旅の寸景

平和な時代に遺る、静謐な要塞島 —和歌山県・友ヶ島 【知られざる日本の離島】

文・撮影/加藤庸二

友ヶ島は一つの島の名前ではなく、沖ノ島、地ノ島、虎島、神島の4つの無人島の総称だ。さて、その無人島にもいろいろある。歴史を辿っても人の住んだことがまったくない島もあれば、昔は定住があったという島もある。その点でいえばここは戦時中に人が住んだ島である。大阪湾の防衛に当たるため、海峡部のこの島には要塞が造られたのだ。

第三砲台跡の入り口

▲第三砲台跡の入り口。古色を帯び、佇まいが美しい。

島内の案内表示を辿りながら見るその要塞の数々。半世紀以上、時が止まったように古色を帯びたレンガ造りの建造物たち。これらの景観をなんと表現すればいいのだろう。上空からは見えづらい深い森の中に造られた弾薬庫と砲台跡、兵舎などの建物。その遺構が草木の中で静かに眠っているかのようだ。

多くの若い人たちがこの島のことを知っているという。なぜだろうと調べてみると、どうやらそれは宮崎駿さんのアニメ作品『天空の城ラピュタ』の影響らしい。空想の古代国家の戦いというストーリー。そのなかでは随所にこの島とおぼしき場所が登場する。その作品の世界観がここに充満しているのだ。苔むす石階段やくすんだレンガの遺構。紀伊半島と淡路島の紀淡海峡にあるこの島は、いろいろなことを連想させる不思議な無人島である。

 

▲トップ画像/終戦後に取り壊された第二砲台跡。目の前には群青色の紀淡海峡が広がる。

DATA|都道府県:和歌山県 島の周囲:不明 人口:0人

 

友ヶ島へのアクセス


東京(羽田)、札幌(新千歳)、沖縄(那覇)、石垣から関西国際空港へJALグループ便が毎日運航。和歌山市・加太港より沖ノ島へ定期船が運航。

加藤庸二
かとう ようじ/島フォトグラファー。国内の有人島で上陸可能な430余島のすべてを踏破した島のスペシャリスト。著書に『日本百名島の旅』『島の博物事典』など。

 

(SKYWARD2020年2月号掲載)
※記載の情報は2020年2月現在のものであり、実際の情報とは異なる場合がございます。掲載された内容による損害等については、一切の責任を負いかねますのでご了承ください。
※最新の運航状況はJAL Webサイトをご確認ください。

 

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