お盆といえばイメージするのは、やっぱり夏休み。子どもや学生のみならず、社会人にとってもある程度まとまった休みとなりやすく、旅行や帰省する方も多いことだろう。その帰省先などで、軒先に吊り下げられた提灯や、迎え火・送り火などに出合ったことはないだろうか。
そう、この時期はご先祖様の霊がこの世に戻って来るといわれており、それをもてなすための行事を行うのが、お盆なのだ。ご先祖様に礼を尽くすために、また大人のマナーとしても、基本的な知識や習慣は押さえておきたい。地域によって、期間、やり方などバリエーションもさまざまで、あまり知られていないことも多い。今回はお盆について深掘りしてみた。
この記事では、
・お盆の意味や由来
・2024年のお盆はいつ?
・お盆に行うべきことや風習
・日本各地でお盆に行われる行事
などを紹介する。
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目次
お盆とは?意味や歴史、風習などを詳しく解説
お盆は先祖の霊を弔うために行われる、一連の夏の行事のことを指し、現代では日本の夏を彩る風物詩といっても過言ではない。名前の由来は仏教の「盂蘭盆会(うらぼんえ)」。これを省略して、お盆と呼ばれるようになったという。
盂蘭盆会は祖先の冥福を祈って供養する仏教の行事で、「盂蘭盆経(うらぼんぎょう)」と呼ばれるお経で説かれている教えがもとになっている。お釈迦様の十大弟子の一人、目連(もくれん)の亡き母が餓鬼道に落ち、その救済をお釈迦様に相談したところ、同じ苦しみを持つすべての人を救うように諭された。
そこで目連は、「安居(あんご・修行僧が夏の間に行う修行)」が開けた僧たちに食べ物や飲み物などを供してねぎらったという。この安居が開ける日が旧暦の7月15日で、解夏(げげ)とも呼ばれている。そしてこの目連の功徳が餓鬼界に伝わり、亡き母も救われたとされている。
日本では、時代を遡れば奈良、平安時代には、毎年7月15日に公の行事として盂蘭盆会が行われていたという。以後、古来の祖霊信仰と融合し、お盆としてご先祖様を弔う夏の行事として習慣化し、全国各地で広く行われるようになったそうだ。ちなみに、この時のご先祖様への供物が、「お中元」となって現在に至るとか。
2024年のお盆期間はいつ?
お盆は、地域によって時期や期間などが異なる場合も多い。なぜかというと、これは旧暦にするか、新暦にするかによるものだ。明治以前は、日本のどの地方でも旧暦の7月15日を中心に、13日に迎え盆、16日に送り盆が行われていたが、現在では、8月15日を中心にお盆の行事をする地域が多い。
明治5年に新暦が採用されたものの、新暦の7月15日にお盆が行われると、当時国民の8割を占めていた農村部の人たちにとって、その時期が最も繁忙期のため都合が悪かったという。そこで、お盆をひと月遅らせることにして、ゆっくりと落ち着いて大事な先祖の供養をしようということになったわけだ。次に詳しく説明する。
一般的なお盆期間
お盆時期は地域によって異なるが、全国的には8月盆を基準に日程を定めるのが一般的だ。8月15日を中日とし、8月13日~16日にかけてをお盆期間とする場合が多い。会社やお店などがいうお盆休みとは、この時期を指すことがほとんどで、前後の土日などを含めて大型のお盆休みとすることもある。
2024年は8月13日(火)~16日(金)が一般的なお盆期間となり、8月10日(土)〜12日(月)の「山の日」を含む3連休、さらにお盆明けの8月17日、18日の土日をつなげると、最大9連休。比較的大型連休にしやすい日並びだ。
8月の祝日「山の日」について詳しくはこちらの記事をご参照いただきたい。
地域による違い
東京都、神奈川県などの関東地方、北海道の一部、石川県金沢市、静岡県の都市部などは7月13日(水)~16日(土)で行う7月盆が主流だ。また、沖縄では旧暦盆を「シチグヮチ」と呼び、今も昔ながらの伝統を守ってご先祖様を祀る。家族を大切にする沖縄の人にとって、この行事は一年の中で最も大事なものだという。旧暦盆の期間はその年によって変わり、9月にずれ込むこともあるのだとか。
お盆は祝日ではない
企業の大型休暇やお盆のUターンラッシュなど、世の中の多くの人たちが休みを取るこの期間。「盆暮れ正月」と例えるくらいだから、年末年始と同様に祝日?と思うのも不思議ではない。しかし、内閣府が定める国民の祝日を確認してみると、お盆は休日として定められていない。よって、お盆は祝日ではなく平日扱いになる。
これは昔からの風習が関係する。江戸時代、住み込みの奉公人は「藪入り」と言って、年2回、旧暦の1月16日と7月16日に休みをもらい帰省していたという。この習慣が、お盆休みに発展したのだとか。
しかし、お盆期間中は、平日にもかかわらず公共交通機関がお盆ダイヤになり、休日運行モードになることも。出かける際には、時刻表をチェックするなど注意が必要だ。一方、銀行や市役所などは従来通り。土日、祝日を除き通常業務で営業が行われるので安心して欲しい。
お盆の期間中にやることは?
お盆はご先祖様を弔う行事。かといって、一体何をどう、準備すればよいのか頭を悩ますところだ。端的にいえば、代々のご先祖の霊がお盆の時期に戻ってくるから、その霊をお迎えし、帰るときにはお送りするために、丁寧におもてなしをすると考えればよい。
ちなみに、四十九日の忌明けの後に、初めて迎えるお盆を「初盆」(新盆とも言う)と呼び、故人の霊が初めて里帰りする日となるため、法要を行うなど節目の一つとして盛大に行うことが多い。また、初盆の時はなるだけ外に出歩かない方がよいとか。それでは、ご先祖様を迎え、送る段取りについて、詳し見ていこう。
1日 釜蓋朔日(かまぶたのついたち)
閻魔大王が鬼に命じ、地獄の釜の蓋を開けさせる日のこと。ここでいう地獄とはあの世のこと指し、蓋が開くことでご先祖様が各家に戻ってくることが出来るという。まずは、お盆はここから始まる。
本来の釜蓋朔日は7月1日だが、1カ月遅れでは8月1日となる。その場合は、八朔盆と呼ばれることも。この日に、畑に行き地面に耳を傾けると地獄の釜の蓋が開き、その叫び声が聞こえる、との言い伝えもある。彼岸から戻ってきやすいように、一部の地域では山や里などの草刈りをする。
7日 七夕(棚幡)
7月盆の場合、7月15日頃がお盆となり、その約一週間前となる7月7日の七夕の頃を目安にお盆の準備を始めることが多い。七夕盆の風習がある地域ではこの日を盆入りとし、「盆始め」ともいう。お墓を掃除したり、仏具を洗って清めたりする。
もともと、七夕行事とお盆は関わりが深く、依り代とされていた笹を盆踊りの時に手にして踊ったりした。仏教では、7月7日の夕方に、ご先祖様を迎える精霊棚に幡を備える日でもある。
13日 迎え火
13日の夕方には迎え火を行う。ご先祖様の霊が迷わず帰れるよう、オガラ(皮をはいだ麻の茎)を重ねて燃やし、火を焚く。お墓で行うことも多い。家の玄関口、門戸、道の辻など目印となるわかりやすい場所に、盆行灯を設置し灯す。
また、仏壇に精霊棚(盆棚)を設置し、お供えも行う。代表的な供え物は、キュウリやナスに楊枝や割り箸を刺して、馬や牛に見立てた精霊馬、精霊牛だ。この世とあの世を行き来するご先祖様の乗り物だという。13日に作って、供える。
同時に供えるお迎え団子や水などは、毎日取り替えるようにしたい。その他の供え物としては、初物のフルーツやそうめんなどがおすすめ。お盆の準備などは、地域によってしきたりや慣習などが異なるので、年長者に相談してから準備をするのがベスト。
15日~16日 送り火
14日~15日の間には墓参りを済ませ、余裕があれば親戚、世話になった知人などに挨拶して回る。16日はご先祖様が「あの世」に戻られる日。夕方になったら、迎え火を焚いた同じ場所で、再び火を焚いて、送り火をする。実際の送り火は15日~16日にかけて行われることが多く、16日が盆明けとされる。
全国的に有名な京都の風物詩「五山送り火」も、盆明けに行われる送り行事の一つ。16日の夜、五山に順に火を灯してご先祖様を見送る。地域によっては「精霊流し」「灯籠流し」でお見送りすることも。送り火を行うことで、ご先祖様を無事送り出したことになり、一連のお盆行事が終了する。
15日・16日の晩 盆踊り
盆踊りの歴史は古く、諸説あるが、先祖供養の一環として帰ってきた霊を迎え、無事送り出すための舞として始まったようだ。太鼓を鳴らし、踊られるようになったのは室町時代の頃。以後、宗教的な意味合いは薄れ、地域交流や娯楽といったお祭り行事に発展し、現在に至るという。
陰暦の15日は「十五夜」、そして、16日は「十六夜(いざよい)」で、どちらかの夜は満月のため夜通し明るく、その月明かりを頼りに、かつての盆踊りは夜が明けるまで踊って盛りあがっていたとか。よって、どちらかの晩に行われることが多い。また、全国には500以上の伝統的な盆踊りがあるというから驚きだ。
ちなみに、盆踊りの季語は秋。お盆を締めくくる最終行事として、盆踊りの終了を合図に秋の訪れを感じていたのかもしれない。
その他の行事や風習
花火とお盆も、また深い関係がある。日本で最初に行われた花火大会は「隅田川花火大会」。1732年、大飢饉に見舞われ多くの人がなくなった。時の将軍、徳川吉宗はその慰霊と疫病をおさめるために祭りを行い、花火を打ち上げたことが始まりだ。
以来、花火大会は精霊火(迎え火・送り火)の風習と結びつけられ、お盆あたりに開催されることが多くなったという。また、各地で行われる花火大会も、慰霊や供養を目的とするものが多い。この夏の花火大会は、そんな視点で眺めてみるのもよいかもしれない。
お盆に行われる各地の行事
夏休みを兼ねたお盆休み。せっかくなので、ご先祖様に思いを馳せつつ、お盆ならではのイベントにも参加したい。全国各地で、有名なお盆の行事を紹介する。
五山送り火(京都府)
「五山送り火」は、京都ではおしょらい(お精霊)さん、と呼ぶ死者の霊をあの世へ送り届ける行事だ。8月16日の20時から、京都をぐるりと囲むようにして連なる五山に次々と点火され、大文字、妙法、左大文字、船形、鳥居形が浮かび上がる。
この五つの送り火にはそれぞれ意味があり、京都市登録無形民俗文化財に登録されている。葵祭、祇園祭、時代祭に並ぶ、京都四大行事の一つでもある。いつから始まったのか、起源は定かでないが、江戸時代の文献に紹介されていることから、定着はその頃と考えられている。幻想的な送り火は、一度は見る価値がある。
京都観光Navi
URL:https://ja.kyoto.travel/event/major/okuribi/
精霊流し(長崎県)
初盆を迎えた故人の家族が、その霊を弔うために精霊船(しょうろうぶね)と呼ばれる船をつくり、それを曳きながら街中を練り歩くことによって、死者の霊を送り出す伝統行事。長崎市をはじめ県内の各地で、毎年8月15日の夕方から行われる。
故人の職業や趣味などをもとに趣向を凝らした船の数々を見るために多くの見物人が訪れ、鐘の音や掛け声とともに魔除けの爆竹が豪快に鳴り響くため、さながらお祭りのようだが、あくまでも死者を追悼するための行事である。
ながさき旅ネット
URL:https://www.nagasaki-tabinet.com/event/51798
おわら風の盆(富山県)
富山市八尾町で毎年9月1日~3日にかけて行われる。おわら節という哀愁に満ちた旋律にのって、道筋のあちこちで無言の踊り手たちが踊りを披露するのが特徴。
艶やかで優雅な女踊り、勇壮な男踊り、哀調のある音色を奏でる胡弓の調べなど、独創的で約300年踊りつがれてきた技と伝統は、その趣から人気が高い。期間中は約20万人もの観客が訪れる全国屈指の祭りだ。昔ながらの面影を色濃く残す街並みに、無数のぼんぼりが灯り立ち並ぶ風景は幻想的で、一度は訪れてみたい。
越中八尾観光協会
URL:https://www.yatsuo.net/kazenobon
新野の盆踊り(長野県)
長野県、阿南町で行われる盆踊り。1529年、瑞光院が創建された際に、お祝いとして踊ったことが始まりだという。8月14日~16日の間、夜半から明け方まで商店街の中心に組まれた櫓(やぐら)を囲み住人たちが輪になって夜通し踊る。
扇子と手踊りが特徴で、「すくいさ」「おさま甚句」「高い山」「十六」「音頭」「おやま」などの種類がある。最後の夜には瑞光院の参道下に、新盆の切子灯篭を送る「踊り神送り」が行われ、それを見学した民族学者の柳田國男は「古から伝わる祖先祭祀の姿を今に残す」として高く評価したという。国の重要無形民俗文化財。
南信州民俗芸能ナビ
URL:https://mg.minami.nagano.jp/group/niinobon
渋滞には注意
さて、帰省には車で、と考える方も多いだろう。ガソリン高の昨今、効率の良いドライブは必須条件だ。猛暑の中、大渋滞に巻き込まれないよう、しっかりと計画を練りたいもの。
NEXCO東日本「ドラぷら」では、リアルタイムで最新の渋滞・規制情報を見ることができる。厳しい暑さも予想されるので、ぜひ活用して賢くドライブしたい。
NEXCO東日本「ドラぷら リアルタイム渋滞・規制情報」
URL:https://www.driveplaza.com/traffic/roadinfo/
ご先祖様への感謝の気持ちとともに、ゆく夏の思い出をつくろう!
さあ、待ち遠しいお盆休みがもうすぐやってくる。いつもは何となく過ごしていたという方も、今年はご先祖様や故人に対する供養、感謝の気持ちを持って過ごしてみてはいかが?
そうすることで、いま生きているこの時間や、自分を支えてくれている人への感謝の気持ちが湧き、人生の幸福感アップにつながるのではないだろうか。本記事をぜひ有意義なお盆を過ごすためのヒントにして、思い出深いお盆休みを!
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