旅の寸景

奄美大島【しまそらたび】

文・撮影/加藤庸二

密林の島の農耕行事

密林。亜熱帯植物が文字どおり密生して繁茂する森、つまりジャングルのことだ。密林自体は南国の島ではさほど珍しくないが、島いちばんの繁華街・奄美市の中心部からわずか10分ほど歩くと、もうそこからジャングルが始まるというのがこの島の最大の魅力といえよう。ビルが立ち並ぶすぐそばにこんな野生の大自然が同居しているというのは、きわめて珍しい。

 
その密林の中にはこの島を代表する生きた化石といわれるアマミノクロウサギが生息し、イタジイやエゴノキなどが鬱蒼と生い茂り、もちろん油断してはいけないあの毒蛇ハブもその中でうごめきながら、そうして今日まで島の自然は守られてきた。

 
人々を拒むようでさえある野生の大自然だが、人々はその中で農耕を成立させ、古来稲作を行ってきた歴史を持つ。瀬戸内町油井地区で毎年旧暦8月15日(2019年は9月13日)に行われる「油井の豊年踊り」は、農耕を表す踊りで構成される豊作祈願の祭である。

 
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▲左/人々に振舞われる「力めし」。 右/「綱引き」で始まる油井の豊年踊り。

 
綱引きから始まり、力士の土俵入りである振り出し、土俵祓い、稲刈り、稲すり、米搗き、力めし踊りなど、稲作過程や収穫後の作業等を芸能化し、興味深い踊りなどを奉納する。昔懐かしい村祭は今も集落に息づいている。

 
DATA|都道府県:鹿児島県 島の周囲:461.0㎞(*1)人口:61,256人(*2)

*1 日本離島センター刊『SHIMADAS』調べ *2 平成27年国勢調査

 

奄美大島へのアクセス


東京(羽田)、大阪(伊丹)、福岡、沖縄(那覇)、鹿児島、喜界島、徳之島、与論から奄美大島空港へ、JALグループ便が毎日運航。

 
加藤庸二
かとう ようじ/島フォトグラファー。国内の上陸可能な有人島すべてを踏破した島のスペシャリスト。著書に『日本百名島の旅』『島の博物事典』ほか多数。

 

(SKYWARD2019年9月号掲載)
※記載の情報は2019年9月現在のものであり、実際の情報とは異なる場合がございます。掲載された内容による損害等については、一切の責任を負いかねますのでご了承ください。

 
 

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