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雪景色の写真の撮り方|デジタル一眼レフ撮影の7つのコツ

文・写真/フォトライター 佐々木美佳

旅行に持って行くべきアイテムのひとつに、思い出を残してくれるカメラがある。最近はスマホのカメラ機能もかなりハイクオリティになってきているが、一眼レフカメラを使いこなせるようになると、より美しく、印象的な1枚を残すことができる。

 
冬の撮影の醍醐味のひとつが、雪景色。しかし、雪景色のように白がメインとなる風景は、露出の調整などが難しく、きれいな1枚を撮るにはちょっとしたコツが必要だ。今回は、一眼レフカメラを使って雪景色を撮影する際に知っておきたい基礎知識や撮影のコツなど、京都の雪景色の実例を交えながらご紹介しよう。

 

1 雪景色の撮影は「準備」が大事

どの季節の撮影でも準備は大切だが、雪の日に撮影する場合は、準備がより重要になる。雪の日の撮影で注意すべきポイントを見ていこう。

 

ルートを考える

雪の日は足下が悪いため、狭いエリアを固めて回ると効果的だ。誰もいない無人の風景を撮りたい場合は、早朝からめぐるといい。

 
例えば京都の場合は、何時でも開いている神社からスタートするか、早朝拝観ができるお寺から撮影を始めるのがおすすめだ。

 
<参考ルート>
(1)京都駅付近コース 千本鳥居「伏見稲荷大社」~通天橋「東福寺」~天皇家からも篤く信仰「御寺 泉涌寺(みてら せんにゅうじ)」
(2)祇園コース 朝6時開門!「清水寺」~「三年坂」~秀吉とねねの寺「高台寺」~日本最古の禅寺「建仁寺」~浄土宗総本山「知恩院」~天台宗の京都五ケ室門跡のひとつ「青蓮院(しょうれんいん)」
(3)嵐山コース 「渡月橋」~「竹林の小径」~源氏物語の宮「野宮神社」~伝統的建造物群保存地区「嵯峨鳥居本」~千二百羅漢「愛宕念仏寺」

 
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▲「伏見稲荷大社 千本鳥居」。大人気の場所を無人で撮るには早朝がねらい目。

 

機材選び

マイナス20度ほどの場所ではバッテリーがすぐに切れたり、シャッターが動かなくなることがあるが、日本国内であればマイナス気温による撮影時の問題はほとんどないだろう。

 
ただし雪の日は滑りやすく、転んだりする危険もあることから機材はなるべくコンパクトにまとめ、レンズは1〜2本にすると動きやすい。

 
街の風景写真を撮影する際に一番使い勝手のよいレンズは、24-70mm。それに小さな境内や狭い場所から広く撮影する場合は、16〜35mmの広角レンズがあると便利だ。雪が降っているときはストロボを持っていくと撮影の幅が広がる。

 
また冬の寒い日はバッテリーの減りがやや早いため、予備のバッテリーも用意しておこう。雨や雪対策にはビニールにレンズの大きさの穴を開けてカメラを覆うと防水対策になる。

 
なお三脚は禁止している場所もあるので、事前に確認が必要だ。

 
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▲「新熊野神社(いまくまのじんじゃ)」。後白河上皇お手植えの「大樟」を主役に16mmで広く撮影。

 

どんな風に撮るか先に完成図を考えておく

良い写真を撮影するには、先に完成イメージを考えておくことが重要だ。

 
例えばマジックアワーと呼ばれる朝焼けや夕暮れ時の時間帯は被写体をより美しく魅せてくれます。事前にロケハン(下見)をしておいて、構図や写真の仕上がりを考えておくことが重要です。

 
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▲「高台寺(こうだいじ)」 台所坂 写真:F4、1/50ss、ISO5000、30mm 、夕暮れ時の17:30の空の色と電灯の灯りとの兼ね合いを見ながら好みの色に設定。今回は見た目の色に近い4500Kで撮影。

 
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▲「高台寺(こうだいじ)」 台所坂 写真:F4、1/50ss、ISO5000、35mm 、温かみのあるK5800で撮影し、黒レベルを中心に写真編集ソフトで補正しゆるふわに。生データであるRAWで撮影しておくと編集の幅が広がります。

 

三分割構図で撮ればまずは間違いなし

カメラの設定でグリッドラインが出てくるようにして、交差する部分に主役が来るように撮ると、バランスのよい美しい写真になる。三分割構図を意識すると、水平もとれて、すっきりとした仕上がりに。普段、スマホなどで撮影するときも三分割構図を意識して撮影するなど、慣れておくと本番でも失敗することがない。

 
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▲「東福寺」紅葉で有名な通天橋が白銀の森に。

 

2 雪をより美しく撮影するには「露出補正」を明るめに

カメラは、全体が白色の写真にピントを合わせるのが苦手。自動露出で撮影すると、カメラの露出計が「明るい!」と判断して、全体的に暗く写そうとする。そのため、明るく露出補正をすると白い雪景色が美しく写せるのだ。以下に、絞り優先AVモード、マニュアルで明るく撮影する方法と、現像で明るくする方法を紹介しよう。

 

絞り優先・AVモードで明るくする方法

(1)「露出補正」をあげて明るくする
(2)暗いところも明るくするISOの数値をあげる
(3)明るくボケるF値の数値を小さくする

 

マニュアルで明るくする方法

(1)暗いところも明るくするISOの数値をあげる
(2)シャッタースピードの数値をブレない程度に下げる(光を取り込む時間が長くなり、明るくなる)
(3)明るくボケるF値の絞り数値を小さくする

 

現像で明るくする方法(RAWデータで撮影した場合)

(1)露光量、白レベルを上げる
(2)シャドウ、黒レベルを抑える(影を白くする場合)
(3)コントラストや明瞭度、彩度を下げる(ゆるふわにする場合)

 
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▲「三千院」露出をあげると白銀の世界に(下)。現像でシャドウ部分を明るくする技もアリ。

 

3 雪の日の「色温度」は3500~4500Kがおすすめ

一眼レフカメラには、光源の色を数値で表した「色温度」を調整する機能がある。昼間の太陽光では5200K(ケルビン)が通常だが、雪の冷たく寒い空気感を演出するには、ホワイトバランスの色温度をマニュアルで3500〜4500Kくらいの低めに設定する。もしくは電球光や蛍光灯モードで撮影してみよう。色温度を低めにすると、写真全体が少し青みがかった、寒い雰囲気のイメージになる。

 
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▲「貴船神社」。色温度を晴天モード5200K(上)から、3500K(下)に変えるとイメージがこれだけ変わる。

 

4 雪が降っているときは「フラッシュを使う」と幻想的な写真に

雪が降っているときは、フラッシュを使うと雪に光が当たり、幻想的な写真に仕上がる。
背景が1mくらいしかないと、いかにも「フラッシュをたきました」という写真になるため、少し離れて撮影するのがおすすめだ。背景には強い光が届かず、雪だけに光が届く位置まで距離をとって撮影すると、雪がいい感じに写ってくれる。

 
雪の写る位置によっても印象が変わるため、何枚も撮ってお気に入りの一枚を選ぶといい。

 
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▲「清水寺」。左/フラッシュ無し。右/フラッシュ有で色温度を3500Kに設定して撮影した写真。

 

5 「F値は小さくする」と雪が大きく写る

レンズによってF値は変わるが、極力小さな値にするとボケ写真が撮れる。被写体は遠く暗めの背景にして撮影すると、白くボケた雪が幻想的に写り込む。

F値が小さくてもフラッシュなしだと、雪はあまり写らないため、たくさん雪が写っている写真にしたい場合はF値を下げて、フラッシュも使おう。

 
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▲「清水寺」。吹雪のような状態の中、フラッシュあり、F4 1/50ssで撮影。

 

6 「シャッタースピード」は1/50~1/100秒スタート

雪が降るスピードにもよるが、シャッタースピードが速いと雪が止まるため丸く写り、シャッタースピードを長くすると吹雪のように流れている線状の雪が写る。

F値との組み合わせにもよるので、イメージに近い雪写真になるように、シャッタースピードやF値を変えて撮影してみよう。

 
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▲「清水寺」。F8 1/50ss 雪は線状に写った。

 

7 帰るときは「結露」に注意

帰りのバスや、休憩時のカフェの中で、撮ったばかりの写真を見返したくなるが、寒いところから暖かい場所に移動するとカメラに結露が発生する可能性があるため、しばらくの間、カメラバッグの中からカメラは出さないようにしよう。

 
気温差によるが2時間ほどは、カメラをバッグの中に入れたままがまんを。筆者も帰り際につい、いつも通りカメラをバッグから出してしまい、レンズがくもり、焦った経験がある。

 
旅行先では乾燥剤をたくさん入れたケースを簡易防湿庫にして、カメラが乾燥するまでしばらく入れておくのもひとつの方法だ。

 
今回は、個人的な経験を踏まえながら、雪の日の撮影ポイントをご紹介してきたが、いかがだろう。あなたの奇跡の一枚、素晴らしい旅の美しい瞬間を一枚でも多く残せますように。
 
 

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