旅への扉

海と山の宝石

文/中津海麻子 撮影/酒井修平

周防灘に丸く突き出た国東半島へ。豊かな自然と情熱溢れる人々が育む極上の海の幸と山の恵みに出合う旅。

 

香り爽やかスパイシー

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▲山を登るとオリーブ畑が広がっていた。

 
大分県北東部に位置する国東半島。海沿いの街、国東市では今、地元ブランドの食材が盛り上がりを見せている。

 
市内の中心から山間部へ。なだらかな丘陵にはオリーブ畑が広がっていた。

 
Mr. and Mrs. kawano

▲左/オリーブ農家の河野さん夫妻。右/陽子さんお手製のお茶請け。オリーブオイルで揚げたおかきとさつまいもの軽やかさ!

 
国東市でオリーブの栽培が始まったのは約10年前。一大産地の香川県小豆島と同じ瀬戸内海に面していることから、オリーブ栽培に適しているだろうと、九州でいち早く植樹が始まった。しかし、ひと筋縄ではいかなかったという。「確かに温暖ではあるんだけど、小豆島に比べると雨が多く、土壌の水はけもいいとは言えない。悪戦苦闘の連続だよ」とオリーブ農家の河野博己さん。そして、笑顔でこう続けた。「その分、しっかりと手をかけ大切に大切に育てているけんね」。

 
収穫した実は24時間以内に搾り、エキストラバージンオリーブオイルに。爽やかな香りとクリアな味わいで、ちょっぴりスパイシー。オイルなのに口当たりがさっぱりとしている。「オリーブのジュース、そのままですから」と、河野さんの妻、陽子さんはニッコリ。

 
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▲左/摘みたてオリーブの塩漬けも。中央/国東オリーブをたっぷり使ったオリーブオイル。右/オリーブ石鹸とハンドクリーム。

 
JAおおいた東部事業部では、同市内で収穫したオリーブ100%で作るオイルを「国東オリーブオイル」として販売し、人気を博している。さらに、このオイルを使った無添加の石鹸やハンドクリームも。手がけるのは、手づくり洗顔石鹸を製造する「ラ・コンテス」代表の小林繁利さん。「防腐剤などを使わない無添加石鹸は鮮度が重要。収穫してすぐに搾るフレッシュな国東オリーブオイルをたっぷりと使った石鹸は、汚れを落としながらもしっとりした使い心地が自慢です」。良質なオリーブオイルは、肌にとっても“美味しい”のだ。

 
毎年10月には収穫体験ツアーが開催される。県内外から訪れる観光客は完熟オリーブを手で摘み、地元レストランのシェフが腕を振るうオリーブやオイルをふんだんに使った料理に舌鼓を打つ。小林さんによるオリーブオイルを使ったリップクリーム作り教室も好評で、毎年参加するリピーターも少なくないという。

 

小ぶりの身に旨味がギュッ!

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▲左上/きれいな環境で育つくにさきOYSTERは殻に付着物が少ないのも特徴。左下/くにさきOYSTERの養殖場。引き潮では干潟になる。右/小粒ながら旨味が凝縮した身は生で味わいたい逸品。

 
大分空港から車で数分。ヤンマーマリンファームに到着すると、「くにさきOYSTER」と書かれた看板が迎えてくれた。「漁獲量が減少するなか、漁船やエンジンを製造するメーカーとして漁業の助けになる何かができないか、と。牡蠣などの二枚貝の養殖のエサ作りからスタートし、その後、牡蠣の陸上種苗生産に乗り出しました」とヤンマー食事業推進室の亀井貴司さん。2015年には国東市、漁協、ヤンマーが手を組み「くにさきOYSTER」のブランドで養殖、販売を開始した。

 

牡蠣が大きくなるまで
 

 

▲(一番左・左から2番目)稚貝をファームで育てる。(右から2番目)養殖場の中間育成施設で20mm程度に(一番右)選抜した牡蠣が干潟で約5cmになったら、沖合へ。

 
こだわりは「安全性」。養殖海域は2週間に一度水質検査し、水揚げ後に牡蠣を検査。合格した牡蠣は精密にろ過された海水でさらに浄化して出荷するという念の入れようだ。安全性にこだわった牡蠣はきれいな味わいに。現在、東京、大阪、福岡、大分などのレストランを中心に提供され、ヨーロッパの生牡蠣を思わせる小ぶりの身ながら旨味が凝縮した味が、多くのシェフや牡蠣好きを魅了している。

 
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▲管理担当の根本さんは、愛おしそうに牡蠣の成長を見守る。

 
マリンファームでは牡蠣の赤ちゃんである「種苗」を3㎜前後の大きさまで育てて、海の養殖場へ。「牡蠣はいい意味でも悪い意味でも、いろいろなものがいる海のほうが早く成長します。国東の海はきれいで安全ではあるのですが、きれいすぎて大きくなるまでに時間がかかる。成長にあわせて牡蠣を干潟や沖合の養殖場に移すことで、スッキリとした味わいながら旨味が凝縮するのです」と、牡蠣を管理するヤンマーの根本晃和さん。手間暇を惜しまず育てられた箱入り娘のような牡蠣を、「ぜひ生で味わって」と根本さんは自信を見せた。

 

素材を味わう国東グルメ

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▲左/ソテーしたくにさきOYSTERと地元の「潮風トマト」を使った前菜。中央/小ねぎのペペロンチーノは、仕上げに国東オリーブオイルをたっぷりと。右/「トラットリア・スティーレ」(大分県国東市安岐町塩屋293-5 0978-67-3015)の平野シェフ。

 
市内にあるイタリアンレストラン「トラットリア・スティーレ」では、シーズンになると国東ブランドのオリーブと牡蠣が登場する。「どちらも素材そのものに力がある。余計なことはせずシンプルに、が最高です」と平野純也シェフ。生牡蠣にオリーブオイルをたっぷりかけ、地元産のレモンをキュッとひと搾り。舌の上につるんと滑らせると、海の香りと牡蠣ならではの濃厚な旨味を、オリーブオイルの爽やかな香りが引き立てる。後味はスッキリとしていて、これなら何個でも食べられそうだ。

 
品質の高さと美味しさは折り紙つきだが、いずれも生産量がまだまだ少ない。特にオリーブオイルは翌シーズンを待たずして売り切れてしまう。「オリーブ専門員」として活動する国東市農政課の上田啓太さんは「生産量を増やしながら、オリーブを使った商品やイベントで地域を盛り上げていきたい」。オリーブの葉から作る化粧水やお茶など、実以外を使った商品開発も模索している。
オリーブも牡蠣もこれからシーズン到来。「海と山の宝石」を堪能できる旅が国東半島で待っている。

 

トラットリア・スティーレ
電話:0978-67-3015
住所:大分県国東市安岐町塩屋293-5

 
中津海麻子
なかつみ あさこ/ライター。「酒とワンコと男と女」をテーマに、日本酒やワイン、食、ペット、人物インタビューなどを取材・執筆する。

 
酒井修平
さかい しゅうへい/フットワークの軽さが売りのフリーランスのカメラマン。温泉とグルメが大好き!!

 

国東半島へのアクセス

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東京(羽田)、大阪(伊丹)から大分空港までJALグループ便が毎日運航。空港からは車、バスなどで移動。

 

(SKYWARD2019年10月号掲載)
※記載の情報は2019年10月現在のものであり、実際の情報とは異なる場合がございます。掲載された内容による損害等については、一切の責任を負いかねますのでご了承ください。
※最新の運航状況はJAL Webサイトをご確認ください。

 
 

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