「当機はあと約10分で沖縄那覇空港に着陸いたします」。
客室乗務員からのアナウンスに誘われ、眼下に広がる多種多様な生き物を育むやんばるの深い森やエメラルドグリーンに輝く美ら海に心躍らせていると……。エンジン音が大きくなり、どうも機体は加速しつつ上昇している様子。胴体にタイヤを引き込む音が聞こえ、主翼の前後の縁からせり出していたフラップという小翼も格納される。
操縦室からは「着陸進入を開始しておりましたが、管制指示により現在着陸を見合わせております。那覇空港の北東にございます那覇港から出港した大型船舶が着陸コースの真下を通過中で、着陸機と大型船舶の間に安全な間隔が確保できていないため10分ほど旋回します」とのアナウンス。お客さまのなかには、このような状況に遭遇したことがある方もいらっしゃるかもしれません。
那覇空港の2018年度の離着陸回数は、伊丹空港や新千歳空港を超える約16万4000回で、1日あたり約450回も離着陸があります。一方、那覇港への大型船舶の出入港は2019年度の上半期だけでも約600隻もあったようで、大型客船寄港数も年々増加の一途を辿っています。そのような状況から、離着陸のピークの時間帯だと、たった10分間でも5機が船舶通過の影響を受けることになるのです。
現在繁忙を極める那覇空港では、2020年3月末の供用開始を目指し、沖合に第2滑走路を急ピッチで増設中です。新滑走路は主に着陸用となるため、前述のような大型船舶通過による上空待機などはゼロになる見込みです。また、今まではバードストライク(航空機と鳥との衝突)時も、点検のため滑走路を一時的に閉鎖していましたが、滑走路が2本あればもう一方の滑走路へ着陸することができるため、これまでの混雑は大幅に解消されることが期待されています。
沖縄の玄関口として国内外の各地を結ぶ拠点空港であるとともに、県内の各離島と本島を結び、県民生活や経済活動を支えるインフラとして重要な役割を担う那覇空港。那覇空港第2滑走路は将来にわたり、世界に開かれ多くの人や文化が行き交う、国内外のネットワークの拠点となっていくことでしょう。また、新たに管制塔も建設されました。高さは羽田に次ぐ国内2位の88m。世界遺産でもある琉球王国のグスク(城)の城壁をイメージした淡い黄土色です。万国津梁、世界への架け橋へと成長する那覇空港のこれからにご期待ください。
野田昭洋 Akihiro Noda
日本トランスオーシャン航空
ボーイング737-800型機 機長
出身地:福岡県
趣味:旅行、バスケットボール、
ミュージカル
座右の銘:艱難汝を玉にす
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