世界中の多くの人が待ちわびるクリスマス。1年に一度訪れる特別な日を、世界の人々はどのように過ごすのだろう?クリスマスの歴史や世界のクリスマスの祝い方や過ごし方、特別な料理をご紹介。日本とはひと味違ったクリスマス文化に触れてみよう。
目次
クリスマスはなんの日?
イエス・キリストの生まれた日として広く知られているクリスマスだが、実際の新約聖書にはイエス・キリストの誕生日の記載はない。そのため、“誕生を祝う日”=「降誕祭」という表現が正しい。
日本におけるクリスマスの起源は、1552年フランシスコ・ザビエルが来航した際に、山口県で執り行われた降誕祭にあるといわれている。その後、幕府によりキリスト教が禁止されたため、クリスマスと悟られないよう「冬至祭り」という名を使用したそうだ。
そして、明治時代以降のクリスマス商戦がきっかけで日本人にも馴染み深いものになり、現在では、家族や恋人と過ごす年に一度の特別な日として定着した。
世界のクリスマスの祝い方
日本におけるクリスマスといえば、街はイルミネーションやクリスマスツリーで華やかに彩られ、恋人同士でプレゼント交換を行ったり、子どもはサンタクロースからプレゼントをもらったりするのが定番。しかし、国によってクリスマスの過ごし方はさまざま。実際にどのような風習があるのだろう。
【イギリス】恋人も一緒に、家族で過ごす特別な日
アメリカや日本のクリスマスは、主にイギリスの風習を受け継いでいる。一般的にカトリックの影響が強い地域では12月23日に飾り付けを行うが、イギリスではクリスマスを迎える1カ月ほど前からツリーやリースの装飾がはじまる。
クリスマスイベントの開催も早く、ロンドンの「オックスフォード・ストリート・クリスマス・ライト」が始まるのは11月中旬(2021年は11月22日)。同様にライトアップされているリージェントストリートとの交差地点では、眩いばかりのライトに感動し、みな立ち止まる。
また、イギリスではサンタクロースをもてなすのが伝統となっている。各家庭では、リンゴや、レモン、ドライフルーツを煮込んでつくるクリスマスの定番料理の「ミンスパイ」とブランデーなどのお酒を用意し、サンタクロースを迎え入れるのだ。
イギリスでは、家族とゆっくりと過ごしながら、普段よりも手の込んだ家庭料理を食べる日。恋人も家に招き、家族と同じように食卓を囲む。クリスマスは1年に一度、家族とその大切な人たちとの絆を深める日なのである。
【ドイツ】クリスマスマーケットでお祭り気分を味わう
ドイツではクリスマスイブまでの4週間をアドベント(待降節)と呼び、日々を大切に過ごす習慣がある。また、ドイツといえば、この季節の風物詩にもなっている「クリスマスマーケット」。ドイツの冬は夜が長く天気も悪いため、呼び物として人を集めるために定着したといわれている。
各地でマーケットは開催されるが、東部に広がるザクセン州の州都ドレスデンの「シュトリーツェル・マルクト」はドイツで最も古く、ロマンティックなクリスマスマーケットとして世界中から観光客が訪れる。
メイン会場のアルトマルクト広場はもちろん、中世にタイムスリップしたような感覚を味わえるマーケットもあり、中世風の衣装を纏った鍛冶職人や木工職人による実演が行われている。
クリスマスマーケットでは、スパイスの効いた甘いホットワイン「グリューワイン」や「シュトレン」が販売される。シュトレンとは、生地のなかにレーズンやレモンピール、ナッツなどがふんだんに練り込まれたパン菓子で、降り積もる雪のように粉砂糖がまぶされている。
クリスマスを待つ待降節の間は、これを毎日スライスして少しずつ食べていき、当日を待ちわびるのがドイツの伝統的なクリスマスの過ごし方なのだ。
ドイツのクリスマスマーケットを特集した記事はこちら>>
ドイツ 聖なる4週間
【フィンランド】極寒の町で心温まるクリスマス
フィンランドの首都ヘルシンキにある有名なショッピングストリート「アレクサンテリンカトゥ通り」は、公式クリスマス・ストリートでもあり、11月の終わりからクリスマスのイルミネーションが点灯し、ショーウィンドウも美しく飾り付けられ、ギフトを買い求める人々でいっそうの賑わいを見せる。
このライトアップは、戦後の困難な時期に希望の光を灯すものとして1949年に始まった。通り沿いのショップやカフェにもキャンドルが点り、街は明るく、雪の降り積もった白い路面を照らす。
元老院広場で開催されるクリスマスマーケットはヘルシンキ最古のマーケットであり、ヘルシンキの人たちにとってはクリスマスの象徴のようなイベントだ。広場の真ん中には子どもたちが無料で楽しめるメリーゴーラウンドが設置され、レトロな雰囲気を演出する。
美しい手工芸品やクリスマスオーナメント、地産の魚や肉、総菜などを売る露店が100以上も広場に並び、なんとサンタクロースが毎日やってくるのだそう!
12月になるとフィンランドの人たちは「ピックヨウル」(pikkujoulu)と呼ばれるクリスマスパーティーでホリデーシーズンをお祝いする。そこで欠かせないのがホットワイン「グロッギ」。スパイス入りのワインにアーモンドやレーズンを散らし、大人向けにはウォッカを少し加えることもある。マーケット散策で冷えた体を優しく温めてくれる、伝統的なクリスマスの飲み物だ。
また、フィンランドの人たちが家族で穏やかに過ごすクリスマス当日、朝食に食べるのがミルク粥「リーシプーロ」(riisipuuro)。米をミルクで炊き、その中に渋皮をむいたアーモンドを1粒だけ入れる。取り分けた皿にアーモンドが入っていたら、その人には幸運が舞い込むという。
なお、フィンランドには12月25日よりも前に、「ルシア祭」という大切なお祝いがある。これはフィンランドに住むスウェーデン語を話す少数の人々によって守られてきた伝統で、12月13日の聖ルシア・デーに行われる。
その年に選ばれた「聖ルシア」が純白のドレスに身を包み、ヘルシンキ大聖堂で冠を授けられたあと大階段を降りる儀式が見られる。馬車に乗り、サンタクロースや小人たちも加わるパレードは、この日にしか出合えないフィンランドのクリスマスの光景だ。
【ギリシャ】ツリーではなくボートで祝うクリスマス
華やかなクリスマスとは対照的に、信心深いギリシャ正教の教徒は、クリスマス前は厳格な期間として各地で約40日間の“断食”を行う。正確には、断食ではなく食事制限で、肉や魚、卵、牛乳などの乳製品をはじめ、お酒なども禁止。その代わり12月25日を迎えると、ギリシャのクリスマスが始まる。
第二の都市、テッサロニキのアリストテレオス広場で行われるクリスマスマーケットなどでは、ツリーだけでなく、きれいに飾り付けられたクリスマスボートもライトアップされる。諸説あるものの、海洋国家のギリシャではたくさんの男たちが冬の荒海に出て行き、家で待つ妻たちが帰りの無事を願い、船を飾り付けたことが由来とされる。祝いと祈りの願いを込めた特別な一日なのだ。
ギリシャのクリスマスに欠かせないのが「メロマカロナ」。オリーブオイルやはちみつを材料とした卵型のお菓子で、スパイスやオレンジの風味を楽しめるクッキーのような味わい。クリスマス期間中、動物性食品の摂取が禁じられているギリシャ正教の教徒でも食べられるデザートで、各地で販売される。
【アメリカ】世界中のクリスマス文化が体験できる
世界各地から移民を受け入れてきた背景から、クリスマスも世界中の祝い方が混在するアメリカ。基本的にはイギリスなどヨーロッパを中心とした習慣と、メキシコなど中南米の祝い方が大半を占めている。
クリスマスシーズンになると街中がイルミネーションで煌めき、華やかさを増す。ニューヨークやロサンゼルスなどの大都市ではパレードが開催され、多くの観光客でにぎわうが、一風変わったイベントも注目を浴びる。
カリフォルニア州のニューポート・ビーチでは、美しく装飾されたヨットやボート、カヤックなどが集まり航行する「クリスマス・ボート・パレード」が開催される。ニューヨークタイムズ紙が、アメリカでトップの祝賀行事の一つに評するほど注目度は高く、多くの参加者や観戦客が訪れる。クリスマスにエンターテインメントを掛け合わせた祝い方は、アメリカならでは。
アメリカを代表するクリスマス料理が、七面鳥の丸焼き。各家庭に大きなオーブンが一般的にある欧米らしい食文化だが、日本はかならずしも家庭にオーブンがなかったり、七面鳥に馴染みがないことから、チキンで代用される。
一羽の七面鳥を丸ごとオーブンでじっくりと焼き上げてつくるローストターキーは、さまざまなごちそうが乗ったテーブルの真ん中を飾る、まさにクリスマスの定番メインディッシュ。家族みんなでシェアすると、食べるのも楽しくなる。
【ロシア】ロシア正教のクリスマスは新年1月7日
ロシアのクリスマスはロシア正教のユリウス暦に基づいて1月7日に定められている。12月25日はカトリックのクリスマスのため、特別なお祝いはしないという人は今でも多い。とはいえ、ヨーロッパ諸国同様に12月から年明けにかけては街がイルミネーションで彩られ、大きなクリスマスツリーやマーケットが広場に登場し、多くの人で賑わう。
モスクワの赤の広場には、通常11月下旬から1月の半ばにクリスマスマーケットが立ち、立派なクリスマスツリーとともにクリスマスの気分を盛り上げている。マーケットではグジェリ焼きの食器やホフロマ塗りのマトリョーシカといったロシアらしい土産物が売られているほか、ホットハニーワインなどの屋台も。移動遊園地やスケートリンクも併設され、子どもたちに大人気だ。
そしてロシアのクリスマスといえば、「青いサンタクロース」。白く長いひげをたくわえ、青いガウンをまとった「ジェド・マロース(=寒波のおじいさん)」が、子どもたちにプレゼントを届けにやってくる。魔法の杖と底なしの袋を持ち、孫娘のスネグーラチカ(雪娘)を連れているのが定番のスタイルだ。
【オーストラリア】真夏の海辺にサンクロース
オーストラリアは南半球に位置しているため、真夏にクリスマスが訪れる。そのため、クリスマスパーティーは海やプールで行われることもしばしば。サンタ帽を被り、水着でお祝いをしている姿は、見慣れた日本のクリスマスと比べると不思議な光景。
一方で、パレードやイルミネーションなど恒例のイベントも開催されており、イエス・キリストの誕生ストーリーを仮装行列や劇などで祝うクリスマスページェントはテレビ中継をされるほど。アデレードで開催される「The Magic of Christmas in the heart of Adelaide」は1933年にはじまり、約32万人が参加する真夏の一大行事。その名のとおり、アーティストたちによる魔法のようなパレードを目にすることができる。
また、クリスマスといえばローストチキンなど手の込んだ料理を想像するが、オーストラリアではバーベキューを行うのが習慣。肉や新鮮な海の幸を豪快に焼いて、みんなでクリスマスパーティーを行う。
【ブラジル】世界最大のクリスマスツリーが登場
ブラジルも南半球のため、クリスマスは真夏。家族と過ごす大切な日で、プレゼントを交換し合ったりする。街はイルミネーションで彩られるが、リオデジャネイロには世界最大といわれる、高さ約85mのクリスマスツリーが登場する。それはロドリゴ・デ・フレイタス湖の湖上で輝き、その美しさと迫力は圧巻だ。街はクリスマスイブの夜に一番の盛り上がりを見せ、花火やバーゲン、ショーなどイベントが開催される。ブラジルならではのサンバも忘れてはならない。
さらに、ブラジルの伝統的なカクテル、カイピリーニャを飲んで盛り上がる人も多い。このカクテルはサトウキビを原料とした蒸留酒「カサッシャ」をベースとして、ライムと砂糖とクラッシュドアイスで作られるシンプルなもの。甘くて爽やかな味で、真夏のクリスマスにもぴったりだ。
世界の文化を知って、クリスマスをもっと特別な日に
体験してみたいクリスマスはあっただろうか?まだまだ、日本では知られていないクリスマスの祝い方はたくさんある。年に一度の特別な日を、日本以外で過ごしてみるとステキな思い出になるかもしれない。
世界各国でクリスマス気分が街を覆い始める12月。この機会に、ぜひ足を運んでみてはいかがだろう。
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