とっておきの話

航空灯火について【キャプテンの航空教室】

文/川井 正宏 イラスト/高橋 潤

本日もJALグループの翼をご利用いただきまして誠にありがとうございます。

 
突然ですが、普段目にする交通用信号機の色配列をご存じですか?今回は、信号機に近い役割を果たす航空灯火について話をしてみたいと思います。

 
航空灯火とは航空機の航行を援助するための施設の一つで、色光や配置パターン、点灯方法などの組み合わせにより意味が異なります。白、可変白(輝度が変えられ、橙色に近くなる)、赤、青、黄、緑の6色が使用され、そのまま点灯(不動光)、点滅(明滅)、閃光させて運用されます。

 
例えば、高層ビルの屋上で点滅する赤色の灯火も航空灯火の一つで航空障害灯といいます。地表面から高さ60m以上の物件に設置しなければならないと航空法で定められており、厳密には白色か赤色か、不動光か明滅光か閃光か、物件の高さに応じて設置されます。

 
空港内にある灯火は飛行場灯火といいますが、真っ先に滑走路や誘導路の緑色、青色、白色、赤色などの灯火が思い浮かぶのではないでしょうか。

 
誘導路とは駐機場から滑走路までを結ぶ道路のことですが、私たちパイロットはこれらの地上走行時にも非常に気を使います。特に夜間や悪天候による低視程時は、誘導路の中心線を示す緑色の灯火を頼りに、誘導路の両縁線を示す青色の灯火に用心しながら、管制官の指示内容と実際の位置に齟齬がないか、障害となる物はないかなど、細心の注意を払って走行をしています。

 
また、札幌(新千歳)、東京(羽田)、大阪(伊丹)、福岡、沖縄(那覇)の各空港には、滑走路状態表示灯システムが導入されています。これは他の航空機が滑走路を占有している場合に、センサーにより赤色不動光の灯火を自動的に点灯させ、離陸しようとする航空機または滑走路に進入しようとする航空機に警報を発する仕組みになっています。

 
航空機の運航においても、赤は「止まれ」、黄は「注意せよ」、緑は「進んでもよい」との認識で、私たちも赤色の灯火を視認すると即座に停止するよう行動します。

 
さて、冒頭の質問の答えとなりますが、道路交通法では左から青、黄、赤の順で、青は「進んでもよい」、赤と黄は「止まれ」と定められています。ただ、実際の信号機の青は緑色に近いため、私たちは青でも緑でも「進んでもよい」と理解していると思います。ちなみに、航空機の運航では、前述のとおり、青色の灯火は誘導路の両縁線を示すため「進んでもよい」ではなく「近づかない=用心する」と、青と緑では取り扱いが大きく異なっています。

 
最後に、航空灯火は空港施設担当者により日夜、保守点検・管理がなされ、管制官の適切な運用によって、安全な運航へとつながっています。

 
私たちパイロットもこの航空灯火のありがたさに感謝しながら、地上走行中はもちろん、上空での旋回時にも必ず目視による左右確認「Left Clear!Right Clear!」を行い、より安全な運航の確保に努めております。

 

川井 正宏 Kawai Masahiro
JAL
ボーイング787型機 機長
出身地:愛知県
趣味・特技:ウォーキング、読書
座右の銘:感謝の心

 

(SKYWARD2022年11月号掲載)
※記載の情報は2022年11月現在のものであり、実際の情報とは異なる場合がございます。掲載された内容による損害等については、一切の責任を負いかねますのでご了承ください。

 
 

関連記事

EDITORS RECOMMEND~編集部のおすすめ~

キーワードで記事を探す