旅への扉

愛され続けるなにわのおうどん [Vol.3]

文/井上こん 撮影/鮫島亜希子

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「おはようさん!」。早朝、なんば南海通の商店街に威勢のいい挨拶が響く。声の主は、「なんばうどん」の名物店員“タケさん”こと竹村利光さん。開店するやいなや朝食か、あるいは飲み明かした後のシメか、会社員や学生らしき人々で、店はたちまちいっぱいに。

 

いつでもおうどん

なんばうどん

うどん

▲左/ベテラン店員・タケさんが目にも留まらぬスピードで盛り付ける「なんばうどん」。右/店頭には「浪花ともあれうどんが大阪の味でっせ」とタケさん直筆の標語が掲げられる。

 
厨房を泳ぐように動き回るタケさん。右手で麺を茹で、左手で丼を温め「先、食券ね!」「ありがとさん!」と全員に声を掛ける。きつねうどんが1分とかからず登場。常連客に倣い、丼に口をつけて勢いよく啜ると、「はぁ〜」と温泉に浸かった時のような声が出た。

 
なんばうどんの目にも留まらぬ盛り付け

▲味・値段・早さの三拍子が揃う

 
だし、麺、油揚げの、なんと分かち難い一体感。お値段も、40年前に120円だったかけうどんが、いまだに170円とは頭が下がる。「イスは高くてもうどんは安いの!」。イヒッと笑うタケさん。と思えば、次の瞬間その目線は、今まさに券売機の前で悩む客に向けられていた。

 

なんばうどん
電話:06-6643-4005
住所:大阪府大阪市中央区難波3-2-14
営業時間:6:00~24:00
休日:なし

 

き田たけうどん

き田たけうどんのキムラ君

▲遊び心溢れる創作うどん「キムラ君」。キムチとラー油の好相性に箸が止まらなくなる。

 
ここまで昔ながらの店を紹介してきたが、最後は未来の話で終わろう。日本橋の、ともすれば通り過ぎてしまいそうな小路にある「き田たけうどん」。大阪で讃岐うどんの知名度が低かった頃に店を始め、成功を収めた“大阪讃岐”の草分け的人物、木田武史さんが今年の春オープンさせた新店だ。

 
き田たけうどん店主

▲麺の細さは以前の4.0mmから1.3mmへ大きく変更。

 
うどんはこれまでの店の極太麺からガラリと変わり、しっとりと唇に吸いつく官能的な細麺へ。お酒も豊富に揃えて新たな客層を呼ぶ算段だ。真新しい店内を見渡した木田さん。「ここは自分にとって実験の場です」と目を細めた。思考を形に、大阪のうどんの可能性を追求したい。そんな本懐が、目の前の麺一本一本を通じて伝わってくるような気がした。

 
き田たけうどん店先

▲一見すると大人の秘密基地のような佇まい。カウンターの向こうにはたくさんの日本酒が。

 

き田たけうどん
電話:06-7509-4392
住所:大阪府大阪市浪速区難波中2-4-17
営業時間:11:00〜15:00
休日:月

 

 

大阪へのアクセス

全国の主要空港から伊丹空港、関西国際空港までJALグループ便およびコードシェア便が毎日運航。

 
osaka

 

(SKYWARD2018年12月号掲載)
※記載の情報は2018年12月現在のものであり、実際の情報とは異なる場合がございます。掲載された内容による損害等については、一切の責任を負いかねますのでご了承ください。

 
 

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