旅ごはん

ロンドンのパブの、濃厚な一皿【ご当地カレー進化論】

文/水野仁輔 写真/合田昌弘 構成/森 麻衣佳

イギリス・チキンティッカマサラ

カレーが国民食、といえば日本のことだと推測できるが、イギリスにも国民食と評判の立つカレーがある。チキンティッカマサラだ。スパイスとヨーグルトでマリネして焼いた鶏肉(チキンティッカ)をカレー(マサラ)にした。インド料理をベースにイギリス人好みにアレンジしたアングロ・インディアン料理である。

 
今もロンドンのパブでは親しまれている一品で、実際にパブで食べたカレーはマスカルポーネチーズがどんと盛られていた。濃厚な美味しさに圧倒されたことを思い出す。そのルーツは、スパイス貿易の拠点を求めてイギリス東インド会社がインドの植民地支配に乗り出した、18世紀頃にさかのぼるようだ。

 
乳製品を駆使したインドの人気料理、バターチキンに炒め玉ねぎのうま味を加えたのがイギリス人の発明だと僕は考えている。「もっと美味しくしたい!」というイギリス人の貪欲さがこの味を作ったのだろう。シンプルなスパイスブレンドでスッキリした風味を求め、粉状のアーモンドをマリネに忍ばせて香ばしさも加えてみた。あくまでもカレーソースがメイン。そこにご飯を添えるイギリススタイルは踏襲しておこう。

 

【材料(3~4人分)/作り方】

鶏モモ肉(ひと口大に切る) 600g
〈マリネ用〉
・プレーンヨーグルト 100g
・トマトペースト(6倍濃縮) 大さじ2(36g)
・アーモンドプードル 大さじ1
・塩 小さじ1

 
〈パウダースパイス(すべて粉状のものを使う)〉
・ターメリック 小さじ1/2
・グリーンカルダモン 小さじ1/2
・パプリカ 小さじ1
・クミン 小さじ2
・コリアンダー 小さじ2
・ガラムマサラ 小さじ1/2

 
無塩バター 30g
にんにく(みじん切り) 1片
しょうが(みじん切り) 1片
玉ねぎ(スライス) 小1個
黒糖 小さじ1
生クリーム 100ml
カスリメティ(あれば) 適量
マスカルポーネチーズ 適量
ライス 人数分

 

【作り方】

1)ボウルにマリネ用の材料とパウダースパイスをすべて加えてよく混ぜ、鶏肉を加えてよくもみ込み、冷蔵庫で30分ほど置く。250度に加熱したオーブンで15分ほど焼く。
2)鍋にバターを熱し、にんにくとしょうがを加えてこんがり色づくまで炒める。玉ねぎを加え、濃いきつね色になるまで炒める。
3)焼いた鶏肉を焼き汁ごと加える。
4)黒糖、生クリームを加えて軽く煮立て、ふたをして弱火で10分ほど煮る。ふたをあけて、あればカスリメティを混ぜ合わせ、器に盛る。
5)マスカルポーネチーズとライスを添える。

 
みずの じんすけ
スパイスお届けサービス「AIR SPICE」代表。20年以上にわたって全国各地でカレーのライブクッキングを実施。「カレーの学校」も運営中。カレーに特化した著書を50冊以上出版し、近著に『スパイスの教科書』(パイ・インターナショナル)がある。

 

(SKYWARD2018年3月号掲載)
※記載の情報は2018年3月現在のものであり、実際の情報とは異なる場合がございます。掲載された内容による損害等については、一切の責任を負いかねますのでご了承ください。

 
 

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