とっておきの話

つながる、その先へ【キャプテンの航空教室】

文/梅野英智 イラスト/高橋潤

本日もご搭乗いただきありがとうございます。今回はコックピット内の情報ネットワークと、さらなる安全運航への取り組みのお話をさせていただきます。

 
JALグループでは、国内初となる無料の機内Wi-Fiサービスを2017年から開始いたしました。現在では国際線でも有料サービスがスタートし、充実したプログラムをお楽しみいただけます。

 
そんななか、これまでコックピットでは、音声による管制通信や、文字によるテレタイプで情報通信が行われていました。しかし、近年の急激な気候変動に対応するため、私たちパイロットの間でも「最新の気象情報を、Wi-Fiを使って視覚的に確認したい」というニーズが高まってきました。

 
一般的に、人間が1分間で読める文字は400~600字程度といわれています。それが画像になると文字の約7倍、動画になると約5,000倍近い情報を伝えられるそうです。音声や文字で、台風や梅雨前線の様子をコックピットに伝えるのがいかに難しいか、ご想像いただけるのではないかと思います。

 
コックピットにもネットワーク環境があれば、最新の気象情報を詳しく確認できるはず。しかし、導入は容易ではありませんでした。機内に搭載された計器が電波の影響を受けないかなど、整備士や地上職社員、パイロットによるさまざまな検証・改修を経て、ついにコックピットで気象情報を表示するアプリケーションを安全に利用できるようになりました。今後は対応機材を順次増やしていく予定です。

 
以前より搭載されている気象レーダーは、パイロットの“第二の目”といっても過言ではありません。しかし、最大でも約20分後までの雲の状況しか見ることができないのが現状です。これからは気象レーダーに加え、もう一つの“目”を使うことができます。人工衛星から撮影された雲の動きや、コンピューターが予測した揺れのエリアの最新情報を俯瞰することができる気象アプリケーションを利用した“第三の目”です。

 
さらに、上空の“大気の乱れ”を航空機のコンピューターで自動計算のうえ、地上に報告し、上空に“大気の乱れ”の地図を作るEDRという仕組みを使ったプロジェクトも現在進行中です。2020年、航空機からEDR情報の自動送信に本邦で初めて成功しました。

 
2021年1月からは大気の乱れを検知した際に、後続機に警報を出すなど、EDRを利用した情報共有が始まっています。この取り組みにより、私たちは大気の乱れを見る“第四の目”を手にしました。

 
自然のなかを飛行する航空機がまったく揺れないということは、残念ながらこの先もないでしょう。しかし、これらの“目”と今まで培った知見を組み合わせることで、より揺れの少ない空域を選択し、お客さまにとって心地よい時間を少しでも長くすることができると考えています。快適なフライトを目指し、決して終わらないチャレンジが続けられているのです。

 

梅野英智 Hidetomo Umeno
JAL
ボーイング767型機 機長
出身地:北海道
趣味:釣り、料理
座右の銘:Where there is a will,
there is a way.

 

(SKYWARD2021年3月号掲載)
※記載の情報は2021年3月現在のものであり、実際の情報とは異なる場合がございます。掲載された内容による損害等については、一切の責任を負いかねますのでご了承ください。

 
 

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