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この機内誌をお読みの方のなかには、ご旅行で沖縄へ向かっている方もいるのではないでしょうか?さて今回は、琉球エアーコミューター(以下、RAC)で運航している日本で一番短い路線*について、飛行機の話を交えて紹介させていただきます。
沖縄本島から東へおよそ370kmに位置する南大東島と北大東島を皆さまはご存じでしょうか。RACでは月・金・土・日曜日は北大東島から南大東島へ、火・水・木曜日は南大東島から北大東島へ運航しています。コックピットから太平洋に浮かぶ南北大東島を眺めると、キラキラと光る太陽と青い海に映え、格別なものがあります。
南大東空港と北大東空港の距離は約13kmで、飛行機で運航する路線としては“日本で一番短い路線”です。気象条件がよければ経路を自由に飛行し、離陸してから着陸するまでおよそ7分で島の間を移動することができます。
路線の特徴は言うまでもありませんが、離陸してから着陸するまでが非常に忙しいことです。出発前に副操縦士と、離陸してから着陸するまでの流れをブリーフィングし、共通認識の共有を図ります。具体的には、チェックリストを行う手順や飛行経路の確認、管制官との交信のタイミングなどを話し合います。
飛行時間7分という短いフライトではありますが、必ず着陸装置を収納する手順となっています。なかには、離陸してすぐに着陸するのだから、わざわざ着陸装置を収納しない方が効率的なのでは、と考える方もいらっしゃると思います。そこで、着陸装置を収納する理由をご説明いたします。
RACで使用している「DHC8-Q400CC」という飛行機は、客席数が19を超える旅客輸送を目的とした航空運送事業で使用されるもので、航空法では飛行機輸送T類という種類に分類されます。これには「強度」「構造」「性能」に関して厳しい基準が設けられており、離陸時の「性能」に関して、エンジンが一つ不作動になっても安全に上昇することが求められています。離陸後も着陸装置が下りたままだと空気抵抗を受け、上昇性能が低下してしまいます。したがって路線の長さにかかわらず、機体が地面から離れ、上昇を開始したら着陸装置を収納することが条件となっているのです。そして、この例のように、さまざまな基準に従い操作することで、飛行の安全性は確保されています。
この“日本で一番短い路線”に興味を持っていただけましたら、想い出の1ページとして「南北大東島のフライト」を実際に体験してみてはいかがでしょうか?乗務員一同、皆さまのご搭乗をお待ちしております。*国土交通省航空輸送統計より固定翼における区間距離に基づく。
加藤悟 Satoshi Kato
琉球エアーコミューター
DHC8-Q400CC機長
出身地:群馬県
趣味:ランニング
座右の銘:「人生とは、思考がつくり上げるものである」
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