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10月1日はコーヒーの日|由来とともに世界のコーヒーを紹介

世界中で愛される嗜好品の一つであるコーヒー。豆の種類や挽き方によって変わる味に奥深さを感じ、フワッと立ち込める芳醇な香りが癒やしをもたらす。コーヒーの香りに導かれ、カフェに吸い込まれるように入った経験がある方も多いのではないだろうか。

 
今回は、そんな魅力たっぷりのコーヒーについて紹介したい。

 
まず、日本のコーヒーの歴史から。コーヒーはいつ日本に持ち込まれたのだろうか。諸説あるが、江戸時代初期の鎖国中にオランダ商人が持ち込んだとする説が有力だ。

 
日本で飲まれるコーヒーのほとんどは輸入に頼っている。コーヒー豆は、北回帰線と南回帰線の間のコーヒーベルトと呼ばれる赤道を中心とした地帯で主に生産されているためだ。

 
原産国としては、ブラジルやベトナム、コロンビアなどが有名だ。一方、2018年の国別の一人当たりコーヒー年間消費量は、国際コーヒー機関の統計によると、1位はノルウェー(8.23kg)、2位はスイス(7.94kg)と、輸出量世界第1位のブラジル(6.31kg)よりも多い。ちなみに、ほとんど自国で生産していない日本の一人当たりのコーヒー消費量は3.7kgだ。ドリップコーヒー1杯はコーヒー豆約10gともいわれるので、ノルウェーやスイスではいかに多くの量が飲まれているかが想像できる。

 

日本や世界の「コーヒーの日」

実は、コーヒーにも記念日がある。10月1日が「コーヒーの日」だ。日本におけるコーヒーのさらなる消費拡大とその魅力を幅広く発信する目的で、一般社団法人全日本コーヒー協会によって、昭和58(1983)年に、10月1日に制定された。

 

なぜ10月1日なのか?

coffeeイメージ

 
皆さんは、いつコーヒーを飲むことが多いだろうか。今ではコーヒーといっても、アイスコーヒー、カフェオレ、エスプレッソなど、温度や飲み方もさまざま。季節問わずいつでも飲むという方も多いだろう。しかし、コーヒーの日が10月1日に制定された背景には、当時の日本の季節的な需要が関係していたようだ。

 
10月ともなれば、朝晩の冷え込みが始まる頃でもある。当時はホットコーヒーが主流であったため、自然と温かい飲み物に手を伸ばし始めるこの時期に、コーヒーの消費量が増えたのだ。その需要が高まり始まる頃である10月1日に制定されたようだ。

 
さらに、世界最大のコーヒー大国ブラジルでは、9月末までにコーヒー豆の収穫・出荷を終え、10月からコーヒーの栽培を開始する。そのため10月1日は、コーヒー農家にとって新たに仕事が始まる節目の日でもあることも、コーヒーの日に関係する。

 
そのような背景がある日本のコーヒーの日だが、世界にはコーヒーの日はあるのだろうか。

 

「国際コーヒーの日」も10月1日

コーヒー豆イメージ

 
コーヒーの国際機関である「国際コーヒー機関(International Coffee Organization)」も、日本と同じ10月1日を世界共通の「International Coffee Day(国際コーヒーの日)」として定めた。

 
しかし意外にも、国際コーヒーの日が始まったのは平成27(2015)年と最近だ。全日本コーヒー協会がコーヒーの日を制定してから30年以上も後のことである。

 

日本の業界関係者を喜ばせた、国際コーヒーの日の制定

実は、各国が独自に制定したコーヒーの日で多かったのは9月29日だった。国際コーヒーの日を決める国際コーヒー機関の理事会が開催された2014年3月、日本は同機関には加盟しておらず、発言権はなかった。

 
しかし、ドイツの提案により、日本のコーヒーの日と同じ10月1日となった。日本は、30年以上前から10月1日をコーヒーの日と制定し活動しているという事実が同機関に伝わり、この日に決定されたのかもしれないという全日本コーヒー協会の担当者の推測もあるが、その真偽は明らかにはなっていない。

 
いずれにせよ、この決定は、日本のコーヒー業界関係者にとって大変喜ばしいニュースとなった。

 

コーヒー農家の現状を知らせる目的も

国際コーヒーの日発足の背景には、コーヒーの普及だけでなく、コーヒー農家の厳しい状況を知らせる目的も含まれている。

 
小規模農家は、コーヒー豆の価格の乱高下に翻弄される傾向にある。商品先物取引市場で取引されているコーヒー豆を指すコモディティコーヒー豆の価格は、産地から遠く離れたニューヨーク先物商品取引所やロンドン国際金融先物取引所で決定。大量生産が難しい小規模農家は、主力商品であるコーヒー豆の価格が下がれば収入も下がり、生活が逼迫してしまう。そのため、例えばコロンビアでは、輸出価格が安定しないコーヒーの生産を停止し、麻薬栽培に切り替える農家も少なくないという。

 
こうしたコーヒー農家の苦境を知って支援するという意味でも、国際コーヒーの日が制定された。

 

コーヒーで世界を巡ろう

最近では、コンビニでも気軽に飲めるようになったコーヒーだが、世界の人々はどのようにコーヒーを楽しんでいるのだろうか。各国のコーヒーの嗜み方をご紹介したい。

 

実は日本で馴染み深い、オーストリアの「アインシュペンナー」

コーヒーイメージ

 
「ウインナーコーヒー」という言葉を聞いたことがあるだろう。実は「アインシュペンナー」は、日本でいうウインナーコーヒーのことで、「ウインナー」とは「ウィーン風の」の意。オーストリアの首都・ウィーン発祥といわれるコーヒーの飲み方だ。もちろん現地を訪れてカフェで注文する際は、ウインナーコーヒーでは通じないので注意が必要だ。

 
ウインナーコーヒーこと、アインシュペンナーの特徴といえば、カップから溢れそうなほどたっぷりのったホイップクリーム。甘いクリームとほろ苦いコーヒーは相性抜群で、コーヒーの苦味が苦手な方も楽しめるかもしれない。

 

味のコントラストを楽しむ、「ベトナムコーヒー」

ベトナムコーヒー

 
ブラジルに次ぐコーヒー生産量を誇るベトナム。そのベトナムで多く栽培されているロブスタ種のコーヒー豆は、豆の色の濃厚さと力強い芳醇な香り、そして酸味の弱さに特徴がある品種といわれる。

 
コーヒーの抽出器具も特徴的だ。一般的なペーパーフィルターとは異なり、金属でできたフィルターを用いて抽出される。これはフランス式のもので、ベトナムがかつてフランス領であったことが関係する。金属フィルターは穴が小さく、抽出に時間がかかるため深いコクのある濃いコーヒーができ上がるそうだ。

 
ベトナムコーヒーにはもう一つ大きな特徴がある。ミルクではなく、練乳を入れることだ。これは、フランス領だった頃のベトナムでは冷蔵庫が普及していなかったため、ミルクの代わりに常温で保存できる練乳を入れたのが起源とされている。

 
苦いコーヒーと対照的な甘い練乳をしっかりと混ぜれば、ベトナムコーヒーの完成だ。暑いベトナムでは、氷の入ったグラスに注いでアイスで飲むのが人気だ。

 

意外な組み合わせで楽しめる、イタリアの「エスプレッソロマーノ」

エスプレッソロマーノ

 
「エスプレッソロマーノ」とは、直訳すれば「古代ローマのエスプレッソ」という意味。エスプレッソで抽出した苦いコーヒーに、レモンスライスやレモン果汁と砂糖を加える、イタリアの家庭ではお馴染みの飲み方だ。

 
イタリアは古くからレモンの栽培が盛ん。油を使った料理が多い食文化であることから、食後にさっぱりとした後味のエスプレッソロマーノを楽しむのは理にかなっている。

 
さらに、泡立てたミルクをのせた「カプチーノロマーノ」も人気。日本ではまだ馴染みのない飲み方だが、気軽に楽しめる爽やかな一品として一度は味わってみたいものだ。

 

コーヒーで運勢を占う、「トルココーヒー」

トルココーヒー

 
世界無形文化遺産にも登録されている「トルココーヒー」は、「ターキッシュコーヒー」とも呼ばれ、コーヒーの粉を「イブリック」と呼ばれる銅または真鍮製の長い柄のついた小さな鍋のようなもので煮出して作る。小さなカップで飲むのがトルコ流で、少量でしっかり満足感を得られる濃厚な味が特徴的だ。

 
フィルターを通さずにカップへ直接注ぐため、コーヒーの粉がカップの底へ沈むのを待ってから飲むのが習わしとなっている。飲み終わった後は、カップの中に残ったコーヒーの粉の模様で運勢を占うというのも面白い風習だ。

 
このコーヒー占いは、トルコをはじめとするヨーロッパ諸国で昔から親しまれているようだ。カップの下側の模様は過去、上側は未来を表しているとのこと。伝統的な味のみならず占いまで楽しめるとは、まさに一杯で二度おいしいコーヒーだ。

 

新たなコーヒーの飲み方に挑戦してみよう

私たちの生活に溶け込み、身近な飲み物として世界中で愛されているコーヒー。コーヒーの日に、世界のコーヒーの現状を考えてみるのもよいだろう。今回紹介した飲み方のほかにも、世界にはさまざまなその土地特有の飲み方が存在する。自由に世界を飛び回れる日々が戻ってくることを願いつつ、新たなコーヒーの飲み方に挑戦してみよう。
 
 

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