とっておきの話

黒潮町の思いが詰まった土佐はちきん地鶏の缶詰

【dancyu編集長が選ぶニッポンの美味】

文/植野広生 撮影/安永ケンタウロス

南海トラフ巨大地震が発生すると、高知県黒潮町は全国で最も高い津波に襲われるという予測が出た。その2年後の2014年3月11日に「もしもに備える食」と「毎日美味しい」をテーマに、「黒潮町缶詰製作所」が誕生した。地元の魚介、肉、野菜を使い、小さな工場で丁寧に手作りする。東日本大震災で被災地に缶詰が送られたが、アレルギーを持つ被災者が食べられなかったことを知り、七大アレルゲンを一切使わないことに決めた。災害が起きると、被災地へ缶詰を送り続けている……。

 
そんなストーリーを知ったのは、ここの缶詰に出合ってしばらくたってからのこと。以前、高知の店で目が留まり、買ってみたら、缶詰らしくない、きれいな味わいに驚いた。黒潮オイルのごろっとカツオ、柚子香るブリトロ大根、四万十うなぎ蒲焼きなど、あれこれ食べているうちにハマってしまった。

 
そもそも高知は食材の宝庫だ。何度も訪れているが、その度に多彩な美味しさに驚く。土佐はちきん地鶏もその一つで、それが美味なる缶詰になった。「ゆず塩仕立て」は心地よい歯応えのモモ肉を、柚子胡椒の上品な香りで包んでいる。日本酒や焼酎、白ワインとともに。「バルサミコ仕立て」は骨を抜いた手羽元がバルサミコ酢の甘味とブラックペッパーの刺激で濃厚な旨味となる。こちらはビールや赤ワインがいい。

 
もちろん、日常のごはんのおかずでもいいし、備蓄食料にもなる。この旨さが3年間も持つのはありがたい。いつも台所に置いておきたくなる。

 
ちなみに、「はちきん」は土佐の女性のこと。気が強いが明るく楽しい。この缶詰も、そんな魅力が詰まっていて、つい一緒に酒を呑みたくなるのだ。

 

黒潮町缶詰製作所 『土佐はちきん地鶏』
ゆず塩仕立て/バルサミコ仕立て
各650円(税込)
URL:https://kuroshiocan.co.jp

 

植野広生
うえの こうせい/食の雑誌『dancyu』編集長。1962年、栃木県生まれ。大学卒業後、新聞記者を経て経済誌の編集者に。その傍ら、数誌で食の記事を手がける。2001年にプレジデント社に転職し17年4月より現職。最新著書は『dancyu “食いしん坊”編集長の極上ひとりメシ』(ポプラ新書)。

 

(SKYWARD2020年9月号掲載)
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