旅への扉

愛され続けるなにわのおうどん [Vol.2]

文/井上こん 撮影/鮫島亜希子

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「きつねうどん」を知らない人はいないだろう。元祖は丼池筋の小さなうどん屋「うさみ亭マツバヤ」といわれている。初代・宇佐美要太郎氏が、かつて奉公したすし店のいなりずしをヒントに、うどんに油揚げを別添えで出したのが始まりだ。

 

なにわ発祥のおうどん

うさみ亭マツバヤ

うさみ亭マツバヤのきつねうどん

▲「うさみ亭マツバヤ」のきつねうどん。

 
当初はおかず的な立ち位置だった油揚げがなぜ? ここからが偶然性ゆえ面白い。「祖父も予想しなかったでしょうね。お客さんらが、うどんにお揚げを入れはるとは」と3代目・芳宏さんは目尻を下げる。これぞ僥倖。かくしてきつねうどんは、現在の形に落ち着いたのであった。

 
昆布と煮た油揚げ

▲昆布は1年熟成させて使用。

 
油揚げは京都から取り寄せ、利尻昆布や屋久島の本枯節、サバ節などの二番だしで3日かけて味を入れる。ふっくらと炊かれた、その堂々とした姿たるや。いただきます! とかぶりつくと、だしのうま味と甘じょっぱさが渾然一体となって口中を満たし、ソフトな麺がするりと喉を通る。「忙しない時代ですからねえ。『ここの味は変わらんわ』と言われるとそりゃあ幸せで」。

 
うさみ亭マツバヤ店主

▲左/縁起がいいとして“こんこんうどん”と呼ぶお客さんも。右/明治26(1893)年創業。「学校から帰るといつもだしの香りがしてねえ」と3代目・芳宏さん。

 

うさみ亭マツバヤ
電話:06-6251-3339
住所:大阪府大阪市中央区南船場3-8-1
営業時間:11:00~19:00(月~木)、~19:30(金・土)
休日:日・祝日

 

美々卯 本店

美々卯の料理

▲色鮮やかな食材に心が躍る。アク抜きのうえ、あらかじめだしで炊いておく野菜も。

 
大正14(1925)年創業の「美々卯」が誇る「うどんすき」にもおよそ100年の歴史がある。主人・薩摩平太郎氏はある日、牛すきの残り汁でうどんを煮込んだところ、その美味さに感動。「この味を最初から出したい」と試行錯誤の末、利尻昆布やメジカ節のだしで、海老やハマグリなどの食材14~15種と麺を煮込むスタイルを編み出した。色の取り合わせも美しく、ハレの料理としての風格も漂ううどんすきは、種々の食材を煮込むことでうま味を重ね、それを喉ごしのいいうどんに吸わせる計算だ。

 
特注鍋のうどん

▲特注鍋は麺を取りやすいよう縁が外にカーブを描く。

 
驚くことに食材や仕込み方は、ほぼ当時のままだとか。本店の店長・平山立志さんはこう言う。「いろいろと試しましたが、ちょっと変えるとバランスが悪くなるんです。世に出た時、既に完成形だったんだと思います」

 
美々卯本店の店長

▲平山さん。昭和初期に再建された本店前で。

 

美々卯 本店
電話:06-6231-5770
住所:大阪府大阪市中央区平野町4-6-18
営業時間:11:30~21:30(L.O.20:30)
休日:日・祝日

 

千とせ 本店

千とせの肉吸い

▲肉吸いと共に、玉子かけご飯の注文率も高い。

 
大阪といえば、こんな一風変わったうどんもある。いや、正しくは“元・うどん”だろうか。道具屋筋裏の角地に建つ「千とせ」は、連日行列ができる人気店。しかし、皆さんのお目当てはうどんに非ず、名物「肉吸い」だ。30年ほど前、吉本新喜劇の俳優・花紀京氏が二日酔いで店を訪れて、「うどん抜きの肉うどん」とトリッキーな注文をしたことから生まれた。

 
『味覚馬鹿』(北大路魯山人著)の一節。

『味覚馬鹿』(北大路魯山人著)の一節。

 
「うどん屋でうどんをいらんとは失礼な人やと思いました(笑)。でも今は花紀さんの『大阪は麺やない。だしや』という言葉の意味がわかります」と3代目・森井一光さん。創業当時からシンプルを信条とし、だしは鰹節一本、醤油と砂糖で味を調えるだけ。半熟卵を薄切り牛肉と絡め、「ズズッ!」と音を立ててかっこむ。ほのかな甘みとコクがしみじみと広がり、余韻まで愛おしい。たしかにこれは、二日酔いにうってつけですなあ、と強~く実感。

 
千とせの店主

 

千とせ 本店
電話:06-6633-6861
住所:大阪府大阪市中央区難波千日前8-1
営業時間:10:30~14:30(売り切れ次第終了)
休日:火

 
Vol.3へつづく

 

 

大阪へのアクセス

全国の主要空港から伊丹空港、関西国際空港までJALグループ便およびコードシェア便が毎日運航。

 
osaka

 

(SKYWARD2018年12月号掲載)
※記載の情報は2018年12月現在のものであり、実際の情報とは異なる場合がございます。掲載された内容による損害等については、一切の責任を負いかねますのでご了承ください。

 
 

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