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「立冬」の頃に食べたくなる鍋。ご当地鍋を味わおう

11月ともなると日が暮れるのがすっかり早くなる。暦のうえでも、毎年11月7日ごろは冬の到来を告げる「立冬(りっとう)」。天気予報や時候の挨拶などで話題になることも多いが、立冬について正しく知っているだろうか。

 
ここでは立冬の意味をおさらいし、この季節に食べたくなる鍋料理についての話題をお届けしたい。

 

立冬の意味と今年の立冬は?

立冬とは、1年を24等分して季節を表す語を当てはめた「二十四節気(にじゅうしせっき)」の一つ。その名の通り、「冬が立つ(はじまる)」時期であることを表す。

 
具体的には、春分を太陽黄経(太陽の通り道に沿って振った目盛り)0度として、225度に達する日が立冬となる。2020年の立冬は11月7日。ちなみに、立冬の次の二十四節気は「小雪(しょうせつ)」で、11月22日ごろだ。11月7日は立冬に入る日で、この日から小雪前日までの期間のことも立冬と呼ぶ。

 

よく間違えやすい「冬至」との混同

立冬とよく似た「冬至」という語がある。この二つはどう異なるのだろうか。

 
立冬は上記で説明した通り。冬至も二十四節気の一つで、立冬からは、「小雪」「大雪」「冬至」と3番目の二十四節気。前述の太陽の黄経が270度となる日のことで、冬至は北半球では1年のうちで日照時間が最も短く、太陽の南中高度が最も低くなる。立冬と同様に期間の意味もあり、冬至の日から次の小寒の前日までのことも指す。よく間違えやすいが、立冬と冬至には違いがあることを認識しておこう。

 

寒い日にお薦めのご当地鍋

実は11月7日は、大手調味料メーカーのヤマキ株式会社が制定した「鍋の日」でもある。立冬は11月7日であることが多いため、鍋の日と重なる年も。

 
11月ともなるとすっかり寒くなり、温かな鍋料理が恋しい日が続く。以下で、日本全国の有名ご当地鍋のいくつかをピックアップして紹介したい。

 

「石狩鍋」(北海道)

「石狩鍋」

 
サケの身をぶつ切りにし、中骨などのアラや野菜などを煮込んだワイルドな北海道の郷土鍋。体を温める効果があるといわれる味噌仕立てが特徴。味をキリッと引き締めたり、魚の臭みを抑えたりするために山椒を使うこともある。

 
石狩市は、明治初期にサケの地引網漁が全盛期を迎えた。「北海道の水産業の象徴」と紹介されるまでに至った石狩市は観光客で賑わい、「だいなべ」という漁師飯が提供された。だいなべとは味噌汁にサケのぶつ切りやアラ、野菜を入れたもの。これがのちに「石狩鍋」と呼ばれるようになり、郷土料理として定着した。

 
材料と作り方は至ってシンプル。サケは必須。甘みを出すためのキャベツや玉ねぎなどの野菜を基本に、長ねぎや大根、豆腐などをお好みで。昆布のだし汁で煮た後に味噌で味を調え、お好みで山椒を入れる。家庭でも簡単にできるため、一度試してみてはいかがだろう。

 

「きりたんぽ鍋」(秋田県)

「きりたんぽ鍋」

 
きりたんぽとは、つぶした米を木の棒につけて焼いたもの。これを、比内地鶏や山の幸などの具材と一緒に煮込んだ秋田の郷土鍋が「きりたんぽ鍋」ある。

 
昔、猟師が米をつぶして木の棒に巻き付け焼いたものを、山神様にお供えしていた。一説には、それに味噌を塗ったり、鍋に入れて食べたというのがその起源だという。

 
「たんぽ」の語源も面白い。猟師が藩主をもてなすため、この木の棒に巻き付けたものを提供したところ、いたく気に入った藩主に料理名を聞かれ、「短穂(たんぽ)の槍」を切り落とした形に似ていることから、とっさに「きりたんぽです」と答えたのが起源だという説がある。

 
当時はキジなどの肉と山菜を煮込んでいたようだが、決まったレシピはない。現在ではキジではなく比内地鶏を使ってだしをとることが多い。また、セリやマイタケも定番だ。そのほか、キンタケやギンタケなどの希少な山の幸を入れたり、ゴボウでコクを深めたりするなど、家庭や店ごとの味がある。

 

「ほうとう鍋」(山梨県)

「ほうとう鍋」

 
山梨といえば「ほうとう鍋」。その起源についてはさまざまな説がある。

 
現在のうどんの原型となった「はくたく」という小麦粉を練って伸ばした食品があるが、「はくたく」の読みが変化して、ほうとうになったというものがその一つ。

 
面白いのが、甲斐の国の武将・武田信玄説。戦国時代の高僧が武田信玄へ伝えた陣中食が「武田汁」と呼ばれ、野戦食として重宝。武田信玄自らの「宝刀(ほうとう)」で麺を切ったという伝説も残る。

 
さて、山梨は山地が多く米が貴重な土地。また、養蚕も盛んで忙しいため、作業の合間に小麦粉を練り、生地を寝かせることなく切って煮込んで食べたことが、その調理法の由来だと考えられている。手間がかからないため、山梨では今も週に1回はほうとうを食べる家庭が多いとか。

 

「ちゃんこ鍋」(東京都)

「ちゃんこ鍋」

 
現在は「ちゃんこ鍋」専門店もあるが、本来は相撲部屋の力士が作る料理すべてを「ちゃんこ」といった。

 
ちゃんこ鍋のスープは、「ソップ炊き」と呼ばれる鶏がらだしが基本。その理由は、力士にとって手をつくことが負けを意味するためである。常に二本足で歩く鶏の肉を使用することで縁起を担いだ。

 
しかし、現在は相撲部屋や料理店で、具材も味付けもさまざまなちゃんこ鍋が作られている。例えば、伊勢ヶ濱部屋では公式Webサイトでちゃんこ鍋レシピを公開しており、豚肉を大根おろしとポン酢で食べる「雪見ちゃんこ」、豚肉を味噌と生姜で味つけした「味噌ちゃんこ」などが紹介されている。

 
相撲の街である両国周辺では、各相撲部屋の伝統を受け継いだ味を提供するちゃんこ鍋専門店が点在。なかには元力士が経営し、料理を振る舞ってくれる店もある。ぜひ訪れてみてほしい。

 

「湯豆腐」(京都府)

「湯豆腐」

 
「湯豆腐」の発祥といわれるのが、京都・南禅寺。もともとは、焼き豆腐を煮たものが提供されていたという。しかし、現在は昆布だしでゆっくりと絹豆腐に熱を通していくのが主流。

 
食材も調理法もシンプルだからこそ、湯豆腐で何よりも重視されることは、豆腐に「す」が入らないようにすることだ。「すが入る」とは食材内の水分が沸騰し、気泡により細かい穴が開くこと。豆腐の口当たりを損ねてしまう。また、豆腐はできるだけ味のよいものを使い、水も軟水との相性がよいという。

 
湯豆腐も寒い日に食べたくなる鍋料理の一つである。シンプルだからこそ奥が深い湯豆腐は、粋な大人の食の楽しみ方でもある。

 

「もつ鍋」(福岡県)

「もつ鍋」

 
「もつ鍋」の歴史は第二次世界大戦後までさかのぼり、発祥は福岡だといわれている。当時、臓物を食べることは一般的なことではなかった。作業員として働いていた朝鮮半島の人々が、アルミ鍋でモツやニラを煮込んだというのがルーツと考えられている。ちゃんぽん麵やキャベツなどを入れるようになり、評判となったために博多のもつ鍋が全国的に知られるようになったという。

 
モツといっても牛や豚、さらには小腸、大腸などの部位ごとにさまざまな種類があるが、生の牛モツの小腸が人気である。ニラやキャベツを添えるのが一般的で、餃子の皮をのせるものが流行し、すっかり定着した。

 
最近はインターネット通販などで、冷凍のもつ鍋セットが気軽に入手できるようになった。こうしたものを使えば、野菜とあわせて煮込むだけで楽しめる。

 

家にいながらご当地鍋を楽しむ

鍋料理は下ごしらえの手間が少なく、具材はありものでまかなうこともできる気楽な家庭料理である。とはいえ、ワンパターンだと飽きてしまうし、栄養バランスも偏るかもしれない。そういうときは、全国各地のご当地鍋を再現してみるのもよいだろう。

 
そういえば、山梨には物事がうまくいくことを「うまいもんだよ、カボチャのほうとう」と表現する文化がある。カボチャを入れるとほうとう鍋がおいしくなることからこのようにいう。鍋料理が、日本の文化に根づき愛されていることの証左であろう。
 
 

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