とっておきの話

フライトパフォーマンスに影響する大切なトレーニングとは?【キャプテンの航空教室】

文/渡邉圭太 イラスト/高橋潤

今日もJALグループの翼をご利用いただきまして、誠にありがとうございます。今回は私たちパイロットが訓練中はもちろん、副操縦士、機長になった後も日々取り組んでいるイメージフライトについてお話ししたいと思います。

 
その名のとおりイメージフライトとはイメージトレーニングのことで、頭のなか、想像のなかで飛行機を飛ばすことですが、実はとても奥が深いのです。飛行教官やベテラン機長はひと目でその人がしっかりとイメージフライトをしてきたか否かをわかってしまうほど、実際のフライトのパフォーマンスに大きく影響します。

 
そのやり方は人それぞれ異なりますが、最も一般的なものは、コックピットのポスターの前に座って操縦桿を握ったフリをして行うイメージフライトです。たくさんあるスイッチの位置や決められた手順、チェックリストの実施要領などを覚えるために、訓練初期は繰り返し練習します。ひと通りの手順に慣れてきたらいよいよ想像の世界の大空へ飛び立ちます。自室というコックピットに座り、エア操縦桿をゆっくりと手前に引いてテイクオフ。その後の巡航、降下、着陸と一連の飛行をすべてイメージします。このとき、大切なのは常にうまくいっているイメージだけでなく、風が強いなどの悪天候や何か不測の事態が発生した状況などを考え、その時々に応じた注意点を頭に叩き込み、対応できるように繰り返し練習することです。実際のフライトでは想像とは違う場面に遭遇することも多々ありますが、しっかりと準備し訓練を重ねてきているので、常に冷静に対応することができます。

 
このイメージフライトですが、何年も繰り返していると面白いことに徐々に上達していきます。最初はただのポスターにしか思えなかった計器類も、不思議なことに動いて見えてきます。スイッチを操作するときの感覚やコックピットに聞こえる音なども感じられるようになり、イメージが実際のフライトに少しずつ近づいていく感覚を覚えます。まさにイメージフライトの達人です。

 
ここで余談ですが、皆さまも子どもの頃に“〇〇ごっこ”といった遊びをされた経験があるかと思いますが、私も子どもの頃に布団に潜って兄弟で“パイロットごっこ”をしていました。一緒に遊んでいた弟も現在、同じ機種の機長になりました。思えば、あのパイロットごっこが私たち兄弟のイメージフライトの原点であったのかなと思います。実際に弟と一緒に乗務したことがありますが、“パイロットごっこ”からいつしか共にイメージフライトをするようになり、そしてお客さまにご搭乗いただき本物の空を飛行したときの感動は計り知れないものでした。

 
私たちはより安全な運航を皆さまにご提供できるよう、日々イメージフライトに取り組んでいます。本日ご搭乗されている便のパイロットもイメージフライトの達人です。皆さまどうぞ安心して、引き続き快適な空の旅をお楽しみください。

 
渡邉 圭太
渡邉圭太 Keita Watanabe
J-AIR
エンブラエル170/190型機 機長
出身地:千葉県
趣味:バスケットボール、映画鑑賞
座右の銘:実るほど頭を垂れる稲穂かな

 

(SKYWARD2020年8月号掲載)
※記載の情報は2020年8月現在のものであり、実際の情報とは異なる場合がございます。掲載された内容による損害等については、一切の責任を負いかねますのでご了承ください
※最新の運航状況はJAL Webサイトをご確認ください。

 
 

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