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クリスマス・イブとは?世界の食事や風習、過ごし方を紹介

「クリスマス」が近づくと、イルミネーションが点灯されるなどして、街は賑やかになる。その前日12月24日の夜を「クリスマス・イブ」と称し、パーティーやデートなど特別な日として過ごす人も多いだろう。

 
誰もが知っているクリスマスやクリスマス・イブだが、そういえば、クリスマス・イブの意味や、なぜ日本でクリスマスを祝うようになったのかなど、知らないことは多い。今回は、歴史をひもときつつ、世界のクリスマスやクリスマス・イブの楽しい過ごし方を探ってみたい。いつもとは違った楽しみ方ができるかもしれない。

 

日本のクリスマスの変遷

クリスマスイメージ

 
クリスマス・イブの説明をする前に、まずはクリスマスや日本での変遷を簡単におさらいしよう。

 
クリスマスとは、キリスト教の始祖であるイエス・キリストの誕生をお祝いする日のこと。キリスト降誕を祝うクリスマスの行事がいつから、どのような経緯で行われるようになったかは明らかにされていない。ローマ暦で祝っていた12月25日の冬至祭と結びついたという説をふまえれば、実に長い歴史を持つ祭日となる。

 
日本にキリスト教がもたらされたのは、戦国時代の天文18(1549)年のこと。イエズス会所属の宣教師フランシスコ・ザビエルが鹿児島に上陸し、布教活動を行った。しかしその後、江戸時代のほとんどの期間、キリスト教は禁止され、明治時代になって徐々に布教の道が開かれていった。

 
明治以降で初のクリスマス会は、クリスチャンである原胤昭(はらたねあき)によって開催されたという。そのときに登場したサンタクロースは、今のような赤い服ではなく殿様のような格好だったと伝えられている。その後、宗教性が次第に薄れて一般家庭に浸透し、家庭でケーキを食べたりプレゼントを交換したりするようになったと考えられる。

 
面白いのは、明治43(1910)年の帝国ホテルのクリスマスの催し。獅子舞や皿回しなどを行う神事芸能の「太神楽(だいかぐら)」や「かっぽれ」、心中物の芝居「お半長」などが演じられていたという。キリスト降誕と関係のない日本独自のクリスマスの原形とも言えるのではないか。

 

クリスマス・イブとは?

日本では、クリスマスよりも盛り上がりを見せるクリスマス・イブ。

 
まずは「イブ」という英語について考えてみよう。新年を迎える前日の夜である12月31日の夜を「ニューイヤーズ・イブ(New Year’s Eve)」と呼ぶためか、「イブ=前日の夜」と思っている人は少なくないだろう。だが、「eve」とは古語の「even」(夕方、晩といった意味の「evening」と同義)を省略した形であり、クリスマス・イブはクリスマス当日の夜を指すのが本来の意味である。

 
ではなぜ、25日の夜ではなく24日の夜を表すのか。これは、キリスト教で使用されている「教会暦」という暦に由来する。この教会暦では1日の区切りを日没としているため、クリスマスとは24日の日没から25日の日没までということになる。つまり教会暦においては、24日の夜はクリスマスで、25日夜ともなれば既にクリスマスは終わったことになるのだ。

 

いつもとは違うクリスマスディナー

クリスマス・イブがクリスマスの前夜ではなく、クリスマス当日そのものと知れば、がぜん張り切って準備して楽しく過ごしたい気分になってくる。

 
今年は、海外の風習を参考にしながら、自宅で楽しく過ごす方法を考えてみよう。まずは、クリスマスディナーから紹介したい。手に入りやすい食材で海外のクリスマスディナーを自分なりにアレンジしてみれば、いつもとはひと味違ったクリスマス・イブになるはずだ。

 

ローストターキーやクリスマスプディング(イギリス)

クリスマスプディング

 
イギリスの伝統的なクリスマスディナーは、ローストしたターキー(七面鳥)やチキンなどが定番だ。オーブンでただ焼くだけでなく、野菜や香草などの詰め物をしたり、肉の表面にベーコンをかぶせたりするなど、調理方法は家庭や店ごとに異なるのが興味深いところ。また、ローストビーフやローストグース(ガチョウ)などが登場することもある。

 
プラムなどを使った焼き菓子のクリスマスプディング(プラムプディング)や、ドライフルーツたっぷりのミンスパイなどのデザートも、クリスマスディナーを豊かにしてくれる。

 

ウサギ料理や鯉料理(その他、ヨーロッパ諸国)

ローストターキー

 
イギリス以外のヨーロッパ諸国のクリスマスディナーも華やかで、食卓を盛り上げる。

 
フランスのクリスマスは、「ラパン(ウサギ)」料理(写真)がお馴染みだ。クリスマスシーズンになると市場では多くのウサギが売られる。また、クリスマスケーキとして、「王様のお菓子」という意味の「ガレット・デ・ロワ」を食べる習慣がある。中に陶製の人形が入っていて、クリームを詰めたパイだ。切り分けたときに人形が入っていた人がその日の主役となる遊びを楽しむ風習がある。

 
ポーランドやチェコなどでは、鯉料理が親しまれている。ポーランドでは鯉をゼリー寄せにして食べる習慣があり、チェコでは鯉の唐揚げ「スマジェニー・カプル」を楽しむそうだ。

 
北欧のクリスマスは、冬至を祝う「ユール」という伝統祭と深い関係がある。豚モモ肉の塊に卵黄や粒マスタードなどを塗って焼いたハムの「ユールシンカ」という料理が知られている。

 

世界のクリスマスのスイーツやドリンク

上記で紹介した以外に、フランス発祥の説もある「ブッシュ・ド・ノエル」、ドイツ発祥の「シュトーレン」は日本でも広まっており、洋菓子店などでも買えるようになった。まだ日本であまり定着していないものとしては、フィンランドの星形クッキー「ヨウルトルットゥ」や、同じくフィンランドのミルク粥「リーシプーロ」などだろう。

 
お楽しみのアルコールとしては、ドイツの「グリューワイン」がある。主に赤ワインにシナモンなどの香辛料やフルーツをあわせた温かい飲み物で、寒い夜にぴったり。

 

クリスマス・イブの楽しみ方

ここからは、海外の風習を紹介しながら、クリスマス・イブの自宅での楽しみ方を見ていこう。

 

クリスマスカードを楽しむ

クリスマスカード

 
クリスマスカードもこの時期だけの楽しみ。日本でも愛らしいカードが売られるが、日本には年賀状という習慣があり、クリスマスカードと時期が近いためか、あまり意識を向けられることはないかもしれない。

 
しかし、このクリスマスカードは受け取って読んだ後も、インテリアとして活躍する。壁や本棚のほか、クリスマスツリーに飾るなどして気分を盛り上げるのもいいだろう。

 
ちなみに、カードを渡すときなどに挨拶も交わされるが、さまざまなルーツを持つ人が住むアメリカなどでは近年、キリスト教以外の宗教を信仰する人に配慮して、「メリークリスマス!」よりも「ハッピーホリデー!」といった言葉が好まれる傾向にある。

 

キャンドルナイト・キャンドルサービス

キャンドルナイト

 
クリスマスはキャンドルとゆかりが深い。キリスト教徒にとってキャンドルは、希望・平和・喜び・愛などの意味を持つ。クリスマスの4週前の日曜日からクリスマスまでのことを、キリスト教では「待降節(たいこうせつ)」や「アドベント」と呼び、キャンドルを使った礼拝が行われる。教会では、クリスマス・ミサとあわせてキャンドルナイトを行うところもあり、カップルなどに好評だ。

 
ちなみに近年は、エネルギーや環境問題について考えるために始まったキャンドルナイトが、全国各地で定期的に開催されている。キャンドルの明かりだけで夜を過ごすというものだ。キャンドルとは実にロマンティックなアイテムで、なおかつ電気も使わないため環境にも優しい。クリスマスの夜のひと時を、キャンドルの明かりだけで過ごすのもいいだろう。

 

恋人や家族と、独りでも楽しいクリスマス・イブ

今や国民的行事として定着しているクリスマス。海外のクリスマス事情や、日本のクリスマスの変遷は、自由なクリスマスの楽しみ方を教えてくれる。

 
もちろん、ロマンティックな記念日として楽しんでもいいが、家族や友人、恋人とゆっくり自宅で食事をしたり、キャンドルを用意して独りで静かに過ごしたりすることも立派な楽しみ方だ。今年はいつもとは違うクリスマス・イブやクリスマスを味わってみてはいかがだろうか。
 
 

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