旅の寸景

精錬所から現代アートの聖地へ —岡山県・犬島 【知られざる日本の離島】

文・撮影/加藤庸二

▲定期船が島に近づくと無表情に立つ煙突が見えてくる。その古色をたたえた姿から産業遺産であることがわかる。

瀬戸内海は多島海の美しい景色が魅力的だ。とりわけ岡山と香川の両県にまたがる海域には多くの島があり、そこには福武財団によるさまざまなアートで彩られた島々が点在する。

 
その一つ、犬島はかつて銅の精錬所があった島である。大正14(1925)年に精錬所は廃止され、工業用煙突や煉瓦(れんが)造りの関連施設などが朽ちゆくままに残り、古色をおびた静謐(せいひつ)な産業遺産としてこの島の独特な雰囲気を醸し出していた。

 
そしてもう一つ、精錬所より以前からこの島は犬島石と呼ぶ石材の産地として知られる。硬くて良質なその花崗(かこう)岩は大坂城や江戸城の築城、鎌倉の鶴岡八幡宮の大鳥居などに使われたものだ。

 
民家

▲昭和のレトロ感溢れる民家。

 
そして現在。犬島はこの島が今まで歩んできた精錬所と採石という2つの産業を核とする“現代アート”で、新たな島につくり替えられた。過去の遺跡と呼ぶべき建物を生かしながら石の島の生活と景観をよみがえらせているのは見事である。

 
DATA|都道府県:岡山県 島の周囲:3.6㎞(*) 人口:44人(*)
*日本離島センター刊『SHIMADAS』調べ。

 

犬島へのアクセス

地図
東京(羽田)、沖縄(那覇)から岡山桃太郎空港へ、JALグループ便が毎日運航*。宝伝港から犬島港へフェリーで約10分。

 
加藤庸二
かとう ようじ/島フォトグラファー。国内の有人島で上陸可能な430余島のすべてを踏破した島のスペシャリスト。著書に『日本百名島の旅』『島の博物事典』など。

 

(SKYWARD2020年9月号掲載)
※記載の情報は2020年9月現在のものであり、実際の情報とは異なる場合がございます。掲載された内容による損害等については、一切の責任を負いかねますのでご了承ください。
※最新の運航状況はJAL Webサイトをご確認ください。

 
 

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