旅ごはん

「ゆり根」北海道【旬を味わう、野菜市場】

構成/森麻衣佳 撮影/角田進

土のなかで時をかけて、ゆっくりと、白く、大きく。ぎゅっと握ったこぶしのような球形の野菜、それが「ゆり根」です。

 
ゆり根とは小鬼ゆりや鬼ゆり、山ゆりなどの球根(鱗茎)のことで、花を観賞するゆりとは別に、食用に改良されたもの。養分を蓄えた厚い葉(鱗片葉)がうろこ状に重なり、球状を成しています。原産は中国。日本で栽培されるようになったのは明治時代の頃からといわれています。

 
日本料理にかかせない食材として京都など関西で多く食されていますが、栽培には寒冷地が適し、国内の生産量の9割以上が北海道に集中しています。なかでも大部分を占めるのが中西部の真狩村。大きく結球するのに数年を要しますから、育てるには大変な根気が必要です。

 
ほっくりとした歯ざわりと、品のいい甘み。味わいがよく、それでいてほかの味を邪魔しない。使い方は茶碗蒸しの具や和菓子の餡が定番ですが、かぼちゃと一緒にサラダにしたり、トマトソースで煮込んだりと、洋風にしてもよく合います。

 
とれたてよりも少し寝かせると、味わいはさらによくなります。滋養に富み、中国では薬用としても使われているほど。寒くなると、ゆり根のあのほっくりとした優しい感じが胸に浮かび、そうか、冬が来たんだなあと思います。大地と人間が時間をかけて作り出す、身も心も温かくなる野菜なのです。(談)

 
●食べ頃:10~1月
●大きさ:5~10cmほど
●選び方:鱗片が厚い、丸い、白い(茶色くない)

 
内田悟
うちだ さとる/レストラン専門青果店「築地御厨(みくりや)」を創業。安全安心な野菜の選び方や扱い方を独自の視点でわかりやすく伝えている。

 

(SKYWARD2018年11月号掲載)
※記載の情報は2018年11月現在のものであり、実際の情報とは異なる場合がございます。掲載された内容による損害等については、一切の責任を負いかねますのでご了承ください。

 
 

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