とっておきの話

より効果的な訓練を目指して【キャプテンの航空教室】

文/蜂須賀隆鋭 イラスト/高橋潤

本日もご搭乗いただきありがとうございます。窓の外には何が見えていますか?晴れ渡った空、山と海、市街地の夜景、もしくは雲の中で何も見えていないでしょうか。機内では、日常生活では見られない上空からの景色をお楽しみいただけているのではないかと思います。

 
パイロットの仕事も、普段の生活ではなかなか見ることができないものではないでしょうか。皆さまを快適に目的地にお送りする業務のほかに、広報活動など幅広い業務に携わっているパイロットもいます。そのなかで、私はパイロットが年に数回受けなければならない定期訓練のインストラクターや、訓練内容の設計などを担当しています。

 
飛行機が飛ぶようになってから100年以上たち、より効果的な訓練が構築されてきました。運航環境の変化に伴い、操縦技術(テクニカルスキル)の習得のみでなく、パイロット同士が連携して安全に業務を行うために必要な認知・判断・対人関係などに関する能力(ノンテクニカルスキル)が注目されるようになりました。

 
JALグループでは、ノンテクニカルスキルを重視した訓練審査プログラムである「CBTA(Competency-Based Training and Assessment Program)」のもとで、新しい訓練体系「EBT(Evidence-Based Training)」の導入を進めており、J-AIRでも今年度から本格運用を開始しました。EBTでは、「Competency(業務において期待される成果を得るために求められる行動指標)」を向上させ、より安全性を高めることを目的としています。

 
訓練の設計では、世界中のエアラインの実際の運航や訓練審査で得られたデータを共有・分析した「Evidence-based(証拠に基づくこと)」から、各エアラインの運航に即した内容を構築していきます。そのため、訓練の内容もエアラインや機材によって異なりますが、訓練を通して「パイロットが自ら学ぶこと」を支援し、安全性の向上に向けて「行動を変化させること」を共通目的に掲げています。

 
実際の訓練内容の作成もこれらの考え方をもとに、シミュレーターで再現可能なものを絞り込み、さまざまな条件を検討しています。従来の訓練とは違い、今まで経験したことがない状況を作り出し、未経験の事態が発生しても臨機応変に対応する能力の向上を目指しています。

 
まだまだ始まったばかりではありますが、訓練を経験した社員からは、自らの行動を振り返り、ノンテクニカルスキルを発揮できた部分、さらに伸ばしていきたい部分について学ぶ姿勢が見えています。今後も安全なフライトを皆さまに提供できるよう、より効果的な訓練を目指していきます。

 

蜂須賀隆鋭 Takatoshi Hachisuka
J-AIR
エンブラエル170/190型機 機長
出身地:愛知県
趣味・特技:水泳
座右の銘:為せば成る

 

(SKYWARD2021年8月号掲載)
※記載の情報は2021年8月現在のものであり、実際の情報とは異なる場合がございます。掲載された内容による損害等については、一切の責任を負いかねますのでご了承ください。

 
 

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