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11月20日はピザの日|由来や世界のピザ発祥基礎知識を紹介

古代エジプトにルーツを持ち、イタリアのナポリで発祥したとされる食べ物ながら、日本にも広く普及し、手ごろな価格で楽しめるピザ。ピザを提供するレストランでは、ナポリ風やローマ風などの生地や豊富な種類のトッピングがある。

 
そんなピザにも記念日がある。11月20日、「ピザの日」だ。本場イタリアのピザのみでなく、ピザと近縁の世界の料理についても、情報をお届けしたい。

 

11月20日がピザの日になったわけ

ピザの定番といえば、「ピッツァ・マルゲリータ」。その名前の由来となったイタリア王妃・マルゲリータの誕生日である11月20日が、ピザの日である。

 
マルゲリータ王妃は芸術文化支援や慈善活動に取り組み、ピザ協議会によると「MadreD,Italia」(イタリアの母)と呼ばれ親しまれる人物だ。彼女が明治22(1889)年にナポリを訪れたとき、当地のピザ職人がトマト(赤)やバジル(緑)、モッツァレラチーズ(白)を使い、イタリア国旗をイメージしたピザを献上。王妃がとても気に入ったことが、ピッツァ・マルゲリータの始まりとなったという。

 

印刷業界大手・凸版印刷もピザの日を制定?

一般社団法人日本記念日協会に正式に登録されているピザの日は、ピザ業界の発展に取り組むピザ協議会が平成25(2013)年に申請したものだ。しかし、その18年前に凸版印刷株式会社が同じ日をピザの日として制定していた。

 
日本記念日協会や凸版印刷の公式Webサイトではその理由や経緯が明らかにされていないが、話のネタとして知っておくのも面白いかもしれない。

 

日本で最初にピザを出した1号店

さて、日本で最初のピザ1号店はどこかご存じだろうか。

 
この件については諸説あるが、ピザ協議会によれば、昭和19(1944)年に神戸のイタリアンレストランで提供されたという説と、宝塚のイタリアンレストラン「アベーラ」で戦後まもなく提供されたという説がある。いずれも兵庫県である。また、ピザを専門で提供する日本のピッツェリア1号店は、昭和29(1954)年に開店した東京・六本木の「ニコラス」とされている。

 
当時はピザという料理名はまだ無名で、1960年代には「西洋風お好み焼き」という表現もあった。次第に、ファミリーレストランでも提供されるようになり、冷凍ピザの発売により一般家庭にも普及。日本初の宅配ピザが登場したのは昭和60(1985)年。これ以降、大きなサイズのピザが家庭でも楽しめるようになった。

 

世界のピザと、ピザに似た各国料理大集合

現在のようなスタイルのピザはナポリ発祥とされるが、ルーツは古代エジプトにまで遡る。小麦粉を水に溶かして焼く、メソポタミア文明発祥の食文化がエジプトに伝わり、発酵という過程を経るようになった。丸く平らに成形し石窯に貼り付けて焼く古代エジプトのパンは世界に広まり、各地で発展を遂げ今に至る。

 
ここでは、イタリアのナポリピザをはじめ、ピザと近縁の料理を厳選して紹介しよう。

 

ナポリピザ(イタリア)

ナポリピザ

 
イタリアの伝統的なピザの生地は、ふっくらとしたナポリ風と薄焼きのローマ風に大きく二分される。

 
ピザといえば空中でクルクル回しながら生地を伸ばす技が有名。ナポリのピザ職人によるこの技術は、国際連合教育科学文化機関(ユネスコ)の無形文化遺産にも登録されている。生地をもっちりと仕上げるために行う伝統技法で、空中に投げて回すことで生地に空気を含ませつつ、均等に伸ばすことができる。

 
トッピングには、トマトソースやチーズが定番。それ以外に何をトッピングするかはピッツェリアや家庭によって異なる。サラミやナッツ、季節の野菜をのせるなど、作る人によってそれぞれの味がある。

 
本場ならではの楽しみとして、ピザ職人の技だけでなく、イタリア原産のチーズがある。例えば、「ブッラータチーズ」。日本ではあまり馴染みがないが、アツアツの生地に冷たいブッラータチーズを組み合わせたピザは絶品だ。

 
イタリア人は、ピザを週に一度食べることも少なくないといわれる。しかも、シェアするのではなく1人1枚を食べきるというのだから、日本とはカルチャーがまったく異なり、好奇心をそそられる。

 

フーガス(フランス)

フーガス

 
イタリアの「フォカッチャ」と同系統のパンで、こちらもピザの原型といわれることもある「フーガス」。その起源はローマ時代まで遡るという、南フランス・プロヴァンスの伝統的なパンである。

 
愛らしい葉っぱのような形が特徴で、サイズは手の平ぐらいが一般的。見た目はピザと異なるが、中はもっちり、表面はサクサク。口の中で砕けるような歯応えが特徴である。また、ナポリピザのように平たく成形してオーブンで一気に焼き上げる。

 
具材を入れないプレーンタイプに仕上げる場合もあるが、アンチョビやクルミ、ドライトマトなどをのせて折りたたみ、さらに平らにしながら具が挟み込まれたパンとして焼き上げるタイプもある。

 
挟み込む具材で変化をつけられるのは、ピザと似た趣向があり、ユニークな食文化を感じさせる。

 

コカ(スペイン)

コカ

 
ピザによく似た見た目なのに、何かが違うと思えばチーズがないことだ。ピザ風なのにチーズを使わずコクを出すのが、「コカ」。「スペイン風ピザ」とも呼ばれている。

 
コカはスペイン東部生まれのパンで、主にカタルーニャ州やアラゴン州の東部、バレンシア州などで食べられている。家庭でも作れるカジュアルな食べ物で、形や作り方、具材などは多種多様だ。共通するのは、オリーブオイルを練り込むことである。チーズやピザソースを使わなくても、コクのある生地となり、食感もふわっと軟らかい。

 
もともとは発酵させない製法であり、家庭や店ごとに具材のバリエーションが豊富。野菜だけを使うものや、ソーセージやオイルサーディンなどの肉や魚を加えるもの、ドライフルーツをのせて砂糖をまぶすものなどがある。

 

ピデ(トルコ)

ピデ

 
ピザの発祥についてはナポリ以外にもさまざまな説があり、そのなかに「トルコ発祥説」がある。その理由になっているのが、「トルコ版のピザ」といわれるこの「ピデ」の存在だ。

 
ピデの生地は、小麦粉やドライイースト、塩、水という至ってシンプルな材料のみでできている。具材をのせることで個性や味わいが生まれるパンという点は、ピザに似ている。

 
ピデにはいくつかの形状があり、そのうちの一つが厚みのある丸型で、何ものせないタイプ。ほかにも、ピザのように薄く長くのばしたものと、ふちを船形に盛り上げてその中に具材を詰めたものもある。

 
生地は、表面はカリッと、中はもちっとしているのが特徴。薄くのばして焼くタイプのピデはサクッとした食感、船形や厚い丸形のピデでは弾力のある食感だ。

 
トマトソースやチーズでなく、ひき肉や卵などでコクを出す。お好みでレモンを絞って食べるのもよい。また、トルコではラマダン(断食)の習慣のあるイスラム教徒が大部分を占めるため、ラマダン明けに食べる特別なピデも存在する。

 
世界三大料理に数えられるトルコ料理の深遠な食文化を伝えるパン料理といえよう。

 

世界で愛されるピザやピザ風パン

ピザやピザに似たさまざまな小麦粉料理を誕生させたパン文化の多様性には驚かされる。ピザのルーツが諸説あることも興味深い。

 
また、すべて同じ小麦粉からできているにもかかわらず、食べ方や焼き方、形などによりまったく異なるものになる、まさに変幻自在の神秘の料理だ。

 
それぞれの国や地域で愛されるピザやピザ風パンのどれを取ってみても魅力的で、食欲がそそられる。

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