旅への扉

愛され続けるなにわのおうどん [Vol.1]

文/井上こん 撮影/鮫島亜希子

「麺はコシ!」の風潮もどこ吹く風。 そう、大阪のうどんは昔からだしが命。麺はまあるくソフト。 人々は親しみを込めてそれを“おうどん”と呼ぶ。そして今、新たな潮流も。フウフウ、ズズッ……冬はうどんを美味くする。 

 

美味しいだしのヒミツ

ヒガシマル醤油

ヒガシマル醤油

▲左/長さ3mの櫂(かい)の先から空気を送り、発酵を促す。静かな空間にプチプチと、もろみが弾ける音が響く。右上/広大な敷地内を揖保川の水が流れる。右下/充塡量は1日約10万リットル。

 
「今何時や」「九つで」で知られる上方落語『時うどん』にこんな一節がある。「うどんちゅうのは粉が少々悪うても、だしが肝心や」。上方らしいコミカルな表現ではあるが、実はこれ、あながち大げさでもないらしい。麺のコシの有無が取りざたされがちな昨今、大阪のうどんにおいてはことのほか、だしが重要視される。なぜか。

 
それにはまず、関西でおなじみの淡口醤油から学ばねばなるまい。そもそもなぜ“東の濃口、西の淡口”なのか。その理由を探しに、兵庫県たつの市へ。ここには約400年続く「ヒガシマル醤油」の本社がある。「龍野が淡口醤油発祥の地となった背景には、立地条件も関係しています」と教えてくださったのは、同社研究所長の古林万木夫さん。「この辺りは昔から播磨平野の小麦や大豆、赤穂の真塩といった、醤油に欠かせない良質な原料に恵まれていました。また町を流れる揖保川の伏流水は鉄分が少なく、醤油に色が付きにくい。そのことから、素材の味を大切にする懐石料理や精進料理で重宝されるようになり、関西では欠かせない存在になりました」

 
だし

▲だしと淡口醤油の関係が日々研究される。

 
試しにスプーンに垂らした数滴をそのまま口に含んでみた。醤油と聞いてイメージされる、舌がすぼむような刺激はなく、丸みを帯びたうま味とふくよかな芳香が心地いい。また、米を糖化しているからだろうか。余韻にほのかな甘みさえ感じる。風味や色だけではない。近年の研究では、濃口醤油より、だしの風味を際立たせることが判明。美しい琥珀色には、関西の食文化を花開かせた計り知れぬパワーが潜んでいた。

 

ヒガシマル醤油
電話:0791-63-4567
住所:兵庫県たつの市龍野町富永100-3
URL:www.higashimaru.co.jp
商品は全国のスーパー、インターネットで購入可。工場見学も行っている。

 

小倉屋山本 本店

山本博史氏

▲左/山本さんは山崎豊子氏の甥にあたる。右/だし昆布をはじめ、さまざまな加工品も店先に。

 
だし文化前進の呼び水となった、昆布と大阪の深い関係にも触れておこう。「大阪のだし文化は、昆布を中心に栄えてきました」。山崎豊子氏の小説『暖簾』に登場する昆布問屋のモデルとなった、嘉永元(1848)年創業「小倉屋山本」代表取締役社長の山本博史さんはそう語る。

 
昆布の表面

▲昆布表面の白い粉は糖類の一種“マンニット”。うま味の証し。

 
江戸時代中期、蝦夷地から敦賀、下関と経由する北前船によって大量の昆布が大阪へ集まると、それまで京都で用いられていた真昆布や利尻昆布といった上等な品が、庶民の間でも広まった。まさに“昆布の夜明け”である。最盛期には小倉屋山本を含め、約200社もの昆布問屋が割拠。1800年代の錦絵には店頭に並べられた巨大な昆布を物色する人々の姿が描かれている。昆布は今日に受け継がれる和食の礎であり、変革の象徴なのである。

 
小倉屋山本

▲家紋の紅葉は「小倉百人一首」の小倉山を詠った歌にちなむ。

 

小倉屋山本 本店
電話:06-6251-0026
住所:大阪府大阪市中央区南船場4-10-26
営業時間:10:00~17:30
休日:土・日・祝日・年末年始

 
Vol.2へつづく

 

 

大阪へのアクセス

全国の主要空港から伊丹空港、関西国際空港までJALグループ便およびコードシェア便が毎日運航。

 
osaka

 

(SKYWARD2018年12月号掲載)
※記載の情報は2018年12月現在のものであり、実際の情報とは異なる場合がございます。掲載された内容による損害等については、一切の責任を負いかねますのでご了承ください。

 
 

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