国民の祝日の一つである「春分の日」。馴染みがある日のはずなのに、何となく春が来た? くらいのイメージで、具体的にはどんな日なのか……と思う方も多いのではないだろうか。そこで今回は春分の日について徹底解説。基本を押さえて、来るべきこの日を有意義に過ごそう。
この記事では、
・春分の日とは?
・春分の日は何をする?
・春分の日に食べたいもの
などを紹介する。
▼あわせて読みたい人気記事
お彼岸とは?2024年はいつ?意味や由来、食べ物などを解説
目次
春分の日とは?
昼と夜の長さが同じになる日
2024年の春分の日は、3月20日(水)。太陽は赤道上にあり、地球のどこにいても昼と夜の長さが同じになる日だ。しかし、厳密にいうと実際には昼のほうが少し長いそう。
この日は国民の祝日で、戦後の1948年に公布、施行された「国民の祝日に関する法律(祝日法)」により制定。祝日法上の春分日は毎年3月20日~21日ごろのいずれか1日とされており、実際には日付が指定されていない。祝日法の春分の日の項目をみると、太陽が春分点を通過する瞬間が「春分」と定義され、春分を含む日のことを「春分日」とし、「自然をたたえ、生物をいつくしむ日」とされている。
「春季皇霊祭」と呼ばれる行事に由来
また春分の日は、もとは旧法にあった「春季皇霊祭(しゅんきこうれいさい)」から改称されたとある。春季皇霊祭は、現在でも行われている宮中祭祀の一つ。毎年2回、春分の日と秋分の日(秋季皇霊祭)に斎行される大祭だ。
大祭とは、皇居の宮中三殿で天皇自らが斎行し、御告文(おつげぶみ)を奏上する祭祀のこと。この日は歴代の天皇、皇族の御霊が祀られる皇霊殿にて「春季皇霊祭の儀」など祭祀行事が行われ、皇族の方々も出席されることが多い。春分の日、そのお姿がテレビなどで報道されるのを、見たことのある方もいるのではないだろうか。
この祭祀は、戦前の日本では非常に重要な儀式の一つとされてきた。だからこそ、国民の祝日になったのだ。今年は、そのように思いをはせてみると、より気持ちが引き締まるかもしれない。
また、それにあわせて伊勢神宮でも、春分の日に春季皇霊祭の拝殿向かって左側から遙拝するという。地域の各神社でも、春分祭などを行い、そのなかで遙拝式を執り行うことも多い。こうした点から、やはり現代になっても、春分の日は日本人にとって大切な日だということがわかる。
先祖を供養する日
もともと、この時期はお彼岸で、先祖を供養する日でもある。2024年の春のお彼岸は、3月17日(日)が彼岸入り、3月20日(水・祝)の春分の日が中日で、3月23日(土)が彼岸明けとなる。この期間に寺院では、彼岸会として法要を行う。
中日を中心に期間中は、ご先祖様への感謝の意味を込め、お墓参りや仏壇の掃除、お供えなどの供養を行い、それにあわせて自分自身の日頃の行いを振り返り、見つめ直すのが古くからの習わしという。
春分の日は、太陽が真東から出て真西に沈む日。浄土思想では、極楽浄土は西方にあり、西方に沈む太陽を礼拝することが習わしだ。煩悩を払うため西に沈む太陽に祈りを捧げ、極楽浄土へ思いをはせる。
春分の日、秋分の日は「此岸と彼岸が最も通じやすい日」と考えられたことから、この日に西に向かって拝むと、功徳が施されるとも信じられた。それから、春分の中日を中心に供養を行うようになったという。
自然をたたえ、生物をいつくしむ日
春分とは季節の指標として使われる二十四節気の一つで、春の中間に当たる。古代中国が起源で、日本では平安時代から使われているという。農業が中心の古代の生活において、農作物の作付け、収穫を行う際の時期を見極めるのはとても重要なことだ。1年間の農作業のスケジュールにより正確を期すために、細かく季節を分ける必要があった。
そうして生まれたのが二十四節気だ。この春分を目安に、農作業を本格的に始めることが多いのだとか。それは現代まで続く、暮らしの知恵といっても過言ではない。未来に向けて豊作を祈願する、という意味でも大切な日だ。
私たちの日常においても、寒さに耐えていた草木が徐々に芽吹くのを見ると、春の到来を思いワクワクせずにはいられない。その意味でも、春分の日が自然をたたえ、生物をいつくしむ日とされているのは納得できる。日本において春分の日は、二十四節気の春分と彼岸が結び付いて、特別な日となっているわけだ。
なぜ毎年違う? どうやって決まる?
ところで、国民の祝日のうち、春分の日と秋分の日は、具体的な日付が定まっていない。そして、春分の日の場合、その年によって3月20日だったり、21日だったりする。一体どっち?と思われる方も多いだろう。
春分の日と秋分の日は、国立天文台が毎年の最初の官報で翌年の暦要項を発表している。国立天文台は、日本の天文学を担う研究機関だ。Webサイトなどで二十四節気および雑節について細かく計算し、日時を割り出した暦要項を公表しているので、参考にするといいだろう。
そちらを確認すると、2024年の春分=太陽の黄経が0度になる日時は、3月20日の12時06分だということがわかる。太陽が春分点を通過した日が春分の日になるのは、先に説明したとおり。よって今年は3月20日なのだ。
地球は自転しながら、太陽の周りを回っており、1年の間にほぼ同じ日に同じ場所を通るのだが、その公転日数は正確にいうと365日ではなく365+6時間程度かかるそう。つまり、毎年約6時間ずれていくため、春分の日の日付がずれることがあるのだ。2020年はうるう年だったため3月20日の12時50分というように。
しかし、どこまでもずれ続けるのではなく、うるう年によってきちんと調整されているという。ちなみに、今年2024年からは、うるう年を含む3年間は3月20日が春分日で、残りの1年が3月21日という組み合わせ。よって、本来は年によって日付が変わるものと理解した方がいいかもしれない。
ただし、2056年から2091年までは、毎年の春分日が3月20日になると予想されている。2050年までの春分の日、秋分の日の計算予測も国立天文台のWebサイトで公表されているので興味がある人はチェックしてみてほしい。
2022年の秋分の日は9月23日|意味や由来、行事食などの風習を解説
「春分」と二十四節気
さて、ここで春分の日と関わりの深い二十四節気について詳しく見ていこう。例えば、よくテレビの天気予報などで「今日は暦の上では春です」と伝えているのに、実際はまだ寒い、と感じることはよくあることだ。
いにしえの時代から人々が暦として使用していた太陰暦は、月の運行のみに基づいていて、実際の季節とずれが生じる。そこでより正確に、細かく季節を把握するための暦として、地球と太陽の位置関係を基に求めた太陽暦、二十四節気が生まれた。
国立天文台のWebサイトでは、二十四節気は「1年の太陽の黄道上の動きを視黄経の15度ごとに24等分して決められている」と定義されている。簡単に言えば、地球から見た太陽の通り道を24等分したもの。
ちなみに英語では二十四節気のことを、24 solar termsと表現するからわかりやすい。さらに細かく説明すると、太陽の運行を基に1年を春夏秋冬の4つの季節に分け、12の節気と12の中気に分類し、季節の移り変わりを言葉で表現したものが二十四節気である。
重要な節気には、立春、立夏、立秋、立冬などがあり、季節の始まりを示すこれらをまとめて「四立」と呼ぶ。重要な中気は、北半球では1年で昼の時間が最も長い日を夏至、夜の時間が最も長い日を冬至、昼と夜の長さが同じ日を春分、秋分とした。夏至、冬至、春分、秋分をあわせて「二至二分」と呼ぶ。
また、「二至二分」と「四立」をあわせて「八節」という。冬至と春分の中間に当たる日を立春とし、この日が暦の上では春の始まりになる。また、二十四節気以外にも、季節の目安となる雑節があり、「節分」「彼岸」「土用」などはそれにあたる。近頃はカレンダーなどにも二十四節気が記されているので、参考にしてみては?
世界各地の春分の日
春分の日では、北半球が春、南半球が秋で、北半球ではこの日を境に日が長くなり、秋分の日は、この逆になる。ヨーロッパでは、春分の日をもって春の始まりとすることが多い。
復活祭は、基本的に春分の日の後の、最初の満月の次の日曜日に行われる。中国では春分の日に、太陽神を祀る行事が行われ、太陽神に小さな丸餅「太陽糕(たいようこう)」を供えるという。卵を立てる、という風習もあるとか。
ペルシャ語で元旦(新しい日)を意味するノルワーズは、春分の日に行われる祝いの祭事でイラン、中央アジアを中心に幅広い地域で行われるという。世界的に見ても、春分の日を境に春を寿ぐ祭りや行事を開催する地域が多いようだ。春を迎える喜びは、全世界共通といえるのかもしれない。
春分の日は何をする?
春分の日、秋分の日のそれぞれを中日とし、その前後3日間をあわせた7日間がお彼岸となる。これをきっかけに、冬の厳しい寒さや夏の暑さに別れを告げる、という目安にも。春のお彼岸を「春彼岸」、秋のお彼岸を「秋彼岸」と区別して呼ぶこともあるようだ。
よって、春分の日は、そのメインとなる日のため、ご先祖様への感謝の意味を込め、お墓参りや仏壇の掃除、お供えなどの供養を行い、それにあわせて自分自身の日頃の行いを振り返り、見つめ直すのが古くからの習わしだ。お墓参りの手順については下記の「お彼岸」のページを参考に。
また春分の日には、太陽が北緯35度22分のラインを真東から昇って真西に沈む。その際、西から出雲大社(島根県)、大山(鳥取県)、元伊勢(京都府)、竹生島(滋賀県)、七面山(山梨県)、富士山、寒川神社(神奈川県)、玉前神社(千葉県)の上を太陽が通り、一直線で結ばれる。この現象は“ご来光の道”と呼ばれ、各ポイントはパワースポットとして人気となる。今年の春分の日に出掛けてみてはいかがだろうか。
“ご来光の道”の詳細については、以下の記事をご覧いただきたい。
春分の日に神秘的な体験を。“ご来光の道”を構成するパワースポット神社
春分の日にはこれを食べたい
ぼた餅
春分の日だからといって特別に食べるものはないのだが、お彼岸なので、ここはやはりぼた餅を食したい。ところで、ぼた餅とおはぎ……あれ、一緒では? と思えるのだが、実は微妙に違うのだ。
漢字にすると違いがわかりやすい。どちらも、もち米と餡子を使用するが、春はこし餡で牡丹餅、秋は粒餡で御萩というのが一般的だ。餡子の種類が違うのは、収穫時期が違うから。収穫したばかりの秋の小豆は、皮ごと食べられるので粒餡なのだそう。
小豆は邪気を払い、魔除けの効果があることから食され、ご先祖様への供物として普及したようだ。
これ以外では、自然をたたえ、生命をいつくしむ日にちなみ、自然を意識した旬の食材などを選び、食卓に並べてみてはいかがだろうか。料理初心者でも簡単にチャレンジできそうな、春分の日の献立にふさわしい旬の食材を紹介する。ぜひ食してみてほしい。
つくし
つくしは和歌のなかでも季語として扱われる代表的な春の食材。自生しており、田畑や土手などでも気軽に採取できるので、まさに春分の日にピッタリの山菜だ。シンプルにおひたしや天ぷらで。
はっさく
完熟させた「木なり」は、3月中旬ごろが収穫時期とされる。サクッとした食感とほんのりとした苦味がある。そのまま皮をむいてデザートとして。
ハマグリ
「ひな祭り」のお吸い物でお馴染みのハマグリは、春の祝い事の定番食材だ。3~5月ごろが旬なので、春分の日にもふさわしい。菜の花を入れたお吸い物も、春を感じさせる一品。
桜鯛
春の真鯛は、うっすらとしたピンク色になるので「桜鯛」と呼ばれている。キラキラと輝いて見えるのが特徴で、春の訪れを告げるめでたい魚だ。3月ごろから産卵期を迎え、その時期にピンクになるという。塩焼きや煮付けに。
ふき、ふきのとう
日本が原産の山菜で、野生種も多く存在する。ふきのとうは、ふきの花のつぼみを指し、春先に一斉に芽吹く。新鮮なものはえぐみが少なく美味。天ぷらやおひたしで。
自然に触れ、春の訪れを感じてみよう
さて、いかがだっただろうか。いにしえの時代より、重要な国の行事として祭祀が行われていたように、春分の日には、意外にも深い意味や由来があった。それを理解したうえで、春の陽気に誘われてリラックスして過ごしたいところ。
お墓参りもいいけれど、密を避けて少し郊外の野山に出かけてみるのもいいだろう。草花の芽吹きや生物の息づかいを感じられる小旅行がオススメだ。冬の間に鈍った五感が刺激され、リフレッシュできるに違いない。
関連記事