海に潜りアワビやサザエを獲る漁師を“あま”と呼ぶ。海女、海士、海人と書き、いずれも同じ呼び方だ。
潜水漁を行う場所は日本各地にあり、例えば石川県舳倉島、長崎県の壱岐島、対馬島や玄界灘の小さな島々などでも盛んである。
古くから九州北部の沿岸一帯などに、潜水漁を専門とする海の民が暮らしていた。民俗学の世界では、この地方で海に潜り獲物を獲った人々のことを“海人”と呼び、とりわけ鐘崎(現在の福岡県宗像市)の潜水漁師たちのことを“鐘崎海人”と名づけて、卓越した潜水技術を持つ集団として一目置いていた。
九州北部の潜水集団だった彼らがどうして各地に広まったのだろうか。それは、鐘崎海人が潜水技術とともに航海術にも長けていたからだった。たくましい漁場開拓の精神は日本海の島々へと広がり、遠く能登半島沖の舳倉島にまで及んだのである。
小呂島はその鐘崎海人を始祖とする島。夏の潜水漁解禁の日、磯からは海人の声が聞こえてくる。それは夏の到来を告げる島の風物詩でもある。
DATA|都道府県:福岡県 人口:192人(*)
*日本離島センター刊『SHIMADAS』調べ。
小呂島へのアクセス
日本各地から福岡空港へ、JALグループ便またはコードシェア便が毎日運航。姪浜渡船場から小呂島へ船で約65分。
加藤庸二
かとう ようじ/島フォトグラファー。国内の有人島で上陸可能な430余島のすべてを踏破した島のスペシャリスト。著書に『日本百名島の旅』など。
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