3月3日はひな祭り。「女の子のイベント」「ひなあられを食べる」「ひな人形を飾る」という断片的な知識はあっても、そもそもの行事の由来や歴史をスラスラと語れる方は少ないのではないだろうか。この記事では、
・ひな祭りの由来・歴史・意味
・ひな祭りを祝うときに食べたい食べ物
・ひな人形を飾る時期と飾り方
・全国各地のひな祭りの祝い方や行事
を紹介する。
ひな祭りへの理解を深め、あなたなりの意義深いひな祭りを過ごしてほしい。
目次
ひな祭りってどこから来たの?なぜ祝うの?
そもそもひな祭りは日本で生まれた行事なのだろうか?
実は古代中国の「川で身を清めて邪気を払う上巳(じょうし・じょうみ)節」が日本に伝わり、日本古来の「人形(ひとがた)流し」という厄払いの風習と結びつき、さらにそれが平安時代の貴族のおままごとである「ひいな遊び」と組み合わさって、徐々に今のような形になったといわれている。
ちなみに上巳とは、3月上旬の巳(み)の日のこと。当初は3月に入って最初の巳の日に行われていた上巳節は、3世紀ごろ3月3日に固定されたという。
子どもが生まれると人形をつくって保管しておき、3歳ごろになってから流すという時代もあったが、時を経て人形が豪華になっていくにつれ、流さずに素早く片付けるようになったという。
日本で現在のような人口動態調査が始まった明治32(1899)年でも、生後1年未満の子どもの死亡率は15.38%だったというから、それ以前の子どもが3歳まで生きられる確率はかなり低かったと推測される。厄払いの行事が、いつしか子どもの健康と成長を祈る行事になったのも自然な流れかもしれない。
このように元は男女問わず子どもの健康と成長を祈っていた上巳の節句は、「端午の節句(5月5日)が男の子の日」という認識の広まりにあわせて、「女の子の節句・ひな祭り」として庶民に定着していった。
江戸時代の中期以降は盛大な「雛市」が立ち、段飾りが生まれたという。「ひな祭り」という言葉もこの頃から一般的になっていった。
ちなみにひな祭りの別名は、「桃の節句」。ひな飾りとともに桃の花が飾られるのは、旧暦上巳のころに桃の花が開花するというだけでなく、中国では桃の木が邪気を祓ったり、子孫繁栄をもたらしたり、実が不老長寿をもたらす仙木と考えられていたから。
室町時代には上巳の節句に、桃の花びらを浮かべた「桃花酒(とうかしゅ)」というお酒を飲んだという。
ひな祭りを祝うときに食べたい食べ物
次に、家庭でひな祭りを祝う際には、どんな食べ物やメニューを用意すればいいのか、みていこう。
雛霰(ひなあられ)
昔ながらの節句菓子として定番といえばこれ。淡い色合いがなんともかわいらしく、やさしい味わいが特徴だ。主に白、緑、桃色に色付けされており、白は雪、緑は木の芽、桃色は生命を表すという。また、関東では砂糖でほんのり甘く味付けされている場合が多いが、関西では塩や醤油で味付けされるという特徴もある。
ちらし寿司
とくに歴史的な背景があるわけではないが、カラフルで華やか、子どもも喜ぶごちそうとして、ちらし寿司でひな祭りを祝うのも定番になっている。エビやサーモン、イクラなどの華やかな色をうまく使って、ひな祭りにぴったりのちらし寿司を作ってみてはいかがだろう。
ハマグリのお吸い物
ハマグリは同じ個体の殻同士でないとぴったりと合わないことから、良い結婚や良縁の象徴とされ、結婚式やひな祭りで食べる風習がある。もちろん、ちらし寿司ともよく合うので、ぜひこちらにもチャレンジしてみてほしい。
ピザやケーキ
近年では、手軽にお祝い気分を演出でき、子どもにも人気のメニューとして、ピザやケーキを用意する家庭も増えてきているようだ。たしかに、カラフルでたくさんの具材がのったピザはちらし寿司に通じるものがあるし、真っ白なクリームの上にかわいいイチゴがのったケーキなどもひな祭りの雰囲気にぴったりだ。
ひな人形はいつからいつまで飾る?人形の種類とバリエーション
ひな人形をお持ちのご家庭では、毎年ひな祭りが近づくとひな人形を「いつ出す?いつ片付ける?」問題が発生しているのではないだろうか。
地域によって差があるため、さまざまな情報が錯綜して毎年のことなのに悩むという方も。
結論からお伝えすると、「早めに飾り始め、早めに片付ける」のがよさそうだが、以下もうすこし詳しく見ていこう。
飾り始めは1月中旬〜2月中
ひな祭りと縁深い京都では、立春(2月4日ごろ)からひな人形を飾り始める。節分で厄を払った翌日にひな人形を出すという流れは理解しやすい。
2月18、19日あたり、二十四節気の「雨水(うすい)」の時期に出すのがよいという説も。
雨水は「降る雪が雨に変わり、雪解けが始まる時期」とされており、農耕の準備を始める目安でもある。水で厄を流してきた上巳の節句らしい考え方で、「雨水に人形を飾り始めると良縁に恵まれる」という言い伝えも一部に残る。
東海の一部地域では松の内が明けた1月8日ごろから飾り始めるという。
片付けは3月4日〜4月中旬の晴れた日
ひな祭りが終わった後、よく晴れた湿気の少ない日に人形をしまう。このひな祭りを旧暦(4月3日)で祝う家もあるため、一月程度のズレが生じる。
旧暦でひな祭りを祝うのでなければ、二十四節気の雨水が終わった「啓蟄(けいちつ)の日(3月5日ごろ)」に片付けるのがおすすめだ。
片付けが遅れると婚期が遅れるという話もまことしやかに囁かれるが、なぜこのようなことがいわれるようになったのだろう。
ひな祭りが厄払いとして始まったという由来から、人形を水に流す代わりに素早く片付ける意識が残っていると考えられる。片付けが遅れると、人形に代わってもらった厄が戻ってくるという考えから、早く片付けて休んでもらおうというわけだ。
ひな人形のバリエーション
江戸時代前期までは紙で作られた男女一対の紙立雛(かみだちびな)が主流だったというが、ご存じ現代では大勢の侍従や飾りに囲まれた豪華なひな人形も多い。
現在流通しているひな人形には、どんな種類があるのかを見ていこう。
・配置の違い:京雛・関東雛
・人数の違い:親王飾り・五人飾り(二〜三段飾り)・七段飾り
・素材の違い:紙・木・土(陶磁器)・布
・体勢の違い:立雛(たちびな)・坐雛(すわりびな)
・衣装の違い:衣装着(いしょうぎ)人形・木目込(きめこみ)人形
・ケースの違い:収納飾り・ケース飾り・段飾り
以上は部屋に置いて飾ることを前提にしたバリエーションだが、これ以外に
・つるし雛(吊るし飾り)
・流し雛
なども存在する。
ひな祭りの長い歴史のなかで、さまざまな人の願いによって、多くのひな人形やひな飾りが生まれてきた。この機会にご家庭のひな飾りの来歴をゆっくりと考えてみるのもおすすめだ。
地域によって違う?全国各地のひな祭りの祝い方や行事
全国各地で、ユニークな催しが行われているひな祭り。
地域ごとに特性を活かしたひな祭りの伝統が伝えられていたり、町を挙げてひな飾りが披露されたりと、ひな祭りをテーマに全国を巡っても飽きないはず。
編集部おすすめのスポットをご紹介しよう。
古式ゆかしい下鴨神社の「流し雛」|京都府京都市
人形(ひとがた)と呼ばれる簡素な夫婦雛に厄を移し、桟俵(さんだわら)に乗せてに御手洗(みたらし)川に流すことで、子どもたちの無病息災を祈る神事。平安装束のお内裏様とお雛様に扮した男女が流し雛を行ったあと、一般の参加者もを流すことができる(有料)ため、毎年多くの人で賑わう。
下鴨神社(賀茂御祖神社)
URL:https://www.shimogamo-jinja.or.jp/
お雛さまたちが第二の人生を謳歌する「福よせ雛」|岐阜県郡上市
風情ある町並みや、美しい水と水路、そして夏の「郡上おどり」などで知られる城下町・郡上八幡。
ここには他家のひな人形を訪ね歩く「ひなあらし」という習慣があり、商家・旧家や観光施設などで、伝来のおひなさまを公開する城下町おひなまつりがおこなわれていた。現代でも4月3日(旧暦のひな祭り)の時期にはそこかしこにひな人形が並ぶ。
さらに近年、住宅事情などで飾られなくなって供養された人形たちを集め、第二の人生を送ってもらおうと始められたのが「福よせ雛」プロジェクト。
郡上八幡博覧館や城下町一帯の旧家、商家、観光施設、飲食店、宿泊施設などを会場に、お雛さまたちがスポーツをしたり、掃除をしたり、美容にいそしんだりと、いきいきと暮らすさまは、きっとあなたを笑顔にしてくれるに違いない。
郡上八幡博覧館
URL:https://hakurankan.com
江戸時代のひな人形も並ぶ「備中たかはし町家通りの雛まつり」|岡山県高梁市
岡山県中西部に位置し、広島県と隣接する高梁(たかはし)市。「備中の小京都」と呼ばれる情緒ある景観のこの街では「備中たかはし町家通りの雛まつり」が例年4月上旬に開催される。
会場の本町通りは江戸時代に松山往来と呼ばれていた街道で、当時から残る古い商家が立ち並び、祭りをより魅力的にしている。
本町町家通りで展開されるひな祭りでは、江戸時代のひな人形から手作りの人形まで家々に飾られる。会場近くには「日本の道100選」にも選ばれている紺屋川通りがある。
高梁市
URL:https://www.city.takahashi.lg.jp/
約1000体のひな人形がずらり「越前大野ひな祭り」|福井県大野市
多いときは約1,000体ものひな人形が並ぶ「春を彩る越前大野ひな祭り」。
不用になったひな人形を引き取っていたおもちゃ屋を中心に、市民有志の実行委員会がさまざまな趣向を凝らして毎年1,000体あまりを選定して展示している。
大野市の市街地は、織田信長の家臣である金森長近(かなもり ながちか)によって400年以上前に築かれ、碁盤目状に城下町が展開されている。この街並みが現代でも色濃く残っていることから「北陸の小京都」と呼ばれている。町歩きとあわせて訪ねたい。
えちぜんおおの観光ガイド
URL:https://www.ono-kankou.jp/
つるしかざりも愉しめる「城下町長府ひなまつり」|山口県下関市
山口県下関市長府の各所で開催される「城下町長府ひなまつり」。本イベント会場の一つ、「忌宮神社(いみのみやじんじゃ)境内内八坂神社横 嘯風館(しょうふうかん)」では「大雛人形展」が開催される。忌宮神社の歴史は江戸時代よりも古く、日本書紀に登場する神功皇后が、この地に滞在した際に神祇を祭ったことが由縁とされている。
大雛人形展では、昭和30年代以降に神社へ寄贈されたひな人形が天井一杯まで積み上げられている。同展以外にも「城下町長府ひなまつり」では、情緒あふれる城下町を舞台に、ひな人形やつるしかざりも数多く展示される。
下関市公式観光サイト
URL:https://shimonoseki.travel
厄を払い、春を祝うひな祭り
長い歴史をもつひな祭り。全国の歴史ある人形を間近で見て、春の風物詩を堪能したり、自宅で桃酒とひなあられで健康と厄払いを願ったり。
今年はあなたなりのひな祭りを過ごしてほしい。
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