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日本酒おすすめ16選|トレンドや「生酛」造りなどの解説も

日本各地で造られる日本酒は今、蔵の世代交代による新たな挑戦や技術進化によって、新時代を迎えているといっても過言ではない。

 
この記事では、どんどん広がる日本酒の楽しみを味わい尽くすため、

 
・日本酒とは
・トレンドやキーワード
・選び方のヒント
・編集部のおすすめ銘柄

 
について、たっぷりとお伝えしたい。

 

日本酒を理解する10のキーワード

 
日本酒がどんなお酒なのか、どこに特徴が現れるのか、具体的なキーワードに沿って解説していこう。

 

特定名称酒

日本酒は、米、米麹、水を原料に発酵させてできた「もろみ」を搾った、まさに「米の酒」だ。アルコール度数が22度未満のものが「清酒」と呼ばれ、さらに、国産の米や米麹を使い、日本国内で醸造されたものが「日本酒」と表示できる。昨今、世界から「SAKE」が注目され、海外でも醸造されているが、それらはあくまでも「清酒」であり、「日本酒」を名乗ることはできない。

 

ラベルを読み解く

日本酒のラベルには、銘柄のほかに「純米吟醸」「大吟醸」「本醸造」といった表記があることが多く、何が違うの?と迷ってしまいがち。これらは「特定名称酒」と呼ばれる。原料や作り方の違いによる分類だ。

 
「特定名称酒」は、
1)醸造アルコールを使用しているか
2)原料米をどのぐらい削っているか
によって分類される。

 
醸造アルコールを
・使用している酒→吟醸酒、本醸造酒
・使用していない酒→純米酒

 
その上で、原料米をどのぐらい削っているか=精米歩合が
・70%以下→本醸造酒
・60%以下→吟醸酒
・50%以下→大吟醸酒

 
となる。つまり、精米歩合が60%以下で醸造アルコールを使っているものは「吟醸酒」、同じ精米歩合でも醸造アルコールを使っていなければ「純米吟醸酒」となる。精米歩合が何%でも「純米」と書いてさえあれば醸造アルコールを使っていない純米酒、と覚えておくとわかりやすい。

 

「アル添」とは?

吟醸酒や本醸造酒に使われる醸造アルコール。「アル添(アルコール添加)」という表現があるため、「添加物を入れているなんて体に悪そう」「悪酔いしそう」などとネガティブな印象を持たれがちだが、日本酒造りに使われる醸造アルコールは、主にサトウキビなどを原料とした蒸留酒で、サワーなどに使われる甲類焼酎。酒の雑味を抑えてバランスよく仕上げ、キレのあるすっきりした飲み口にする作用がある。

 
アル添酒のネガティブな印象は、日本酒の悲しい歴史に起因する。戦中戦後の時代、深刻な米不足により、安価な醸造アルコールや甘味料、酸味料などを加えて増量した、いわゆる「三増酒(三倍増醸酒)」が出回り、粗悪な酒も少なくなかった。このころの悪いイメージが残っているためだろう。

 
特定名称酒において含まれる醸造アルコールの量は、白米重量の10%以下と厳しく決められており、また、アル添することで飲みやすい、食事にあわせやすくなるなど、人気の銘酒も多い。香りが控えめで味わいが引き締まっているため、燗酒にも向いている。

 
一方、醸造アルコールを使わない純米酒は、米本来のふくよかな旨味、深いコクを楽しめるタイプが多い。また、純米吟醸や純米大吟醸といった、より磨いた米を使った酒は、華やかな香りやクリアな飲み口も併せ持っている。

 
特定名称酒は全部で8種類。これらに該当しない酒は「普通酒」と呼ばれる。

 
特定名称酒の分類について、より詳しく知りたい方はこちら。

日本酒の種類を知りたい!味や香りの特徴・合う料理も紹介

 

精米歩合

精米歩合とは、玄米を外側から削り、残った部分の割合のこと。日本酒造りでは原料米の表面を削る作業を「磨く」と呼ぶ。逆に、削った部分を表すのは「精白率」と呼ぶ。

 
酒造りに適した「酒造好適米」には中心に「心白(しんぱく)」という白濁した部分があり、この部分には酒の雑味のもとになるたんぱく質や脂質が少ないため、磨けば磨くほどすっきりとした味わいの酒に仕上がる。

 
精米歩合の値が低い=米の表面を多く削っている大吟醸酒が「きれいな酒」と表されるのはこのため。米に含まれる脂質には香り成分の生成を抑える力があり、多く磨いて脂質を除いた米から造ると、「吟醸香」と呼ばれる華やかでフルーティーな香りを放つ酒に仕上がる。

 
多く磨くためには当然使う玄米の量も多くなり、手間も時間もかかるため、精米歩合の数値が高い酒ほど高価になる傾向がある。だからと言って「たくさん磨いた酒がいい酒、美味しい酒」かと言えば、そんなことはない。

 
米の表層にある栄養素は、多すぎると雑味が出るが、適量であれば旨みやコクを酒にもたらしてくれる。最近では、醸造を工夫して旨味を最大限に引き出す「低精米」の日本酒も注目を集めている。

 

 

日本酒度

「淡麗辛口」「濃醇甘口」など、日本酒の味わいを評価する基準の一つに「辛い、甘い」がある。この甘辛の指標が「日本酒度」だ。「+」「-」と数値で表示される。酒の中にどのぐらい糖分の比重があるかを指し示し、一般的にプラスになればなるほど辛口、マイナスになればなるほど甘口とされている。

 
ちなみに、「辛口」と言っても、ピリッとした辛味ではなく、一般的にはドライですっきりとした味わいを指す。

 
もう一つ、日本酒の甘辛度を左右するのが「酸度」。日本酒に酸味や旨味をもたらす有機酸の含有量を示す。酸は味を引き締め、キレを感じさせる作用があるため、酸度が高いほど辛口になる傾向が。

 
日本酒度と酸度の組み合わせで、味わいのタイプが変わる。

 
・日本酒度がプラスで酸度が低い→淡麗辛口
・日本酒度がプラスで酸度が高い→濃醇辛口
・日本酒度がマイナスで酸度が低い→淡麗甘口
・日本酒度がマイナスで酸度が高い→濃醇甘口

 
日本酒度や酸度は日本酒のラベルや店頭のPOPに記されていることもあり、酒を選ぶ基準になるが、日本酒の味や香りは原料の米や酵母、さらに蔵ごとの仕込み方法により非常に幅広く多様だ。

 
さらに味覚には個人差があるため、同じ数値でも辛口に感じられる酒もあれば、甘いと感じる酒もある。それもまた日本酒の奥深さ。あくまでも酒選びの参考として覚えておくといいだろう。

 

酵母

日本酒造りに欠かせないのが「酵母」。微生物の一種で、食材を発酵させる働きがある。ワインやビールなどの酒類、パン、チーズ、日本の伝統調味料である味噌や醤油も酵母の力で発酵する。

 
日本酒の造りに適している酵母は「清酒酵母」と呼ばれ、大きく二つの働きをする。

 

酵母の二つの働き

一つ目が「アルコールを生み出す」。

 
酵母は糖をエサとして食べることで発酵が進み、アルコールが生まれる。これが「アルコール発酵」。世界中の多くの酒はこの仕組みで造られている。しかし日本酒は、原料の米の成分のほとんどがデンプンのため、そのままではアルコール発酵に利用できない。

 
そこで、力を発揮するのが、酒の原料の一つである麹。麹が米のデンプンを分解して糖に変え、それを原料にして酵母がアルコール発酵を行う。こうして日本酒が生まれるのだ。

 
二つ目は「香りを生み出す」。

 
酵母は糖を食べてアルコール発酵する際、香りのもととなる成分も作り出している。なかでも「カプロン酸エチル」はリンゴやメロンのような甘い香り、「酢酸イソアミル」はバナナや洋梨を思わせる香りを発生させる。日本酒が米と米麹から作られるにもかかわらずフルーティーな香りがするのは、酵母の力も大きい。

 

多種多様な清酒酵母

代表的な酵母が「きょうかい酵母」。日本醸造協会が頒布している清酒酵母で、良質で発酵力が強く、安定的な酒造りができるため、多くの蔵で採用されている。

 
「協会○号」と番号がついており、なかでも、秋田県の新政酒造で誕生した6号、長野県の宮坂醸造の「真澄」から抽出された7号、「熊本酵母」と呼ばれる9号が主流になっている。

 
かつて日本酒は、それぞれの酒蔵に住み着いている「蔵つき酵母」を使って造られてきた。培養する手間がかかり、さらに安定した味を出すことが難しいため、現在はきょうかい酵母を使う蔵が多いが、やはり「うちの蔵ならではの個性を」と、蔵付き酵母を使った酒造りに取り組む蔵もある。

 
ほかにも、その土地ならではの酒を造ろうと、自治体や研究機関が地域の米を用いた「開発酵母」の取り組みも。福島県「うつくしま煌酵母」、秋田県「秋田流花酵母」、長野県「長野アルプス酵母」、静岡県「静岡酵母」などがある。

 
花の蜜から抽出した「花酵母」は、東京農大の中田久保教授によって発見され、ナデシコ、ヒマワリ、マリーゴールド、桜などが実用化されている。最近は、ワインを醸造する際に使う「ワイン酵母」を使った日本酒がトレンドに。通常の日本酒に比べると12~13度とアルコール度数が低く、酸味と甘味が特徴で、洋食との相性もいい。

 

火入れ

搾った後の日本酒は、通常2回の加熱処理を行う。これを「火入れ」という。

 
もろみを搾った日本酒の中にはまだ酵母が生きていて、アルコール発酵が続く。そう、搾りたての酒はまだ生きていて、そのままでは飲み頃を過ぎてしまったり、劣化が進んでしまったりする。

 
そこで通常は、搾った直後と出荷前に2回火入れをする。60度程度に加熱することで、味や香りを劣化させる酵素や微生物などの働きを抑えて品質を安定させ、保存性を高めるのが目的だ。

 
この火入れを一切しないのが「生酒」。搾ったままのフレッシュでフルーティーな味わい、華やかな香りが魅力。ピチピチとした微発泡が楽しめる生酒も。とてもデリケートで高温、光に弱いため、冷蔵保管が必須。また、開封後は劣化が早いので、できるだけ早く飲み切ったほうがいい。

 
一度も火入れをしない「生酒」のほかに、生のまま貯蔵して瓶詰めや出荷の前に火入れをする「生貯蔵酒」、搾った酒を貯蔵する前に1回火入れをする「生詰め」も。これらに対して生酒は「生生」「本生」とも呼ばれる。

 

 

生酛・菩提酛・山廃

生酛(きもと)、山廃(やまはい)。これも日本酒のラベルでよく見る表現。日本酒造りに欠かせない「酛(もと)」=「酒母」の作り方に由来する酒の種類だ。

 
「酒母」とは、蒸した米、麹、水を小さなタンクに入れて、アルコール発酵するための酵母を大量に培養したもの。出来上がった酒母に、さらに蒸米、麹、水を加えてもろみを造っていく。

 
酒に悪さをする微生物や雑菌が入り込まないように、酒母のタンクの中は酸性に保つ必要がある。そのために乳酸を用いるが、この乳酸をどのように得るかで、「生酛系酒母」「速醸系酒母」と、酒母のタイプが分かれる。

 
「生酛系酒母」は、酒蔵の中に生息する天然の乳酸菌を取り込むことによって造られる。その乳酸菌が乳酸を作り出す。

 
この酒母を使う「生酛造り」は、江戸時代から続く伝統的な製法。酒母に入れた米を手作業ですり潰す「山卸し(やまおろし)」という工程がある。

 
酒造りや精米技術が発達していなかった時代、米が溶ける「糖化」までに時間がかかり、雑菌などの影響を受けるリスクが高かった。その時間を短縮するため米をすり潰したのだ。非常に重労働で、酒母ができるまでに時間がかかる上に有害な雑菌が増え腐ってしまうケースも少なくない。

 
明治時代になると、この山卸しをしない造り方が生まれる。「山卸しを廃した」から「山廃」。実現できた背景には、米が溶けやすい酒造好適米の登場や精米技術の進歩などがあったと言われている。

 
山廃酛も生酛同様、自然の乳酸菌から乳酸を作り出す。いわば生酛とはきょうだいのような関係で、「生酛系酒母」に分類される。いずれも手間と時間がかかるが、米の旨味がしっかりと引き出され、複雑でコクのある味わいの酒が生まれる。

 
そして、生酛造りよりも古い「原点」ともされる手法がある。「菩提酛(ぼだいもと)/水酛(みずもと)造り」と呼ばれ、水に炊いた米や生米、もしくは麹を入れ、乳酸発酵した「そやし水」という酸っぱい液体を作り、この液体で酒母を育てる手法だ。

 
菩提酛は室町時代の中期、今につながる日本酒の醸造技術を確立した奈良の菩提山正暦寺で生み出された。しかし、明治時代に開発された速醸酛の普及により、菩提酛は大正時代にはほぼ潰えてしまった。

 
時が流れ昭和時代末期。期せずして奈良県と岡山県でそれぞれ菩提酛復活の試みが行われる。そやし水の造り方に違いはあるが、いずれも伝統製法である菩提酛から酒造りを成功させた。正暦寺も1999年、菩提酛造りを復活。奈良県のいくつかの酒蔵が、その菩提酛を使い日本酒を仕込んでいる。

 
「御前酒」の銘柄で知られる岡山県真庭市の酒蔵、辻本店では、従来の菩提酛をベースに独自の製法を生み出し、「御前酒菩提もと」としてさまざまな酒を生み出している。

 
菩提酛で造られた酒は、そやし水に由来する乳酸菌飲料や発酵食品のような酸味や果実を思わせる香りが特徴。さわやかながら飲みごたえのある酒が生まれる。

 
一方、「速醸系酒母」は、人工的に精製された乳酸を添加してアルコール発酵を促す。酒母を酸性に保ち、雑菌などの繁殖を防いで安定的に造ることができ、かかる時間も生酛系よりも短い。現在はこの速醸系酒母を使った酒造りが主流になっている。

 
酛の歴史は、菌や発酵など目に見えない神秘的な世界への畏怖と、より安全に良質な酒を造ろうという先人たちの思いが紡いだものなのかもしれない。

 

原酒

もろみを搾った直後の酒はアルコール度数が18~20%程度と高い。ここに水を加え、飲みやすい度数まで調整して出荷される日本酒が多いが、この加水処理をせず、搾ったままの酒をそのまま瓶詰めして出荷されるのが「原酒」だ。

 
水を加えていないため、味わいも香りも濃厚。豊かな旨味と力強い飲み口が楽しめる。冷やしてもお燗にしてもいいが、アルコール度数が高く濃厚な味わいなので、氷を入れてオンザロック、炭酸で割ってハイボールに、果汁などを加えてカクテル風にと、さまざまなアレンジが楽しめるのも魅力。

 
ちなみに、搾った酒に火入れも加水もしない酒は「生原酒」と呼ばれる。

 

搾り

もろみを日本酒と酒粕に分ける作業が「搾り」だ。「上槽」とも呼ばれる。大きくは3つの方法がある。

 

槽搾り(ふなしぼり)

もろみを詰めた酒袋を船形の「槽(ふね)」に敷き詰め、ゆっくりと圧力をかけて搾る伝統的な手法。

 
酒袋に詰め槽に並べるのは手作業になるため、手間と時間がかかる。しかし、圧力をかけすぎずに優しく搾るため、口当たりが優しく、雑味のない風味の酒に仕上がる。

 
大吟醸酒など繊細な酒を搾るのに向いているが、普通酒も槽搾りにこだわっている蔵もある。

 

ヤブタ式

アコーディオン状の自動圧搾機にもろみを通し、両側から圧力を加えて搾る。一般的に「ヤブタ式」と呼ばれる。多くの酒蔵が採用する代表的な搾り方だ。

 
機械の中には布を重ねた板が連なり、この板に酒粕が残る仕組み。売られている酒粕が板状なのはこのため。

 
槽搾りよりも短時間で搾ることができ、冷蔵施設内に機械を設置すれば、もろみを低温状態で搾ることもできる。

 

袋吊り

もろみを入れた酒袋を吊るし、重力のみで酒を搾る。「雫取り」「斗瓶取り」とも呼ばれる。もっとも手間と時間がかかる方法で、圧力をかけないため搾れる量も少ない。鑑評会に出品する特別な酒などを造る場合に用いる。当然、価格も高いものが多い。

 
さらに搾りの段階によって、「あらばしり」「中汲み」「責め」と三つの種類に分かれる。

 

あらばしり

搾り始めて最初に出てくる酒。澱が残っている薄濁りで、アルコール度数は低め。ぴちぴちとしたフレッシュな味わいが魅力だが、最初にほとばしる酒なので、雑味も含めた荒々しい風味に。

 

中汲み(中取り)

あらばしりが終わった後には、透明な酒に。雑味が少なく、香り、味わいともにバランスがいい。

 

責め

中汲みが終わり、もろみに含まれる液体が少なくなった状態でさらに圧力をかけ搾り出したもの。あらばしりとは対照的にアルコール度数が高く、力強い味わい。雑味が出ることも多いが、飲みごたえがある濃醇な酒に。

 
段階ごとに分けずブレンドして仕上げる酒も多いが、同じタンクのもろみから生まれる三種類の味わいを飲み比べてみれば、日本酒の奥深さを感じることができるだろう。

 

杜氏

 
お酒を造る人々は「蔵人」と呼ばれ、そのトップに立つのが「杜氏」。酒造りの現場で采配を振るう総監督であり、その年の酒の出来を握る最高責任者でもある。

 
誕生は江戸時代。「寒造り」という言葉があるように、日本酒は寒い冬場に仕込む蔵が多いが、実は江戸期までは年間を通して醸造していたという。しかし、凶作に備えて米を備蓄するため、冬季のみ酒造りをするようにと幕府がお触れを出した。

 
仕込みが集中する冬場の働き手として集められたのが、農閑期の農民たち。出稼ぎでやってきて蔵に住み込み、酒造りが終わると帰っていく技術者集団だった。そのリーダーが杜氏。数人から数十人の蔵人を指揮し、雇用主である蔵元が求める酒を造るのがミッションだ。

 
全国に地域に根ざした杜氏集団があり、それぞれ伝統技法などが異なるという。その数は約30に上り、特に人数が多い流派が「三大杜氏」と称される。

 

南部杜氏

岩手県発祥。江戸時代、南部藩が主導して酒造りの産業化を進めたことで日本酒の品質が向上し、その技術を持った杜氏たちが藩外に出稼ぎに行ったことで全国に南部杜氏の技術を受け継ぐ杜氏が増えた。日本最大規模の杜氏集団。

 

越後杜氏

新潟県中南部が拠点。豪雪地帯で冬の間は農作業ができない農家の人たちが、冬場の出稼ぎ場所として蔵で働いた。県内の地域によって、三島杜氏、刈羽杜氏、頸城杜氏に分かれている。1984年には、後継者を育成するため「新潟清酒学校」を設立。

 

丹波杜氏

現在の兵庫県丹波篠山市で生まれた杜氏集団。江戸時代には大阪・池田、伊丹、灘などで次々と銘酒を手がけたことから、丹波杜氏の技術が「灘の酒」を造ったと言われている。民謡「デカンショ節」でも「灘の名酒は どなたがつくる おらが自慢の 丹波杜氏」と歌われる。

 
杜氏も蔵人も、かつては冬場に蔵にやってくる季節労働が一般的だったが、高度経済成長期には地方でも雇用が増えたため、酒造りのために出稼ぎする人は減り、杜氏の高齢化が進んだ。そこで現在では、自社で人材を育成しようという動きが広がり、社員として通年で働く「社員杜氏」も増えている。

 
また以前は、経営は蔵元、酒造りは杜氏と役割が分かれていたが、蔵元自身が酒造りをする「蔵元杜氏」も生まれている。

 
昔は酒造りは杜氏の経験と勘に頼るところが大きかったが、大学で醸造学などを学んだ経歴を持つ若い杜氏も少なくなく、伝統的な技術と科学的知見やデータを駆使し、よりよい酒造り、世界を見据えた酒造りを目指す蔵も多い。

 
蔵が「女人禁制」とされた時代もあったが、昨今は女性杜氏の活躍も目覚ましい。実はもともとは「刀自(とうじ)」と書き、これは家事全般を取り仕切る主婦の意で、かつて酒造りは女性の仕事だったことを表している。

 

復活蔵

日本酒市場は、昭和40年代後半を最盛期に右肩下がりを続けている。若者の酒離れなどもあり、酒蔵を取り巻く環境は厳しく、毎年廃業する蔵は後を絶たない。

 
そんななか、再び酒造りに乗り出す「復活蔵」もある。

 
現在、東京23区内にある唯一の酒蔵、東京港醸造。江戸時代から現在の港区芝で酒造りをしていたが、1909年廃業。その後、食堂や雑貨屋などを営んできたが、再びこの地で酒を造ろうと動き出す。

 
それから新たに酒造免許を取得し、約8年かけて酒造りを再開。代表銘柄「江戸開城」は、東京の水道水を使って仕込んでいる。

 
蔵そのものが失われた酒蔵の復活も。

 
2011年の東日本大震災で、東北地方の多くの酒蔵が甚大な被害を受けた。福島県浪江町で江戸時代末期から酒造りをしていた鈴木酒造店もその一つ。銘柄「磐城寿」で知られる蔵は、津波ですべてが流失。そのうえ、福島原発の事故で避難を余儀なくされた。

 
しかし、震災前に試験場にたまたま預けていた酵母が残っていた。廃業予定だった山形の酒蔵を買い取り、酒造りを再開。そして震災10年の節目となる2021年、浪江町に新しくオープンした「道の駅なみえ」に併設された蔵で、10年ぶりにふるさとで酒を仕込んだ。

 
復活蔵が醸す酒には、「もう一度ここで酒造りを」と願い、立ち上がった人たちの不屈の思いが込められている。

 

日本酒の選び方

 
主要なキーワード、ご理解いただけただろうか?次に、実際に酒販店で日本酒を選ぶときのポイントを解説しよう。

 

産地による違い

日本では全国で酒造りが行われている。その味わいや個性は、蔵によって、杜氏によってそれぞれ設計されるが、気候風土が酒に映し出されることもある。

 
例えば「気温」。酒を醸す酵母は生き物。外気や蔵の中の温度が低ければ、その活動は緩やかになり、発酵もゆっくり進むため繊細ですっきりとした辛口の酒に。

 
対して、温暖な土地では酵母が活発に働き、発酵も早い。結果、しっかりとした濃厚なタイプの酒になる。

 
冷蔵技術などが発達した現代は気温に大きく左右されずに酒造りができるようになった。しかし、気候風土がその蔵の個性となって表現される酒は少なくない。

 
次に「水」。水の美味しい場所では美味しい酒ができると言われる。米は取り寄せることができるが、水は蔵のある土地のものが使われるためだ。

 
水の違いをわかりやすく感じられるのが、「日本三大酒どころ」と呼ばれる、灘、伏見、西条の酒。

 
兵庫県の灘の酒は、「日本名水百選」に選ばれた六甲山から湧く「宮水」で仕込まれる。「宮水」は日本の中では屈指の硬水で、麹や酵母の成長を促すミネラル類が豊富。しっかりと発酵が進むため、キリッとした引き締まった辛口の酒が生まれる。このことから「灘の男酒」と呼ばれる。

 
京都・伏見は、やはり「日本名水百選」に選ばれた名水「御香水」が湧き出し、この水で多くの銘酒が仕込まれてきた。「御香水」はカリウム、カルシウムなどのミネラルをバランスよく含む中硬水。まろやかでやさしい口当たりの酒に仕上がることから、「伏見の女酒」と称される。

 

 
対して広島の西条は、軟水。酵母の勢いがつかず発酵が進みにくいことから「酒造りに適していない土地」と言われてきた。しかし、三津村(現在の東広島市安芸津町三津)の酒造家、三浦仙三郎は、麹を丁寧に造ることで発酵を促し、さらに発酵が遅いことを逆手にとって長期発酵することで、繊細でキメの細やかな酒を生み出した。この「軟水醸造法」は現在の「吟醸造り」につながったと言われている。

 
ほかにも、ワインやウイスキーのように、山間にある蔵は山菜やキノコなどの山の幸に合う酒が、海に近い蔵では魚介類と相性抜群の酒が生まれる。その土地の酒と名産品をあわせれば、舌で鼻で、旅気分を味わえるに違いない。

 

味わいのタイプ

日本酒は、使う米や酵母、製造方法など、多くの要素によって、多種多様な味わいが生まれる。それが「わかりにくい、選びにくい」と思われがちだ。

 
そこで参考にしたいのが「日本酒の四つのタイプ」。日本酒の味わいの濃淡と香りの強弱を組み合わせて、「爽酒・薫酒・醇酒・熟酒」にタイプ分けしている。味わいや香りの方向性がわかるのはもちろん、適した飲用温度、相性のよい料理などがある程度わかる仕組みだ。

 

爽酒

香りは控えめ、軽快でスッキリとした味わいの淡麗な酒。本醸造、普通酒、また生酒などが当てはまる。冷やすことで酒が持つさわやかさ、みずみずしさが引き立つ。個性が強すぎないため料理にはあわせやすい。野菜、刺し身や焼き魚、豆腐など、味わいの淡い食材や料理とも相性がいい。

 

薫酒

りんごやメロン、バナナ、花など、フルーティーな香りが高く、軽やかな飲み口の酒。吟醸系や大吟醸系の酒が当てはまる。冷酒が向いているが、冷やしすぎると持ち味の華やかな香りが閉じてしまい、苦味が感じられることも。やや冷やし気味で。乾杯にもピッタリ、さっぱり系の洋食の前菜などと。

 

醇酒

香りは穏やかで、芳醇でコクがある味わい。精米歩合が低い純米酒、生酛や山廃造りの酒、無濾過や原酒も。米の旨味がしっかりと感じられるタイプの酒が多い。さまざまな温度帯で楽しめ、温度の違いで味わいも変化する。日本酒の力強さが肉料理や濃い味付けの料理にもよく合う。

 

熟酒

濃醇で複雑な味わい。ナッツやキノコ、スパイスなどの熟成を感じさせる複雑な香りで、紹興酒やシェリーのような印象も。古酒や長期熟成の酒。味わいの濃い料理や油を使った料理、熟成チーズなど香りの高い料理と。

 
最近は、この四つのタイプの魅力をより楽しむタイプの酒器も。あくまでも目安に過ぎず、すべての日本酒をこの分類に当てはめることはできないが、酒探しの基準として使ってみては?

 

季節感や季節限定酒

 
冬から春にかけては新酒ならではのフレッシュな、夏にはキリッとスッキリした、秋には熟成を経てまろやかになった酒を――。季節ごとの酒を味わうことができるのは、四季のある日本ならではの楽しみだ。

 

新酒

冬から春にかけて出回る「新酒」。日本酒の酒造年度(ラベルなどに「BY」=Brewing Yearと書かれることも)は7月1日から翌年6月30日までで、その間に造られ、出荷された酒が「新酒」とされている。

 
通年で酒を仕込む「四季醸造」の蔵以外は、地域によるが10月から3月の気温が低い時期に酒が造られる。その中で6月までに出荷した酒が「新酒」を謳うことができる。

 

しぼりたて

多くの日本酒は品質を維持するために火入れをするが、できたばかりの「しぼりたて」は生酒のまま出荷される。フレッシュでぴちぴちとした味わいや口当たりは、冬から早春にかけてだけ楽しめる特別な味わいだ。

 

立春朝搾り

旧暦の正月である立春の朝に搾った酒を、その日のうちに酒販店や飲食店に届ける。日本名門酒会が企画。しぼりたての生酒ならではのフレッシュな味わいが春の訪れを知らせてくれる。

 

花見酒

桜の時期にあわせ、お花見用の酒が出回る。春の花を思わせるピンク色のラベルなどは、食卓やお花見の場を華やかに。うすにごりや、赤色酵母を使ってほんのりピンク色の酒など、見た目が華やかな酒も。優しい甘さや低アルコールの酒も多く、お花見気分を盛り上げてくれる。

 

夏酒

通常、夏場になると日本酒の売り上げが伸び悩む。そこで「夏場に楽しめる酒」として売り出される酒がある。

 
例えば……。
フレッシュな味わいの生酒。
酸味が効いたスッキリとした酒。
ロックで楽しめる原酒。
米の栄養分がたっぷり入って夏バテに効きそうなにごり酒
などなど。

 

ひやおろし、秋上がり

日本酒ファンが待ちわびる秋の酒といえば「ひやおろし」。しぼりたての新酒に1回火入れをした「生詰め」を、秋に出荷する酒だ。夏を越えてほどよく熟成した酒は、丸味のある口当たりとまろやかで深い味わいを楽しめる。

 
同じく秋の酒の表現に「秋上がり」がある。厳密な定義はないが、「夏を越えて味が上がった」ことを指し、逆にうまく熟成しなかった酒は「秋下がり」「秋落ち」といわれるという。

 

米の種類

 
山田錦、五百万石、雄町(おまち)――。日本酒のラベルにそんな文字を見たことはないだろうか?これは酒の原料となった酒米の名前。酒米のなかでも、特に酒造りに適したものを「酒造好適米」という。

 
酒造好適米の特徴は、
・お米の粒が食用米より大きい。
・外側が硬く、内側が柔らかい。
・中心に「心白」と呼ばれる白い部分がある。
・たんぱく質や脂質が少ない。
・吸水率が食用米よりも高い。
が挙げられる。

 
酒造りのためには外側を削って精米するが、食用米の精米歩合がおおよそ90%に対して、特定名称酒の場合は75%以下まで削る。そのため、粒が大きく、外側が硬く丈夫な酒造好適米は酒造りにより適している。

 
外側が硬いのに対し、内側の心白と呼ばれる部分は柔らかい。そのため吸水性がよく、麹菌の菌糸も入りやすいという特徴がある。

 
旨味があってツヤツヤしている米は食べるには最高。しかし、旨味のもとになるたんぱく質やツヤを出す脂質は、多すぎると雑味の原因となる。

 
まさに酒造りに適した米、酒造好適米。それぞれに特徴があり、酒の味を決める要素の一つでもある。代表的な酒造好適米を見ていこう。

 

山田錦

兵庫県で誕生。全国でもっとも多く生産されているが、現在も約6割が兵庫県で栽培されている。粒が大きく、そのおよそ8割が心白で、たんぱく質が少ないため雑味のないスッキリとした味わいに仕上がるといわれている。鑑評会に出品される大吟醸酒では山田錦を用いる酒蔵が多い。

 

五百万石

新潟県で誕生。山田錦と並ぶ日本を代表する酒造好適米。同県の気候風土にあわせて開発され、新潟の酒の代名詞とも言える「淡麗辛口」で飲みやすい酒に仕上がる。

 

美山錦(みやまにしき)

長野県で1978年に誕生した、比較的新しい酒造好適米。山田錦、五百万石に次いで広く用いられている。寒さに強いことから、東北地方などでも多く栽培されている。なめらかでスッキリした味わいの酒に。

 

雄町(おまち)

江戸時代に誕生し、日本最古といわれている酒造好適米。山田錦、五百万石などのルーツでもある。稲の背丈が高く栽培が難しいことから一時は絶滅しかけたが、その後、再び栽培されるように。米の旨味やふくよかな甘味が感じられる、芳醇でコクのある酒に。人気が高く、雄町を愛する「オマチスト」と呼ばれる愛飲家も。

 
雄町同様に一度は栽培が難しいと姿を消したものの復活した米(広島「八反草」、京都「祝」、鳥取「強力」など)や、「地産地消」の流れを受けて自治体などが新たに開発したオリジナルの酒米(宮城「吟のいろは」、福島「福乃香」、栃木「夢ささら」、福井「さかほまれ」など)も。

 
ブドウの品種特性が表れやすいワインに対し、酒造好適米は品種はもちろん、精米歩合や使う酵母などにより味わいも香りもより多彩に。同じ酒造好適米をあれこれ飲み比べてみても楽しいかもしれない。

 
ちなみに、食用米を使った酒もたくさんある。酒造りに適さない点を、技術力、手間ひま、そして造り手の情熱で醸す。食べて美味しい米の旨味が感じられる、食事にあわせやすい酒が多い。

 

さらに広がる日本酒の楽しみ方

 

温度

ほかのアルコールに比べ、幅広い温度帯で楽しめることも日本酒の魅力のひとつ。ホットワインや焼酎のお湯割りなど温めて飲む酒もあるが、何も加えず割らずに多様な温度で楽しむ酒は、世界的に見ても珍しい。

 
温度帯は5度刻みに呼称がつけられている。

 
・冷酒
「雪冷え」(5度)、「花冷え」(10度)
生酒や吟醸酒など華やかで香りの高い酒が向いている。

 
・常温
「涼冷え」(15度)、冷や(20度)
冷たくもぬるくもない温度帯。酒が持つ味が最も感じられる。純米酒、本醸造酒、古酒など。

 
・燗酒
「日向燗」(30度)、「人肌燗」(35度)、「ぬる燗」(40度)、「上燗」(45度)、「熱燗」(55度)、「飛び切り燗」(55度以上)

 
一般的には40度ぐらいまでが「ぬる燗」、それ以上が「熱燗」と呼ばれる。日本酒に含まれる旨味成分などは温度を上げることで増加する。純米酒や本醸造酒が向いている。生酛系で造られた酒はアミノ酸や乳酸が多いため、よりコクのある味わいに。雑味や苦味が抑えられる作用も。

 
風情ある呼称は日本ならでは。自分の好きな酒の好きな温度帯を探すのも楽しい。

 

熟成

ワインやウイスキーには長い年月の熟成を経た「ヴィンテージもの」があるが、日本酒も熟成による変化が楽しめる。

 
イキイキとフレッシュな新酒に対し、熟成を経た日本酒は落ち着いてまろやかな味わいに。ある程度寝かせてからのほうが味が乗ってくると考え、2年、3年と熟成させてから出荷する蔵も。

 
さらに長い時間熟成させたヴィンテージ酒は、「古酒」「長期熟成酒」と呼ばれる。5年、10年、中には20年を超える古酒も。熟成が進むと、無色透明だった酒は黄金色や琥珀色へと変化する。まろやかでありながら、若い酒では味わえない複雑で深い味わいと芳醇な香りに。

 
長期熟成した古酒は、デザートワインのような甘さと酸味を持つものもあり、チョコレートとあわせたりアイスクリームにかけたりといった楽しみ方も。海外からも注目を集めている。

 

貴醸酒

極上の甘味を楽しむ酒が「貴醸酒」。一言で言えば「酒で仕込んだ酒」だ。

 
日本酒は、酵母をたっぷり含んだ酒母に、「初添え」「仲添え」「留添え」と3回に渡って、水と麹と米を加えてもろみを仕込む。これを「三段仕込み」と呼ぶ。

 
貴醸酒は、留添えの際、水の代わりに酒を加えることが多い。そのことで甘味が増し、しかし飲み口は軽やかでスッキリとした酒に。さらに熟成すると美しい琥珀色を呈し、トロリとした口当たり、濃厚でありながら品のある甘やかさになる。

 
もともと、国賓を招いた晩餐会でシャンパンやワインが振る舞われていたが、「日本なんだから日本酒で」「そうした場面にふさわしい高級な日本酒を」という声が高まった。そこで、国税庁醸造試験所が研究に乗り出し、1973年に誕生した。翌年には、「華鳩」の銘柄で知られる広島県呉市の榎酒造が醸造に挑んだ。

 
まるで貴腐ワインのような贅沢な味わいは、近年、世界から高い評価を得ている。酒蔵、造り方、熟成しているかしていないかで、同じ貴醸酒でも味わいが変わる。1日の終わりにゆるゆると試してみては?

 

スパークリング

乾杯や食前酒にピッタリのスパークリング。日本酒にも、シュワシュワの泡が心地いいスパークリングタイプがある。

 
スパークリング日本酒は、炭酸を含んだ発泡性の日本酒のこと。酵母が生きている生酒などでピチピチとした微発泡タイプとは異なり、主に以下の三つの方法で造られるものを指す。

 
・瓶内二次発酵
瓶詰めした日本酒に酵母などを加えて発酵させ、炭酸ガスを閉じ込める。フランスのシャンパーニュと同じ製法。液体に泡が溶け込み、キメの細かい泡立ちと繊細な味わいに。

 
・炭酸ガス注入
出来上がった日本酒に後から炭酸ガスを注入する。強めの発泡で、スッキリさわやかな口当たり。

 
・活性にごり
もろみを目の粗い布などでこし、そのまま瓶詰めしたもの。瓶の中で発酵が続くことで炭酸が発生する。白濁したにごり酒で、米そのものの味わいが楽しめる。

 
通常の日本酒よりもアルコール度数が低いものや、やや甘口の酒も少なくなく、泡の効果で軽やかな口当たりに。飲みやすいのもスパークリング日本酒の魅力だ。

 

編集部が厳選!日本酒おすすめ16選

ここからは日本酒のテーマ別に、日本全国の酒どころから編集部が厳選したおすすめ銘柄を紹介する。

 

酸味が特徴の酒

「金婚 純米吟醸 江戸酒王子」(豊島屋酒造・東京都)

▲出典:豊島屋本店URL

 
東京都八王子市産の米と、その名も「江戸酵母」という酵母を使った、オール東京産の酒。しっかりとした酸味に甘味もあり、白ワインを思わせるさわやかな味わい。フランスの一流ホテルのトップソムリエが選ぶ「Kura Master 2020」で、最高賞であるプラチナ賞を受賞。720ml、税込価格2,530円。

 

「舞美人 山廃純米 無濾過生原酒 sanQ」(美川酒造場・福井県)

▲出典:美川酒造場URL

 
醸造する酒の半量ほどは、蔵付き酵母を使った山廃仕込み。昔ながらの和釜で米を蒸し、桜の木でできた槽で搾る。日本酒好きから「酸味が豊かで美味しい酒」として知られる「舞美人」。通常の酒の酸度は1~2、それに対してsanQは年によるが4~6と高い。濃醇な旨味と目が覚めるような酸味が特徴で、クセになる1本。720ml、税込価格3,080円。

 

「クラシック仙禽 無垢 生」(せんきん・栃木県)

▲出典:はせがわ酒店URL

 
幅広く料理にあわせやすい酒を目指し、「甘酸っぱい日本酒」を手がけた。酸味が特徴の酒を生み出すパイオニアの一つ。日本酒の酒蔵にして「ナチュール」「ドメーヌ」を貫く。定番アイテム「クラシック仙禽 無垢」は、伝統的な生酛造り。果実を思わせる香りとミネラル感、口に含むと心地のいい酸味と甘みが広がる。720ml、税込価格1,600円。

 

「花巴 水酛純米 生酒」(美吉野醸造・奈良県)

▲出典:美吉野醸造URL

 
室町時代に奈良の菩提山正暦寺で編み出された伝統的な醸造法「水酛」で仕込む。ヨーグルトやチーズなどの発酵由来の酸を感じさせる味わい。米の旨味、甘味とともに、心地のいい酸味が広がる。水酛純米 生酒は720ml、税込価格1,650円。

 

珍しい米から造る酒

「富久長」八反草(今田酒造・広島県)

▲出典:今田酒造URL

 
広島で生まれ栽培されてきた米「八反錦」や「八反」などの八反系統のルーツが「八反草」。栽培の難しさから一度は姿を消したが、今田酒造の杜氏、今田美穂さんが復活させた。国内外でも同蔵のみで使われている。看板銘柄「富久長」で使われ、国内外のコンクールで賞を受賞している。純米吟醸八反草は720ml、税込価格1,760円。

 

「白木久」コシヒカリ(白杉酒造・京都府)

▲出典:白杉酒造URL

 
すべての酒を食用米で仕込む京丹後市の白杉酒造。240年以上続く酒蔵だが、2014年から食用米である地元産のコシヒカリを使った酒造りに挑戦。やわらかくまろやかな口当たり、優しい味わいに。同じく地元産のササニシキを使った酒も。まさに京丹後のテロワールを映し出す酒を生み出している。全量コシヒカリの「キメラ」は720ml、税込価格1,705円。

 

「七本槍」渡船(冨田酒造・滋賀県)

▲出典:地酒はしもとやURL

 
「渡船(わたりぶね)」は1895年に滋賀県立農事試験場で生まれ、広く栽培されていたが、背丈が高く病害虫にも弱いなど栽培が難しく、一度は姿を消した「幻の米」。2004年に同試験場に残っていた一握りの種籾から栽培を成功させ、復活を遂げた。この米を使った「七本槍 純米 渡船 77%精米」は、低精米ながらにキレのいい酸味が米本来の旨味を引き立てる。720ml、税込価格1,595円。

 

「亀の翁」亀の尾(久須美酒造・新潟県)

▲出典:かがた屋酒店URL

 
コシヒカリやササニシキ、あきたこまちなど、現存する多くの米の祖先といわれる「亀の尾」。明治初期に見つかり、品質のよさから「西の雄町、東の亀の尾」と称されるほどに。しかし、病害虫だけでなく農薬などにも弱いことから姿を消したが、1980年ごろ、久須美酒造が栽培に成功。その復活劇をモチーフにした「夏子の酒」は漫画、ドラマとも大人気に。「清泉 亀の翁 純米大吟醸」は品のある香りと、雪解け水のような清らかな味わい。720ml、税込価格4,290円。

 

意外な産地の酒

「江戸開城」(東京港醸造・東京都)

▲出典:はせがわ酒店URL

 
東京23区にある唯一の酒蔵。港区芝という都会のど真ん中にある4階建ての小さなビルで、四季醸造で1年間を通じて酒を醸す。「江戸開城」はタンクごとに使用酵母や醸造方法、アルコール度数を変え、その時々で仕上がる酒の香りや味わいが変化する。「日々変化し続ける東京」をイメージしているのだとか。「純米吟醸 原酒 山田錦」は720ml、税込価格2,200円。

 

「横山五十」(重家酒造・長崎県壱岐島)

▲出典:重家酒造URL

 
長崎県北部に位置する離島、壱岐は、麦焼酎発祥の地。重家酒造は大正時代の創業当時、焼酎とともに日本酒も造っていたが、一度廃止。2013年、23年ぶりに復活し、2年後には中田英寿氏がプロデュースする日本酒プロジェクト「SAKENOMY」に「純米大吟醸横山五十」が選ばれた。2018年、新しい酒蔵が完成。果実を思わせるフルーティーでジューシーな味わいは、冷やしてワングラスで。「横山五十WHITE」は720ml、税込価格1,985円。

 

「WAKAZE」(フランス・パリ)

▲出典:WAKAZEURL

 
「日本酒を世界酒に」をビジョンに掲げ、2016年創業。2019年にはパリ郊外に醸造所「KURA GRAND PARIS」を設立し、米、水、酵母はフランス産にこだわり酒を仕込む。代表作「THE CLASSIC」は、甘酸っぱい果実味がありながらキレがよく、飲み飽きしない味わい。720ml、税込価格2,475円。

 

「国稀」(国稀酒造・北海道)

▲出典:国稀酒造URL

 
北海道北西部の海辺の町、増毛町。かつてニシン漁で栄えたこの地で明治時代から酒造りを手がける国稀酒造は、日本最北の酒蔵だ。暑寒別岳連峰を源とする清らかな水、山田錦や五百万石に加え、地元で栽培された「吟風」を使い、雄大な自然の中、米の旨味が感じられながら、すっきりとした飲み口の酒を醸し続ける。「純米 吟風国稀」720ml、税込価格1,257円。

 

復活蔵の酒

「蒼空」(藤岡酒造・京都府)

▲出典:藤岡酒造URL

 
明治時代に創業し、屈指の酒どころ京都・伏見に蔵を構えていた藤岡酒造。最盛期には8000石を生産していたが、1995年に廃業。しかしその7年後、5代目の蔵元が一人で酒造りを再開する。そうして生まれた「蒼空」は、その名のとおり青空のような爽快でスッキリとした味わい。ベネチアングラスを使った曲線が美しいボトルにもこだわりが感じられる。「純米・美山錦」は500ml、税込価格1,870円。

 

「Ohmine」(大嶺酒造・山口県)

▲出典:大嶺酒造URL

 
江戸時代後期から酒造りをしてきた大嶺酒造は1955年、一度その幕を下ろす。その後、半世紀の時を経て、2010年に復活した。新しく建てた蔵はデザイン性が高く、ファッションデザイナーとコラボするなど、日本酒の新たな世界の発信に意欲的。地元産の米と、不老長寿のご利益があるとされる青く透き通った「弁天の湧水」で仕込む酒は、フルーティーで上品な味わい。毎月1日発売の「大嶺3粒 火入れ 山田」は720ml、税込価格2,310円。

 

「春心(はるごころ)」(西出酒造・石川県)

▲出典:西出酒造URL

 
1913年に創業するが、経営難から1996年、蔵を譲渡。新しい経営者のもと酒造りは続けたが、先代が急逝。「現代の名工」と称される能登杜氏のもとで修行した5代目が奔走し、2014年、蔵を買い戻し、代々受け継がれていた銘柄「春心」を復活させた。自然と共生しながら家族で仕込む酒は、米そのものの味が素朴に感じられる優しい味わい。限定の「純米吟醸「春の訪れ」は720ml、税込価格3,300円。(C)YOSHITAKA AMANO

 

「AKABU」(赤武酒造・岩手県)

▲出典:いまでやURL

 
岩手県大槌町で銘柄「浜娘」をはじめとする地酒を手がけてきた赤武酒造。東日本大震災で発生した津波で、蔵が流されてしまった。2年後、場所を盛岡市に移し復活。そのとき新ブランド「AKABU」を立ち上げた。「赤武酒造の新しい歴史を創る」を合言葉に集まった若者たちが酒造りに挑む。赤い冑が描かれたラベルが目印。「AKABU純米」720ml、税込価格1,430円。

 

四季を通じて日本酒を味わおう

米、米麹、水。たったそれだけの原料で作られる日本酒は、しかし、米や酵母の種類、造り方、何より、造り手のこだわりや思いによって、その香りと味わいは多種多様だ。

 
温度帯の幅広さ、そしてさまざまな料理との相性など、日本酒は懐が深い。旬の食材と季節の日本酒を楽しめば、四季のある日本だからこその幸せを堪能できるに違いない。

 
 

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