半島彩発見

【能登半島】旅で応援!日本海の絶景と半島の幸を心ゆくまで

文/黒澤 彩 撮影/鮫島亜希子

能登半島の風土に触れ、味わう

小松空港から金沢までは車で約40分。能登半島を北上しながらさらに走ること約1時間。中能登と呼ばれるエリアを中心に、能登半島の魅力に出合えるスポットを巡った。

 
震災の影響が残りつつも、復興に向けて歩みを進めているお店や観光名所が数多くあるこの地域。文学作品の舞台にもなった日本海沿岸の絶景を見晴らし、豊かな自然がもたらしてくれる美味なる恵みに舌鼓を打つ。土地の人と触れ合うことでも、わずかながら地域を応援することができるはずだ。今こそ、能登を旅しよう。

 

「千里浜(ちりはま)なぎさドライブウェイ」を爽快に走る

▲波打ち際に車を停めて、散歩や記念撮影を楽しむ人の姿も。

 
ドライブを楽しめる名所は全国に数あれど、すぐ近くまで波が打ち寄せるビーチを爽快に走れるのは国内で唯一、ここだけ。一方通行ではないので海岸線を北上することも南下することもできて、景色を繰り返し楽しめるのも魅力だ。全長約8kmの砂浜には夏季以外、ガードレールも標識もなく、初めはドキドキするけれど、広々として見通しもいいので対向車とすれ違うゆとりも。オフロード特有の凸凹がなく、ノーマルタイヤでも走りやすいのは、粒が細かく、水を適度に含む砂質のおかげだそう。

 

▲車の通ったあとが固まっていて走りやすい。歩行者もいるので速度は落として!

 
水平線に沈む夕日を見られることでも有名な千里浜。車を降りてビーチを散策したり、バーベキューもできるというから、天気のいい日はここでゆっくり過ごすのもいい。天候や波の状況によって通行が規制される日もあるので、Webサイトで確認を。

 

千里浜なぎさドライブウェイ
住所:石川県羽咋市千里浜町~宝達志水町今浜
電話:0767-22-1118(羽咋市商工観光課)
URL:https://www.city.hakui.lg.jp/soshiki/sangyoukensetsubu/syoukoukankouka/12/1/2505.html(石川県羽咋市Webサイト)

 

森深い、縁結びの神社「氣多(けた)大社」

▲拝殿、本殿をはじめ、境内には5件の国指定重要文化財が。本殿に祀られているのは大己貴命(おおなむちのみこと)。

 
創建は約2100年前とも伝えられる氣多大社は、古くは万葉集に記されているほど歴史が深く、由緒ある能登国一宮。「森に囲まれていて、海も近く、能登の風土と歴史を感じていただける場所ではないでしょうか」とは、神職の三井比以呂(ひいろ)さん。本殿に祀られている大己貴命は6柱の姫神と結婚したことから、縁結び・子宝の神様ともいわれる。

 

▲上/神職の三井比以呂さん。下/社殿がすべて檜皮葺(ひわだぶき)の氣多大社では、檜皮を奉納できる。

▲左/神職の三井比以呂さん。右/社殿がすべて檜皮葺(ひわだぶき)の氣多大社では、檜皮を奉納できる。

 
また、国の天然記念物に指定されている「入(い)らずの森」の摂社に2柱の夫婦神様が祀られていることも、縁結びのご利益があるといわれるゆえんだ。年に一度、宮司だけが森の中に入って神事を行うという神聖な森。参拝者が立ち入ることはできないが、森の入り口の鳥居の前で手を合わせてご挨拶を。

 

▲入らずの森の側、木々に囲まれるようにある「太玉神社」。摂社、末社もそれぞれに異なるご利益がある。

 

氣多大社
住所:石川県羽咋市寺家町ク1-1
電話:0767-22-0602
URL:https://keta.jp

 

「能登千里浜レストハウス」の絶品浜焼き

▲季節によって食材が替わる「浜焼き5点盛り」。卓上で焼きながら熱々をほおばる。

 
「千里浜なぎさドライブウェイ」の終着点にあり、カフェやお土産店などもあってたっぷり楽しめるレストハウス。ここを訪れたら、レストラン「浜焼き能登風土」の名物、卓上で焼いて味わう浜焼きをオーダーしよう。

 
能登半島は、対馬海流とオホーツク海流が交わる所に位置し、日本でも指折りの豊かな漁場といわれるが、そんな能登で古くから栄えた天然の良港、七尾港から直送される魚介は新鮮そのもの。盛り合わせの他、牡蠣、サザエなど季節ごとのお楽しみも。特に冬の牡蠣は濃厚な味わいで、観光客はもちろん、地元の人たちも牡蠣のシーズンを心待ちにして来店するという。

 

▲ウッドデッキは千里浜海岸に面していて、夕日を眺めるのにも最高のスポット。

 
ぜいたくな海の幸を手軽に味わえるとあって、いつも賑わっている人気店。窓から夕日を眺められる時間に訪れるのもおすすめ。

 

能登千里浜レストハウス
住所:石川県羽咋市千里浜町タ4-1
電話:0767-22-2141
URL:www.chirihama.co.jp

 

能登うなぎに舌鼓、「四季の御料理 まつお」

▲左/能登鰻重は、能登うなぎが入ったときのみ提供可。右上/個室に季節の花のしつらい。右下/会席コースの椀。夏は鱧。

 
京都で料理修業を積んだ3代目、松尾朋治さんが先代とともに手がける心づくしの会席料理店。昼、夜ともに魚介、山菜、自家栽培の野菜などを使ったコース料理で、能登の旬を味わえる。

 

▲晩夏の前菜。松茸と小松菜のおひたし、サザエのうま煮、フルーツトマト蜜煮、甘海老と甘海老の子のあえもの、鱧のから揚げ。

 
ランチでは、「能登うなぎ」の鰻重とひつまぶしも人気。能登うなぎは、志賀町の生産者が、投薬をしない独自の養殖方法で育てることに成功した、能登の新しいブランド鰻だ。肉厚で脂がしっかりのっているが、その脂が重くなく、きれいな味わい。初めに素焼きしてから蒸し、再び焼きあげるので、表面はパリッと、身はふっくらとした食感。地元の大野醤油を使った甘めのタレとの相性もいい。そんな能登うなぎの養殖場も震災の被害に遭い、まだ完全に復旧していないのだという。鰻の仕入れがない日もあるので、予約時に必ず確認を。

 

四季の御料理 まつお
住所:石川県羽咋市川原町テ71-4
電話:050-5485-0487
URL:https://r747700.gorp.jp

 

「calcolo(カルコロ)」で能登のクラフトジンをお土産に

▲「calcolo」などで取り扱う「NOTO JIN」は250ml(写真)と500mlの2サイズ(2024年5月、名称を「NOTO GIN」から「NOTO JIN」に変更)。他にノンアルコールの炭酸飲料なども。「のとジン」公式Webサイトからも購入可能。(URL

 
「calcolo」は、金沢市に2023年にオープンした食のセレクトショップ。「ちょっといいコンビニエンスストア」がコンセプトというけれど、手作りのお弁当や惣菜、厳選した調味料や食材、ナチュールワイン、地元産のクラフトビールなどが充実していて、コンビニというにはあまりにも洗練された品揃え。店内を見て回るだけでわくわくしてしまう。

 

▲おいしそうなものがたくさん並ぶ店内。購入したお弁当などを食べられるイートインスペースもできた。

 
もちろん、能登のお土産にぴったりな逸品も。「NOTO JIN(能登人)」は、能登産の柚子皮、ローリエ、かやの実、クロモジをはじめとする8種類のボタニカルを蒸留した、能登の里山の自然が香るクラフトジン。清々しい香りとスムーズな飲み心地で、ふだんあまりスピリッツを飲み慣れない人にもおすすめしたい。

 

▲上/石川県産の旬の野菜も販売。下/自家製シャルキュトリーなどを販売する系列店「magazzino38」のブッラータチーズと能登豚のテリーヌ。

▲左/石川県産の旬の野菜も販売。右/自家製シャルキュトリーなどを販売する系列店「magazzino38」のブッラータチーズと能登豚のテリーヌ。

 

calcolo
住所:石川県金沢市戸水2-70
電話:076-204-9088
URL:www.instagram.com/calcolo_store/

 

「御菓子司たにぐち」の銘菓おだまき

▲おだまきは、つぶあん、いちじく、よもぎ、黒米・くるみ、季節商品の5種。秋の季節商品は能登栗で、冬になると金沢柚子に。

 
「御菓子司たにぐち」のある宝達志水町は、鎌倉時代に宿場町として栄えた土地。伝統的な麻織物・能登上布の原料として当時多く栽培されていた麻・苧麻(ちょま)の集産地だったことにちなんで、束ねた糸をモチーフにした餅菓子「おだまき」が作られたという。

 

▲上/3代目店主の谷口航平さん。伝統菓子を守り継ぎながら、新しい味にも挑戦している。下/老舗の風格ある看板が目印。

▲左/3代目店主の谷口航平さん。伝統菓子を守り継ぎながら、新しい味にも挑戦している。右/老舗の風格ある看板が目印。

 
昔からおだまきを作っている和菓子店は何軒かあるが、能登名物として広めたのは「たにぐち」だそう。「道の駅では、本店とは別の味のおだまきも販売しています」とは、若き店主の谷口航平さん。餅には石川県産コシヒカリの上新粉を使用し、歯切れのよい餅の食感と自家製餡のおだやかな甘みが相まって、食べ飽きないおいしさ。羽咋(はくい)市の行く先々で、地元の人がみな頬をゆるませて好物だと話すのもうなずける。金沢市でもほとんど買えないという珍しい郷土菓子。ぜひお試しを。

 

御菓子司たにぐち 本店
住所:石川県羽咋郡宝達志水町荻市9-1
電話:0767-29-2112
URL:www.noto-odamaki.com

 

半島のさらに先へ、思いを馳せる旅

能登半島は想像するよりずっと縦に長く、ひと口に能登といっても多彩な文化、風土が地域ごとに息づいていると知った。半島の西側では日本海にゆっくりと落ちていく夕日に心洗われ、東側の七尾港にあがった海の幸を存分に味わうというぜいたくを体験できるのは、細長い半島ならではの楽しみだ。

 
今回旅をした金沢~中能登の先、奥能登まではさらに遠い。車で通りかかった海沿いの小さな集落の景色を思い出し、行くことが叶わなかった奥能登へも思いを寄せていきたい。

 
※掲載施設の情報は変更されていることがあります。お訪ねの際はあらかじめご確認ください。

 

 

【特別企画】復興への歩み、能登の“いま”を知りたい!

▲2024年8月に行われた座談会に参加した「健康屋」「のとコム」「スギヨ」の3社の方々。地元・能登に密着した事業を展開し、地域の復興も担っている。

 
2024年1月1日に起きた能登半島地震からの復興を目指し、歩みを進める事業者の方々に、被災の状況や復興に向けた取り組み、能登の魅力を伺った。被災しながらも立ち止まることなく、メイド・イン・能登のおいしいものを届けてくれた事業者の皆さんの貴重な体験談。知ることが支援の第一歩になるはず。

 

誰もが被災しながらも仕事を再開

▲8月下旬に七尾市内で行われた座談会の様子。

 

――年始に起こった地震は甚大な被害をもたらしました。当初、七尾市はどんな様子だったのでしょうか。

 

健康屋・高﨑敏幸さん(以下、高﨑) いちばん大変だったのは、やはり水の問題です。飲み水もですが、私が住んでいる集合住宅では下水を流せない期間が数週間も続きました。市役所のホームページで、水道がどのあたりまで復旧しているかを毎日チェックしていました。

 

健康屋・林博美さん(以下、林) 水道が復旧したのは4月になってからでしたね。それまで、取引のあるメーカーさんが毎日水を届けてくださったのがありがたかったです。給水タンク自体が不足していたし、仕事をしながらだと水をもらいに行くこともなかなか難しかったので。

 

▲健康屋の高﨑敏幸さん(左)と林博美さん。看板商品は「星のチュロス」。

 

スギヨ・新江隆生さん(以下、新江) 金沢までお風呂に入りに行くなど、不便な状態が続きました。弊社では井戸水が出たので、近隣の方々にも案内して使ってもらっていました。会社としては、工場の被害が大きかったです。天井が落ちたりして、これはちょっと(操業再開まで)時間がかかるなと思いました。

 

▲ちくわ、カニカマなど水産加工品などの製造・販売を手がける、スギヨの新江隆生さん。

 

のとコム・熊谷京子さん(以下、熊谷) 1月4日から仕事を始めましたが、初めは片付けをするだけで精いっぱいでした。その後も、生活はまだ大変だけれど、東京の本社とのやりとりなど仕事は滞らないように進めなければ、という日々が続いて、生活と仕事とのギャップに戸惑うこともありました。ありがたいことに、能登産のものを買って応援しようとしてくださる方が大勢いて、注文はたくさん入ってきたのです。

 

▲能登の海産物、調味料などを販売する、のとコム代表取締役の熊谷京子さん。

 

温かい応援を糧に、復興へ

――約8カ月たちましたが、個人としても、会社としても、元の日常には戻っていない状況でしょうか。

 

スギヨ・新江 工場での生産をできるだけ早く再開できるように、復旧に努めてきました。2月末くらいから少しずつ生産ラインを動かし始めていますが、まだ6、7割といったところです。その間も、全国のお客さまからお便りをいただいたり、取引先の店舗で復興支援の特設コーナーを設けてくださったりという応援が励みになりました。こんなに弊社の商品を楽しみに待ってくれている人がいるんだと、うれしく思いました。

 

▲カニカマを開発した「スギヨ」が、そのノウハウを生かして作り上げた最上級品「香り箱 極(きわみ)」。本物のカニのような食感と香り、濃厚な味わいを楽しめる。出典:スギヨ(URL

 

のとコム・熊谷 奥能登の、いしる(魚醤/ぎょしょう)の工場などが被災しているので、商品があまり入ってこないのがつらいところです。「うちの店の出汁には、このいしるがないとだめなんです」と、いつも使ってくれている全国の料理屋さんに商品をお届けできなくなってしまったのは歯がゆいですね。でも、復興支援のために、能登のお米をノベルティにしたいといったお申し出などもありました。いろいろな方法で支援してくださる方がいて、心強かったです。

 

▲鮮度抜群の肝入りスルメイカを魚醤「いしる」で干物に仕立てた、のとコムの人気商品。スルメイカは能登小木産の釣りイカのみを使用。出典:のとコム(URL

 

スギヨ・新江 奥能登のほうでは、工場の復旧のめどが立っていないところも多いようです。被災の風景も震災直後から変わっていないくらいなので、そうしたことも能登の企業として発信していかなければいけないと思っています。

 

健康屋・高﨑 取引していたお店が廃業してしまったり、住んでいた人が転出したりということもあるので、復興というのは決して簡単ではないなと感じています。残っている私たちのような事業者は、これから少しでも地域に貢献できるように、頑張っていきたいです。

 

能登へ来て、魅力に出合ってほしい

――最後に、全国の方に伝えたい能登の魅力を教えてください。

 

健康屋・林 静かで空気がよくて、住んでいてもとてもいい所だなと思いますので、全国の方に能登のよさを知ってもらいたいです。弊社の「星のチュロス」のファンの方からも「応援しています」という温かいメッセージをたくさんいただいているので、前を向いて頑張っていきます!

 

▲「星のチュロス」は、1988年に日本で最初に生まれたチュロス。9つの角がある星の形で、外はカリッ、中はもっちりとした食感。出典:星のチュロス(URL

 

のとコム・熊谷 能登にはおいしいものがたくさんあって、温泉もあります。皆さん、能登にお越しいただいて、「能登はいい所だったよ」と伝えていただけたらうれしいです。

 

健康屋・高﨑 道路状況がまだ悪い所もありますが、奥能登のほうの宿泊施設なども徐々に再開しているそうです。民宿を営んでいる方も、ぜひ来てほしいと話していました。

 

スギヨ・新江 能登は風景も素晴らしく、観光するのにとてもいい所です。ぜひ実際に足を運んでいただけたらと思います。

 

健康屋
住所:石川県七尾市白馬町70-1-17
電話:0767-57-8100
URL:www.rakuten.ne.jp/gold/kenkouya-webshop/

 

スギヨ
住所:石川県七尾市西三階町10-4-1
電話:0767-53-0180
URL:www.rakuten.ne.jp/gold/sugiyo/

 

のとコム
住所:石川県七尾市本府中町ハ部33-3 ひまわりビル(七尾市役所前)
電話:0767-53-0144
URL:www.rakuten.co.jp/nma-imonya/

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