キリシタンが遺した石造りの教会
五島列島といえば風光明媚な長崎の島々としてよく知られている。郷土料理や名所巡りで人気のある場所だが、訪れる人々はここが日本のキリシタンの聖地であるということにあらためて気づくことだろう。
安政6(1859)年、五島列島のなかの小さな無人島だったこの島に、隣の中通島から住人が入植する。そのほとんどはキリシタンだった。幕末から明治にかけて起きた宗教弾圧で、住人は他所に逃れ島は一時再び無人となってしまう。しかし信教の自由という時代になると住民は島に戻り、初代の木造建築の天主堂が建てられる。
その後大正6(1917)年、初代の教会に替わり信徒たちの献身的な活動と資金調達によって7年余りの歳月をかけた石造りの教会が完成した。
この教会は初期の信徒でリーダーであったドミンゴ森松次郎という人物の住居跡地に建てられている。五島特産の砂岩を使い、上五島出身で教会建築の名手であった鉄川與助の設計によるものである。
五島は椿の島。與助が設計した教会の内装にはその椿が施されている。重厚で美しいカーブを描く独特な天井の天主堂。ここには敬虔なキリシタンの長い祈りの歴史が刻まれている。
DATA|都道府県:長崎県 島の周囲:8.2km(*1) 人口:15人(*2)
頭ヶ島へのアクセス
東京(羽田)、大阪(伊丹)より長崎空港へJALグループ便が毎日運航。長崎港または佐世保港より高速船で有川港へ。有川港ターミナルバス停から頭ヶ島教会バス停まで約30分。
加藤庸二
かとう ようじ/島フォトグラファー。国内の上陸可能な有人島すべてを踏破した島のスペシャリスト。著書に『日本百名島の旅』『島の博物事典』ほか多数。
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