島の天井がぽっかりと抜けたような不思議な眺め。波と風の音だけが響くビーチで出迎えてくれたのは、この島にすむ野生の海鳥でした。『A WORLD OF BEAUTY 2021』の1月の舞台は“隠されたビーチ”の異名を持つ秘境、メキシコのプラヤ・エスコンディーダ。神秘に包まれた無人島での撮影秘話をお届けします。
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日本から1万km以上の大移動。島の入り口は海のなか
プラヤ・エスコンディーダのあるマリエタス諸島の最寄り空港は、メキシコのプエルト・バヤルタ国際空港。日本からの直行便はなく、ロサンゼルスもしくはダラス・フォートワース経由などのルートで向かいます。空路の所要時間は短くても15時間以上、日本から1万km以上の大移動です。撮影が行われたのは11月でしたが、空港に降り立つと半袖で過ごせるほどの陽気に、日本との違いを肌で感じる撮影クルーたち。空港からマリエタス諸島への船がでる海沿いのエリアへ移動し、国が認可している観光船へと乗り込みいざ、出発。
およそ30分船に揺られ、プラヤ・エスコンディーダのある島の付近に到着。島の内側にあるビーチへの入り口は、干潮のタイミングにならないと現れません。まさに“隠されたビーチ”です。
マリエタス諸島は自然保護区のため、プラヤ・エスコンディーダに上陸できるのは、国が認可している観光ツアーの参加者のみ。1回に上陸できるのは15人まで、時間は30分間と厳しい制限があります。船はビーチへの入り口を通れないため、泳いで上陸するしかありません。ボートに乗ったまま海の上で待機。順番になるとヘルメットが与えられ、ライフジャケットを着て75mほど泳いで島の内部につながる洞窟へ。波にもまれ、岩の天井に頭をぶつけそうになりながら泳いで洞窟をくぐり抜けます。
人と自然が出会う、奇跡的な瞬間をとらえる
撮影機材など必要な道具もすべて抱えながら泳ぐしかありません。なんとかビーチに辿り着くと、ほっとする間もなく写真と動画の撮影をスタート。この日は素晴らしい青空。そしてバレエダンサーの七瀬莉砂さんが舞い始めると、島にすむ海鳥が近づき、共に舞うかのように羽ばたきを見せました。この奇跡的な瞬間を収めた1枚がカレンダーの表紙に。フォトグラファー・谷口京氏も「この光景は今も強く心に残っています。まさに“一期一会”の絶景でした」と語っています。
鮮やかな色彩と、美しい自然が広がるリゾート
撮影を終えたクルーは島から戻り市街地の探索へ。プエルト・バヤルタはメキシコ有数のリゾートエリアで、ショッピングやグルメも充実しています。メキシコらしい色鮮やかな雑貨や衣類はお土産にぴったりで、思わず買い込む女性クルーたち。現代的なオブジェが建つ海岸通りはマレコン(遊歩道)と呼ばれ、散策するだけでも異国情緒を満喫できます。
賑やかな中心市街地から離れた郊外には、素朴な町の表情が。こちらはマリエタス諸島への船が発着するビーチ、プンタ・デ・ミタ。ツアーコンダクターのボスは、メキシコ原産の犬種・チワワの愛犬と一緒に仕事場へ。砂浜を散歩する人々、波乗りを楽しむサーファーたち、露天でドーナツを売る人などなど、のんびりとゆるやかな時間と、町の人たちの陽気な笑顔が印象的です。
街なかで、ホテルで、至るところにタコス!
メキシコ名物といえば、タコス。至るところで食すことができます。街なかの小さなお店のテイクアウトでも、できたての味は絶品。ホテルのブッフェにもタコスコーナーがあり、焼きたてをもとめる人が列をなします。スーパーや売店で販売されているスナック菓子は、ライム味やチリ味が多く、そんなところにも土地の個性を感じられました。
メキシコのお土産スナップ
メキシコ、プラヤ・エスコンディーダへのアクセス
東京(羽田)からダラス・フォートワース国際空港、もしくはロサンゼルス国際空港を経由してプエルト・バヤルタ国際空港へ。プエルト・バヤルタからマリエタス諸島のプラヤ・エスコンディーダへは上陸許可を得ている観光ツアーに参加し船で約30分。※空路のルートは一例です。※乗船時間は、ツアーの発着場所、天候等によって異なります。
カレンダー撮影:谷口 京
たにぐち けい/フォトグラファー。1974年京都市生まれ、横浜育ち。日本大学芸術学部写真学科を卒業後、ニューヨークを拠点に独立。雑誌や広告撮影のかたわら「人と自然の関わり」をテーマに世界約60カ国を旅したのち帰国。ヒマラヤをはじめ国内外の山に登る冒険好き。