旅の寸景

究極の機能美の船箪笥【職人の想いを形に②】

文/東野りか 撮影/富貴塚悠太

北前船の寄港地として栄えたのが、福井県・三国。三国で作られた、芸術品とも言える「船箪笥」を当時のままに復元する職人を訪ね、モノづくりへの情熱と船箪笥の魅力を探る。

 
「船箪笥」をご存じだろうか? その名のとおり、船のなかで使用するタンスのこと。江戸から明治にかけて日本海側で運航されていた北前船に積み込まれ、物の売買で得た莫大なお金や証文などを保管するために活用された。主に山形県・酒田、新潟県・佐渡、そして福井県・三国が産地。大切なものをしまい込むので、堅牢で頑丈、セキュリティーが万全なのはもちろんのこと、美術品と言ってもいいほど美しい。北前船の主である廻船問屋の財力を象徴するので、装飾も豪奢だ。その機能と美を兼ね備えた船箪笥に魅了されたのが、匠工芸代表取締役の村田浩史さん。

 

▲左/大切なものをしまうため、内部の構造は“からくり”になっている。右/からくりの種明かしをしてくれる村田さん。

 
「40数年ほど前に、当時異業種に就いていた私の親方が船箪笥の虜になり、製作を始めました。船箪笥の生産が途絶えていて、誰からも作り方を教われないので独学にならざるをえなかった。残っている資料を参考にしたり、船箪笥を解体して研究したり、試行錯誤を繰り返して、仕様も素材も意匠もそのまま復元しているのは我が社だけです」とは驚くが、匠工芸の職人たちのこだわりと情熱にも頭が下がる。

 

▲錠前部分を、たくさんの種類のヤスリで丁寧に削っていく。05.錠前につける金具一つも、すべて手作り。

 
船箪笥は相当な重量だ。にもかかわらず、もし船が遭難しても水面に浮かび、内部に水が入らない構造になっている。しかし、復元したものが実際に浮くか否かは不明だったので、前述の親方は思い立つ。断崖絶壁で有名な東尋坊の海に投げ込もうと……。「壊れることもなく浮きました! でも少し水が入ったので、さらに改善を重ねたのです」と村田さん。彼ら“完璧主義者たち”によって生み出された船箪笥は、不思議なことに現代の住宅にもマッチするので、かなり高額にもかかわらずオーダーが絶えない。真にいいものは、いつの時代も評価されるのだろう。

 

▲船箪笥一つについている鍵の束。作品のお問い合わせは「有限会社 匠工芸」0776-34-3848

 

今に伝わる、「三国祭」


福井県指定無形民俗文化財の「三国祭」は北陸三大祭の一つで、山車(やま)屋台に6.5m程の迫力満点な人形が乗るのが特徴です。約260年の歴史があるこのお祭りと共に、日本海に育まれた湊町、三国の栄華と人々の気概は今も変わらず受け継がれています。お祭りの時期は毎年5月。2019年は5月19日(日)~21日(火)での開催となります(山車が巡行するのは20日のみ)。お祭りに関する詳細は、専用ウェブサイトからご確認ください。問.三国祭保存振興会
www.mikunimatsuri.com/

 

福井県へのアクセス

東京(羽田)、沖縄(那覇)空港から小松空港へ、JALグループ便が毎日運航。小松空港からはリムジンバス、電車、レンタカーなどで福井県へ。

 

(SKYWARD2018年11月号掲載)
※記載の情報は2018年11月現在のものであり、実際の情報とは異なる場合がございます。掲載された内容による損害等については、一切の責任を負いかねますのでご了承ください。

 
 

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