四隅に置いたりすると、厄除けや魔除けのご利益があるといわれている。
【重要】「砂の持ち帰り禁止」の理由とマナー違反について
稲佐の浜についてインターネットで調べると、「砂は持ち帰ってはいけない」「マナー違反になる」といった情報を目にすることがある。
初めて訪れる人ほど不安になりやすい点だが、実際には少し事情が異なる。
稲佐の浜の砂は、大量に持ち帰ることや、観光目的で集める行為が問題とされている。
神聖な浜であるため、記念品感覚で持ち帰ったり、袋いっぱいに集めたりすることは、敬意を欠く行為と受け取られかねない。また、砂を収集した後は、必ず砂浜を平らにしておくのがマナーだ。
なお、稲佐の浜は2022年以降、遊泳非推奨となっている。
小泉八雲と稲佐の浜|日本神話に魅せられ海水浴
少し視点を変えて、稲佐の浜に心を寄せた人物にも触れてみたい。
現在放送中のNHK連続テレビ小説「ばけばけ」をきっかけに、雪女・耳なし芳一などの『怪談』で有名な明治時代の文豪・小泉八雲(こいずみ・やくも)に改めて注目が集まっている。

▲出典:しまね観光ナビ(URL)
『古事記』を愛読した八雲は、神々の国・日本の中でも一番神聖な地とされるのが、出雲の国であると紹介している。外国人として初めて出雲大社の本殿への昇殿を許され、国譲り神話の舞台である稲佐の浜にも特別な思いを寄せていたという。
ちなみに、海水浴をこよなく愛した八雲は、家族とともに稲佐の浜に16日間滞在したとか。
絶景スポットとしての稲佐の浜 – 夕日・景観情報

「日が沈む聖地出雲」日本遺産の夕景
稲佐の浜は夕日の名所としても知られており、特に空気が澄む秋から冬にかけては、光の輪郭がはっきりとし、夕景の美しさが際立つ。
夕日を目的に訪れるなら、日没の30分前から浜に立つのがおすすめだ。
空の色が徐々に変わり、弁天島のシルエットが浮かび上がる時間帯がもっとも美しい。
おすすめの訪問時間帯と写真撮影ポイント
写真撮影では、弁天島をフレームの中に収めるのが定番。
島と鳥居、そして沈む太陽を組み合わせることで、稲佐の浜らしい一枚になる。
稲佐の浜への基本情報・アクセス・駐車場まとめ
住所・地図・営業時間
稲佐の浜(いなさのはま)
| 住所 | 島根県出雲市大社町杵築北稲佐 |
|---|---|
| 入浜料 | 無料 |
| 営業時間 | 終日開放 |
| 定休日 | なし |
| 滞在時間の目安 | 約15~30分 |
| 注意点 | 早朝や夕方も訪問可能だが、足元が暗くなる時間帯は注意。 |
出雲大社から稲佐の浜へ。徒歩、シェアサイクル、バスでの行き方
出雲大社から徒歩で向かうのが一般的だが、シェアサイクルやバスでの移動もある。
バスは1日に数本のみ運行のため要確認を。
徒歩
| 所要時間 | 約15~20分 |
|---|---|
| 距離 | 約1km |
| 注意点 | 多少の坂道やアップダウンがある。 |
シェアサイクル(出雲シェアサイクル YUIEN)
| 利用期間 | 2026年3月31日(火)まで |
|---|---|
| ポート | 出雲市駅前、出雲大社前駅前など |
| 料金 | 220円/60分(一日最大料金:2,200円)、1日乗車1,500円 |
| URL | https://yuien-sharecycle.jp/ |
路線バス
バス停「出雲大社バスターミナル」
↓ 約8分
バス停「稲佐の浜入口」
【公式】一畑バス(路線バス)
https://bus.ichibata.co.jp/rosen/hinomisaki/
稲佐の浜 駐車場情報(無料・有料の選択肢)
稲佐の浜には無料駐車場が整備されている。満車の場合は、出雲大社周辺の有料駐車場を利用し、徒歩で向かうのが現実的だ。以下の公式サイトでは、出雲大社周辺の駐車場を一覧で確認できる。
| 稲佐の浜駐車場 | 第1駐車場84台(無料)、第2駐車場20台(無料) |
|---|---|
| URL | 出雲大社周辺駐車場・交通情報ガイド www.taisha-traffic.net/ |
稲佐の浜の周辺グルメや観光スポット
神門通りや周辺のご当地グルメ・カフェ
出雲大社の表参道でもある神門通りなど、稲佐の浜周辺は、食べ歩きも楽しめる。「出雲そば」と「出雲ぜんざい」は必食だ。
出雲そば

▲縁結びセット(三種割子)1,330円。出典:出雲蕎麦 おくに(URL)
3段の丸い器に盛られた「三色割子(さんしょくわりご)そば」が有名で、いくつものそば店が軒を連ねている。
出雲大社の大駐車場前にある「出雲蕎麦 おくに」は、朝8時から営業する貴重な存在。
【公式】出雲蕎麦 おくに
https://izumosobaokuni.jimdofree.com/
出雲ぜんざい

▲愛守(あいす)大福ぜんざい 900円。出典:くつろぎ和かふぇ 甘右衛門(URL)
紅白の白玉餅を入れた出雲ぜんざいは、「神在(じんざい)餅」がルーツの縁起物。「くつろぎ和かふぇ 甘右衛門(あまえもん) 」は、大黒さまの最中が添えられた可愛らしいぜんざいや、神話の世界を表現したパフェが人気。
【公式】くつろぎ和かふぇ 甘右衛門(あまえもん)
https://amaemon.jp/
日御碕(ひのみさき)神社

時間に余裕があれば、稲佐の浜から車で約15分の日御碕(ひのみさき)神社へ足を延ばしたい。
松林の中に佇む朱色の社殿が印象的なこの神社は、「夜を守る神社」ともいわれ、出雲大社とは異なる役割を担ってきた。
出雲日御碕(いずもひのみさき)灯台

▲出典:出雲観光ガイド(URL)
日御碕神社から車で数分。海面から灯火までの高さは63.30mと、石造灯台としては日本一の高さを誇る、出雲日御碕灯台も立ち寄りたい。不定期だが、夜になると週末を中心に行われるカラフルなライトアップも必見だ。
【公式】出雲日御碕灯台
https://izumo-kankou.gr.jp/677
【公式】ライトアップ情報はこちら
https://izumo-kankou.gr.jp/topics/10186
稲佐の浜への訪問者が語る体験談
JALふるさとアンバサダーの体験談

JALふるさとアンバサダー(山陰支店)の藤田エミが、稲佐の浜を訪れました。
「稲佐の浜は、神話の息吹を感じられる神聖な砂浜です。
自然と神話が織りなす癒やしの空間で、潮風に吹かれながら砂浜を散策していると、穏やかな波音と風の音が心地よく響き、まるで時が止まったかのような感覚に包まれます。
日の入り時には、柔らかな光が海を照らし、一瞬一瞬がまるで絵画のよう。訪れるたびに新しい発見があり、何度でも足を運びたくなります。日本の美しい自然と歴史を感じたい方に、ぜひおすすめしたい場所です」
まとめ│稲佐の浜は神話と絶景が交差する特別な場所

稲佐の浜は、神話を知り、正しい順序で「お砂取り」を行うことで、体験の深さが変わる場所だ。
出雲大社を参拝する前にこの浜に立てば、なぜここが特別な場所として受け継がれてきたのかが、自然と実感できるだろう。
稲佐の浜とセットで巡りたい島根半島の記事はこちら
全国にある半島の魅力をお届けするサイト「半島彩発見」はこちら
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