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11月29日は「いい肉の日」。全国の和牛を厳選して紹介

老若男女問わず人気のある肉。今さらいうまでもないが、肉はどの季節に食べても美味しい。肉には必須アミノ酸をはじめ、人間の体に必要な栄養素が多く含まれる。適切な摂取により、疲労回復や新陳代謝などの効果があるといわれている。そして、焼肉やステーキ、すき焼き、ハンバーグなど、肉は食べ方の豊富さが魅力的である。

 
そんな肉にも記念日が存在する。11月29日、「いい肉の日」だ。ちょうど年末に向けて忙しくなる時期、いい肉をしっかり食べて体力をつけたいものだ。

 
今回は、いい肉の日にまつわる歴史から、いい肉の日に食べたい和牛にも目を向けてみよう。

 

いい肉の日とは?

11月29日はいい肉の日、ということをご存じの方も多いだろう。だがもともとは、「より良き宮崎牛づくり対策協議会」という団体によって、「宮崎牛」の宣伝を目的に制定された記念日であるということは、あまり知られていないだろう。

 
語呂あわせで「1129=イイニク」と読めることから、この日が選ばれたとのこと。現在では、全国の肉を扱う精肉店や焼肉店などでも肉の消費促進の一環として、いい肉の日イベントやキャンペーンなどが精力的に行われている。

 

いい肉の日の生みの親、より良き宮崎牛づくり対策協議会

宮崎牛

 
宮崎県は、昔から肉牛の一大産地。宮崎県で生まれた子牛がほかの地域に送りだされ、他県のブランド牛として出荷されるほど品質のよさを誇っていた。その子牛を、そのまま宮崎県内で飼育し始めたことが、宮崎牛ブランドの始まりだ。

 
いい肉の日を制定したより良き宮崎牛づくり対策協議会は、宮崎牛の生産・流通に関わる関係機関が宮崎県の牛肉の消費や販路拡大などを目指して、昭和61(1986)年4月に設立された。その後30年以上にわたり、同協議会は宮崎牛の発展を支えてきた。

 
今ではより広い意味で認識されているいい肉の日は、原点を辿ると宮崎牛が関係していたということだ。

 
また、宮崎牛を語る際に忘れてならないのは、口蹄疫の発生だろう。平成22(2010)年、日本で10年ぶりに、宮崎県で口蹄疫が発生した。口蹄疫とは、口蹄疫ウイルスに感染することが原因で、ウシやブタなどの偶蹄類の家畜や野生動物がかかる病気のことをいう。

 
口蹄疫は伝染力が非常に強いため、一度感染した家畜は殺処分を余儀なくされる。当時、宮崎県ではウシやブタを中心に約30万頭が殺処分され、壊滅的被害を受けた。しかしその後、関連事業者が一丸となって宮崎牛の復活を目指し、全力を尽くした。

 
5年に1度開催されている「全国和牛能力共進会」という、「和牛のオリンピック」とも評される和牛の能力や改良成果を競う共進会があるが、口蹄疫から2年後の平成24(2012)年、宮崎牛は第10回全国和牛能力共進会で、史上初の連覇と完全復活を果たした。

 
さらに、平成29(2017)年に開催された第11回全国和牛能力共進会において、宮崎牛は史上初3大会連続で内閣総理大臣賞を受賞。まさに日本を代表する和牛といえるだろう。

 
また、宮崎牛を世のなかに広く知ってもらうため、消費者に向けた販促イベントの開催はもちろん、大相撲優勝力士やプロ野球・Jリーグのチームなどへ宮崎牛を贈呈したり、ふるさと納税の返礼品として宮崎牛が採用されたりしている。着実に知名度は向上しているようだ。

 

海外でも大人気! 日本が誇る和牛

高級食材ともいわれる、和牛。徹底管理された環境のなかで飼育され、厳しい基準をクリアして消費者へ届けられる。品質や味のよさはもちろん、生産者の想いもたくさん詰まっているのだ。

 
ちなみに和牛と国産牛の違いをご存じだろうか。国産牛とは、日本国内での飼育期間がほかの国での飼育期間よりも長い牛を指す。一方、和牛は明治以前から日本で独自に交配され、育てられてきた品種名を指し、「黒毛和種」「褐毛和種」「無角和種」「日本短角種」の4品種とそれらの交雑種のことをいう。

 
ここでは、日本が誇る和牛をピックアップして紹介する。

 

神戸ビーフ(兵庫県)

神戸ビーフ

 
兵庫県で生まれ育てられた但馬牛(たじまぎゅう)のうち、厳しい品質基準を満たした希少な牛肉のことを「神戸ビーフ®︎」または「神戸肉®️」という。「神戸牛」と言ってしまいがちだが、厳密には神戸牛は存在しない。

 
但馬牛のうち、神戸肉流通推進協議会の指定生産者に飼育され、かつ県内の食肉センターに出荷された未経産牛(出産を経験していない雌牛)または去勢された雄牛であることが神戸ビーフになる最低限の条件だ。

 
さらに、霜降りの度合いや肉質、重量など、日本一といわれる厳しい基準をクリアした牛肉のみが神戸ビーフを名乗ることができる。品質はというと、脂身と赤身のバランスが非常によいとされている。

 
バラク・オバマ前アメリカ大統領や、海外の王室関係者など国内外を問わず著名人からも愛されており、伊藤博文も好んで食べていたという逸話も存在する、まさに日本が世界に誇る和牛の一つといえる。

 

松阪牛(三重県)

松阪牛

 
「松阪牛」を正しく読める方を知っているだろうか。実は「まつさかうし・まつさかぎゅう」が正しい読み方。「まつざかうし・まつざかぎゅう」ではない。漢字表記では、「松坂牛」は誤りであるため注意が必要だ。

 
松阪牛の定義は、黒毛和種で未経産の雌牛であることが絶対条件。さらに、松阪牛個体識別管理システムに登録されており、生後12カ月齢までに松阪牛生産区域に送り出され、移動後は生産区域内で飼育された牛のみが松阪牛と定められる。なんと狭き門だろうか。

 
松阪牛の特徴は、きめ細かい霜降りと、箸で簡単に切れるほど柔らかい肉質。不飽和脂肪酸の融点がとても低く、口の中でとろけるようだといわれている。脂っこい見た目だが、くどさのない旨み溢れる脂と、味に深みのある色鮮やかな赤身が楽しめる。

 

近江牛(滋賀県)

近江牛

 
「近江牛」は、自然豊かな滋賀県内で最も長く飼育された黒毛和種だ。近江牛生産・流通推進協議会の構成団体の会員が生産し、滋賀食肉センターあるいは東京都中央卸売市場食肉市場の芝浦と場でと畜や枝肉格付けされたものだけが近江牛として認証される。さらに枝肉格付けがA4またはB4等級以上のものをいう、こちらも厳しい要件だ。

 
日本で最も歴史のあるブランド牛で、約400年もの歴史を持つ。戦国時代には、高山右近が蒲生氏郷(がもううじさと)や細川忠興(ほそかわただおき)に近江牛を食べさせたという逸話が残されている。

 
特有の香りと柔らかくきめ細かい肉質で、ファンからは「味の芸術品」と呼ばれることもある。味や品質のよさの点でほかのブランド牛に全く引けを取らないが、比較的お手頃な価格帯で販売されていることが多い。品質が高いうえにリーズナブルな価格とは、まさに鬼に金棒だ。

 

米沢牛(山形県)

米沢牛

 
山形県南部、周りを山に囲まれた置賜盆地(おきたまぼんち)。大自然のなかで、極寒の冬と湿度が高く暑い夏と、激しい寒暖差のある季節を繰り返し過ごす米沢牛は、他の和牛に比べて比較的成長が遅い。香り高い脂で、きめ細かい霜降りが特徴だ。

 
明治時代、チャールズ・ヘンリー・ダラスという語学教師が、米沢牛の価値を見出し、米沢を離れる際に一頭の牛を横浜に連れていった。これがきっかけとなって、米沢牛が全国に広まり始めたといわれている。

 
彼が米沢牛を口にしていなければ、米沢牛が現在のように人気の和牛として出回るのは、ずいぶんと遅れてしまっていたかもしれない。

 

「いい肉」を食べて生産者を応援しよう

箸

 
新型コロナウイルス感染症の拡大が、畜産生産者にも深刻な影響を及ぼしている。

 
11月29日いい肉の日には、普段よりも少し奮発して、日本が誇る和牛を味わってみるのはどうだろうか。

 
大切に育てられた美味しい肉を感謝して食べれば、お腹も心も満たされる。さらには生産者への応援にもつながる。「今日はいい肉の日だし、たまには」というセリフも、この日は全国各地から聞こえてきそうだ。
 
 

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