とっておきの話

JALパイロットに必要な「大切なもの」とは【キャプテンの航空教室】

文/立岡孝弘 イラスト/高橋潤

空を飛ぶ。幼少の頃の私にとって夢のようなことでした。大空から眺める景色ははるか遠くまで続き、地上の人々や車は豆粒のように見える。夜になれば街は星をちりばめたように輝き、海を越えれば見知らぬ雄大な世界が広がっている。

 
私にとってあまりに非日常的な世界は、いつの日か夢とも思わなくなりました。しかし大学時代のある日、忘れていた夢が手の届くところに現れました。JALの自社養成パイロットの募集です。

 
日本で初めて自社養成制度を導入したJALは、長年にわたり多くのパイロットを輩出し、今も年に70名前後のパイロット訓練生を採用しています。今回は、JALのパイロット採用と養成制度の特徴についてご紹介します。

 
選考は面接、飛行適性、身体検査など多岐にわたります。しかし、それらには飛行機に関する知識や経験は全く必要ありません。理系か文系か、国籍、性別も問いません。さまざまな人に挑戦するチャンスがあります。

 
ただ皆に共通していることがあります。それは、学生時代に高い目標を持って諦めずに何かをやり遂げてきたこと。そこに辿り着くまでに困難に遭遇し挫折を経験しながらも、その場から逃げずに正面から向き合い、自ら考え、仲間の声に耳を傾け乗り越えてきたこと。そして同じように苦しんでいる仲間を支えてきたこと。これらが後の厳しい訓練における「大切なもの」となっていきます。

 
採用試験に合格したパイロットの卵たちは、入社後に地上での業務を経て、約3年間の訓練に挑戦します。JALがアメリカで実施している一部の訓練は、世界から見ても特徴的な体制です。多くの航空会社が教官業務を他社に委託するなか、JALは現役パイロットが旅客機の業務から離れて訓練生を直接指導。それによって初期の段階から技術的なことだけでなく、プロのパイロットになるための人間性も養われるのです。

 
お客さまの命をお預かりする責任ある仕事に、甘えや妥協は許されません。厳しい訓練では、思い通りにいかず悔し涙を流すこともあります。でもそんなときに支えになるのが、学生時代から培ってきた「大切なもの」。そして大きな壁を乗り越えたとき、空は飛ぶことの喜びを教えてくれます。期待と不安が入り混じっていた顔つきは自信に満ちた凜としたものへと変わり、プロフェッショナルのパイロットが誕生します。

 
私も自社養成パイロットとして大空へ挑戦してきました。そして今、幼い頃夢に見ていた世界を、飛行機の最前列で現実のものとして見ています。空を飛ぶ喜びと責任を感じながら。

 
今年も採用の季節がやってきました。光り輝く未来のパイロットに会えることを楽しみにしています。本日のご搭乗、ありがとうございました。

 
prof
立岡孝弘 Takahiro Tatsuoka
JAL
ボーイング777型機 機長
出身地:東京都
趣味:トレッキング、カヤック
座右の銘:初心忘るべからず

 

(SKYWARD2020年3月号掲載)
※記載の情報は2020年3月現在のものであり、実際の情報とは異なる場合がございます。掲載された内容による損害等については、一切の責任を負いかねますのでご了承ください
※最新の運航状況はJAL Webサイトをご確認ください。

 
 

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