旅の寸景

クラクフ 聖マリア教会の尖塔から【とっておきの一枚】

文/飯田未知(スカイワード編集部) 撮影/武田正彦

「本当にすてきな、美しい街ですよ」

 
クラクフを訪れたことのある知人はみな、口を揃えてこう言った。

 
「街のシンボル・聖マリア教会の尖塔にもぜひ、登ってみてください」

 
ポーランドの古都、クラクフ。奇跡的に第二次世界大戦の戦火を免れ、旧市街は今も中世の面影を残す。往時の建造物が立ち並び、石畳の路地を馬車が闊歩する。中央広場に面した聖マリア教会の尖塔からは、毎時ちょうどに時を告げるラッパの音が鳴り響く。

 
訪れた5月、本来なら爽やかな陽気のはずが、迎えてくれたのは冷たい雨。明くる日もその次の日も、そのまた次の日も、雨はずっと降り続いた。灰色の雲がのっぺりと空に張りつき、いっこうに晴れる気配はない。濡れた石畳も風情はあるが、やはり街は暗くメランコリックに映る。これでは尖塔に登っても、雨に烟った陰鬱な街並みしか望めないだろう。明日にはもう帰国の途につくというのに。

 
夕方、カフェでひと休みして冷えた体を温め、再び外に出たとたん、これまでの雨が嘘のように止んだ。見る見るうちに雲が切れ、青空が顔をのぞかせる。日が差し込むと、街は一瞬にして輝きの色を帯びた。 

 
聖マリア教会に急ぐ。間もなく閉門だ。ギリギリ滑り込み、高さ約80mの尖塔の展望窓へ螺旋階段をひたすら登る。息を切らして辿り着いた先に待っていた風景が、この一枚。数日にわたり厚く垂れ込めていた雲が、今はドラマチックな空を演出している。

 
止まない雨はないのだ。

 

クラクフへのアクセス

東京(羽田または成田)よりJAL便にてヨーロッパ各地(ロンドン、ヘルシンキ、フランクフルト)で乗り継ぎ、ヨハネパウロ2世・クラクフ・バリツェ国際空港へ。空港から市内へ車で約30分。
 
 

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