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傘寿とは?80歳の祝い方|由来や意味・世界の長寿祝いも紹介

日本の高齢化率は、世界でダントツのトップだ。総人口に占める65歳以上の割合は、29.1%にものぼる(2021年時点)。就業者の7.5人に1人が65歳以上というデータもあり「経験豊富な貴重な戦力」として活躍する高齢者も多い。傘寿は、80歳を迎えた方のお祝い。人生100年時代、長寿人生を楽しむべく、健やかに傘寿を迎えたいものだ。ところで、傘寿って?初めて聞く人も多いかもしれない。

 
この記事では

 
・傘寿の意味や由来
・傘寿の祝い方
・傘寿にオススメの贈り物

 
などを紹介する。

 

傘寿(さんじゅ)って何?

 
長寿のお祝いとしてポピュラーなのは60歳の還暦だ。しかし現代社会では60歳はまだまだ若く、長寿とは言い難い。よって近頃では長寿祝いのタイミングをずらすことも珍しくなく、傘寿を長寿祝いと位置づける人も増えているという。

 
傘寿は数えで80歳になったことを祝う風習。もともと日本には、60歳以降の節目となる年に長寿祝いをするという風習が根付いている。

 
長寿祝いがいつから始まったのかは定かではないが、『源氏物語』の若菜上の巻には「四十賀」の記述があり、実はこれは40歳になった長寿のお祝いのことなのだという。この時代は、40歳が初老とされた。

 
「賀の祝い」は、一定の年齢に達したときに行う儀式で、40歳の「四十の賀」から始まり、その後10歳刻みで「五十の賀」「六十の賀」と続く。

 
長寿祝いを総称して「算賀」とも呼び、その風習は中国から伝わったという。聖武天皇のときに催された「四十の賀」の記述では、饗宴を行った際、祝儀の品として、白馬40頭、唐櫃40合とあり、齢に合わせた数の贈り物をするのがしきたりだったとか。

 
室町~江戸時代になると、数え年の60歳還暦、70歳古希、77歳喜寿、88歳米寿、99歳白寿などが加わり、賀を祝うことが、一般庶民へと広がった。

 
傘寿の「傘」の字は、略字で書くと「八」と「十」が組み合わさったような文字で、八十に見えることから由来する。

 
また、傘を開いたときの形が、漢字の八に似て末広がりで縁起がよいから、という説も。「八十寿」(やそじゅ)と呼ぶこともある。

 
2022年に傘寿となる人の干支は、数え年なら1943(昭和18)年生まれの未(ひつじ)年、満年齢なら1942(昭和17)年生まれの午(うま)年

 
身近に当てはまる方がいるか、要チェックだ。

 

どのように祝う?傘寿の祝い方

 
さて、一口に「傘寿をお祝いする」と言っても「どのようにお祝いすればいいの?」と悩む方も多いことだろう。

 
傘寿のお祝いをするに当たって、気になるところを具体的に解説していこう。

 
ただし、ご本人の好みはもちろん、地域のルール、慣習などにも配慮しよう。近親者と相談することも忘れずに。

 

傘寿のテーマカラーは黄色、それとも紫?

 
長寿祝いにはそれぞれに決められた伝統的なテーマカラーがある。

 
60歳還暦の赤は言わずもがな。傘寿のテーマカラーは、幸せを象徴する黄色や金茶色だ。

 
黄色は太陽の色で昔から縁起のよい色とされる。中国では、皇帝の色、五行思想においては土を意味する。そんなイメージが、傘寿にぴったりなのだという。

 
一般的には黄色だが、紫色とする説もある。紫もまた、高貴で位の高い人が身につける色。ただし、77歳喜寿のテーマカラーが紫なので、傘寿は黄色が喜ばれる傾向。しかし、どちらも間違いではない。

 

数え年?満年齢?

傘寿は数え年で80歳を祝う風習なので、実際にお祝いをするのは満年齢で79歳のとき。しかし近年は満80歳を迎えてからお祝いするケースも増えている。

 
ちなみに、生まれた年を1歳と数えるのが数え年、0歳と数えるのが満年齢ということも覚えておきたい。

 
満年齢の普及とともに数え年で行事を行う風習は減ってきてはいるが、七五三詣などの伝統行事や厄年の考え方では、数え年で行うことが多いよう。ご本人や身内で相談して決め、柔軟に対応するのがよいだろう。

 

誕生日?敬老の日?

 
お祝いの日取りについては、誕生日や敬老の日などがわかりやすいが、夏休みやお正月など、家族や親戚、縁のある方が集まりやすい日取りに設定するのがオススメ。

 
集まる方の都合や事情などを聞いて、無理のない範囲で行うのがベスト。せっかくの長寿のお祝い、皆の元気な顔が揃えば、それが何よりのプレゼントになるはず!

 

還暦?喜寿?その他の長寿祝い

 
参考までに、傘寿以外の長寿祝いもざっと紹介しよう。60歳から始まって、100歳まで細かく分けられ、傘寿も含めて実は8回もある。由来は漢字による言葉遊び的なものが多い。

 

還暦/かんれき(60歳)

「暦がかえる」。満年齢では60歳だが、数え年では61歳になることに注意。60年かかって十干十二支が一巡し、生まれ年と同じものに戻り「赤子に還って生まれ直す」という意味で、赤いちゃんちゃんこを贈る。テーマカラーはもちろん赤。

 

古希/こき(70歳)

中国の詩人、杜甫の詩の一節にある「人生七十古来稀なり」に由来。当時は70歳まで生きることが珍しかったとか。テーマカラーは紫。

 

喜寿/きじゅ(77歳)

「喜」という文字は、草書体では「㐂」と書き、七十七に見えることから。日本発祥の祝い事で、古希と同じ紫がテーマカラー。

 

米寿/べいじゅ(88歳)

米の字を分解すると八十八になることに由来。テーマカラーは黄色または金茶色。

 

卒寿/そつじゅ(90歳)

卒の略字「卆」が九十と読めることから。テーマカラーは白、または紫。

 

白寿/はくじゅ(99歳)

百の文字から一を引くと「白」になることが由来。白装束を着てお祝いをする地域もある。テーマカラーはその名の通り白。

 

百寿・紀寿/ひゃくじゅ・きじゅ(100歳)

百寿は「ももじゅ」とも。一世紀の「紀」が由来。テーマカラーは白、またはピンク。

 
その他、108歳の茶寿、111歳の皇寿、120歳の大還暦がある。

 
時代の流れとともに長寿祝いは増えており、一番新しいものでは、2002年に日本百貨店協会によって提唱された緑寿/ろくじゅ(66歳)があるという。また、250歳は天寿だそう。

 

傘寿におすすめの贈り物

 
長寿のお祝いにあたっては、贈り物も欠かせない。アレコレと悩むことも多いが、シンプルに、もらう方が喜んでくれそうなものをセレクトしたい。迷ったときは、テーマカラーを取り入れた贈り物がおすすめだ。

 

ちゃんちゃんこ

ちゃんちゃんこというと、還暦のイメージがあるが、元は生まれたばかりの赤ちゃんに、魔除け効果もある赤い服を着せて無病息災を祈る習慣に由来する。

 
その意味では、傘寿の贈り物としてもよいだろう。しかし近頃は、ちゃんちゃんこを身につけるのに抵抗がある方も。「年寄り扱いされた」「年を取ってしまった」という気持ちになってしまう方も多いことから、贈るときは配慮したい。

 

傘(雨傘/日傘)

 
傘寿の名にちなんで、傘も人気の贈り物の一つ。晴雨兼用なら、一年中使えて使い勝手もよい。

 
シニア向けに工夫された商品もおすすめだ。軽量、杖代わりになる、などさまざまなバリエーションがある。

 
紫外線対策としても日傘は喜ばれるので、下記もご参考に。

【2022】日傘おすすめ10選|選び方やユニセックスで使える商品も紹介

 

お花/花器

 
お花はプレゼントの定番。男女問わず喜ばれること間違いなしなので、何を送るか迷ったときは頼りたい。

 
テーマカラーを取り入れた花束、手入れがいらないプリザーブドフラワーなどがよいだろう。華やかにしたいときは、胡蝶蘭の鉢植えもおすすめ。

 
また「せっかくお花をもらったのに花器がない」というケースも考えられるので、花器をセットにしたり、アレンジメントで贈ったりすると更に喜ばれるかも。

 

食べもの

 
日本には節目のときに、縁起のよいものを食べるという風習がある。また近年の贈り物は、消えものが喜ばれる傾向もある。

 
それに習い、縁起のよい食べ物を贈るのも手だ。例えば小豆は、祝い事の定番。赤飯はもちろん、甘いものが好きな方には小豆を使った菓子などはいかが?

 
また「いい予感」という語呂合わせから、果物の伊予柑は長寿祝いに最適とされている。

 
そのほかには、海老や鯛、黒豆、蕎麦、初ものなど。不足しがちな栄養も補えるから、長寿祝いの一品としてぜひ活用して欲しい。ただし、食べやすいようやわらかいものや、飲み込みやすいものを選ぶようにして。

 

食事会/旅行

 
お祝いの場としてよく設定されるのが、食事会。親族はもちろん、縁のある方や友人、知人に声をかけて集まってもらうのも喜ばれそう。

 
どのくらいの規模にするかは、主役の気持ちに沿うようにして。お店のセレクトも好みに合わせる配慮が必要だ。

 
また、元気でアクティブな方であれば、傘寿祝いの旅行を計画するのも楽しい。素敵な思い出づくりは、何よりの贈り物となる。スケジュールはゆったり組むなどの配慮は忘れないように。

 

記念撮影/アルバム

 
人生の節目に、夫婦や家族で記念撮影をするのが秘かなブームになっているという。傘寿のお祝いで皆が集まった時、そんな記念写真を撮影するアイディアも喜ばれる。

 
ヘアメイクをしてくれる写真館もあるので、気軽に利用したい。

 
また、今までの色々な思い出写真を集めて、フォトブックを作成し、感謝のメッセージとともに贈り物にしても。どちらも一生の思い出になる。

 

お箸/グラス/食器

 
普段使いできるものとして、箸やグラス、食器など、日常生活に彩りを与えるテーブルまわりの商品は、重宝されるアイテムの一つだ。

 
ご自身ではなかなか購入する機会のない、漆器や老舗ブランドの食器などをセレクトしてみて。

 
箸は縁起物として、昔から贈り物の最適品とされてきた。名入れやメッセージを刻印すれば、より愛着を持って使ってくれるはず。

 

名入れのお酒/筆記具

 
名前や似顔絵入りのお酒は晩酌好きにはたまらない人気の贈り物で、盛り上がることうけあい。飲んだ後も飾っておけるので一生の記念になる。

 
筆記用具の贈り物なら、高級感あふれる万年筆やボールペンを。名入れをすれば更に特別感がアップ。

 

扇子

 
末広がりの語呂合わせから、傘寿の贈り物として、扇子は人気が高い。普段からの持ち歩きアイテムとして、テーマカラーを意識した、おしゃれで上品なものを選びたい。

 

帽子、服飾小物などの装飾品

 
身につけるものは趣味や嗜好があるので、案外難しいが、日常的に使うものを選べば間違いは少ない。

 
活動的な方には、散歩やちょっとした外出などに使える帽子やストールなどが喜ばれるかも。遊び心を取り入れて。

 
以上、傘寿におすすめの贈りものをいくつか挙げたが、贈り物で一番大切なことは、感謝の気持ち。

 
マナーも考えて選んだ、心のこもった贈り物なら、もらう側もうれしいに違いない。

 

世界ではどんな長寿祝いをしているの?

 
もともと、還暦や古希などの長寿をお祝いする慣習は、中国発祥の文化。

 
特に、日本や韓国、東南アジアを中心に広く行われているが、ちゃんちゃんこなどを贈るのは日本独特の風習だ。

 
ところで、世界の事情はどうなっているのだろうか。その祝い方は?贈り物は?気になることを調べてみた。

 

中国

還暦は中国から伝来したが、呼び名は違って60歳の誕生日を「花甲」(かこう)という。

 
贈り物はお金。紅包(ほんばお)と呼ばれる縁起のよいご祝儀袋に入れて渡す。

 
長生きできるように、と誕生日には長寿麺を食すのが一般的だ。

 
中国には高齢者を敬う文化があるので、節目の年齢だけでなく、日本の敬老の日に当たる「重陽節」に、毎年長寿祝いを行うことが多い。

 

アメリカ

 
60歳の誕生日をダイヤモンド記念日と呼び、家族はもちろん、親戚縁者を招いて盛大なパーティーを行うという。贈り物は、なんとダイヤモンド。

 
ちなみに50歳のときはシルバーコインを贈る。アメリカの長寿祝いは、50歳から10年ごとに長寿を祝う風習がある。

 

ヨーロッパ

イギリスやオランダなどのヨーロッパ各国も、米国同様50歳から10年刻みに長寿のパーティーを開催する国が多い。

 
イギリス、オランダは、100歳になると女王から長寿を祝う祝福のカードが届くそう。このカードが長寿の証だ。

 
ドイツでも、もっとも盛大に祝うのは日本と同じ60歳。誕生日を迎える方が主催となり、自らケーキを焼いて、職場などへ持ち込むのがお約束という。ダンスや飲食を中心に、にぎやかな宴席に。ゲストはプレゼントを用意するが、日本の赤いちゃんちゃんこのように決まった贈り物はない。

 

カンボジア

50歳、60歳を迎えると、お坊さんを招いて長寿祝いを行うのが習わし。

 

韓国

60歳で還暦を祝う慣習がある。豪華な食事会を開催したり、宴会場を借りたりして大勢で祝うことも。

 
記念写真の撮影や家族旅行など、賑やかに行事を行う。

 
とはいえ近年ではプレゼントのみ、お金を贈るのみ、といったシンプルなお祝いにシフトする傾向がある。

 

傘寿を祝って、健やかに長生きを願う

 
傘寿は80というめでたい節目の年。共に長寿を喜び、皆で楽しく祝いたい。

 
身近な方が傘寿を迎えたら、健やかな長生きを願い、心に残るお祝いをしてさしあげたいものだ。

 
 

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