とっておきの話

パイロットのコントロール【キャプテンの航空教室】

文/村上 翼 イラスト/高橋 潤

本日もJALグループの翼をご利用いただき誠にありがとうございます。

 
新型コロナウイルス感染症の影響で心休まらないこともあるかと思いますが、皆さま心身共に健やかにお過ごしでしょうか。私はこれを機に健康の大切さ、人生の豊かさとは何かと考えています。そこで今回はパイロットが受検する「航空身体検査」や、昨今、日本で導入された「疲労リスク管理」を紹介させていただきます。

 
パイロットは航空法により、「航空身体検査」を受けることが義務付けられており、1年に1回この検査に合格し、航空身体検査証明書を保持しなければ乗務することはできません。内科、眼科、耳鼻咽喉科、精神神経科など、数十項目の検査を受けたうえで、航空身体検査医が航空業務を遂行する者として適正な心身の状態を保持しているか、を判断しています。私たちは定年の日までこの健康状態を保てるよう心身に気を遣い、ベストコンディションでフライトに臨めるように日々努力しています。

 
また、世界ではパイロットの「疲労リスク管理」が法制化され始め、日本でも2017年より導入されました。これにより、必要な休息時間、乗務時間などが以前より明確になり、過度な疲労状態を未然に防ぎ、科学的見地に基づく詳細な疲労管理基準が導入されるようになりました。

 
どれだけ優れた知識や技量を持ち合わせていても、心身ともに健康でなければその能力を発揮することは不可能です。パイロットが的確に業務を行うためには、心身の健康が極めて重要であり、「航空身体検査」と「疲労リスク管理」は非常に重要なのです。

 
ただ、いくら周りの環境が整っていたとしても、良好な心身状態を維持するには個人の努力が必要です。日常生活に積極的に運動を取り入れ、食事にも気を付けて過ごさなければ、健康な心身を保つのは容易なことではありません。そして何より大切なことは、自分なりのリフレッシュ方法を見つけることです。

 
私のリフレッシュ方法は海で遊ぶことで、休みの日や仕事が早く終わった夕方に家族や仲間たちとサーフィンなどをしています。海に入る、ただそれだけのことですが、沖縄の美しい海と自然が最高の健康と豊かな生活をもたらしてくれているとコロナ禍でも感じています。

 
このように私たちはそれぞれの方法で、ベストコンディションでフライトに臨めるよう日々努力し、飛行機のコントロールだけでなく、自分の心と体をコントロールするプロでもあるのです。

 
これからも今しかできない新しいことにチャレンジし、健康を維持しながら人生を豊かにすることで、皆さまに快適な空の旅をご提供できるよう日々精進してまいります。

 
本日のご搭乗、誠にありがとうございます。

 

村上 翼 Murakami Yoku
RAC
DHC8-Q400CC型機 機長
出身地:東京都
趣味:海遊び
座右の銘:成功の反対は諦めること

 

(SKYWARD2022年4月号掲載)
※記載の情報は2022年4月現在のものであり、実際の情報とは異なる場合がございます。掲載された内容による損害等については、一切の責任を負いかねますのでご了承ください。

 
 

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