高菜のようだけれど、茎の部分に何やらこぶらしきものが一つ。見た目のインパクトと愛嬌で独特の印象を残す野菜が「雲仙こぶ高菜」。長崎県の南部、島原半島に位置する雲仙地方の特産です。
高菜の原産は中央アジアといわれ、平安時代には日本に伝わっていたようです。一方、こぶ高菜の先祖とされるのは、雲仙で種苗店を営む人が戦後に中国から持ち帰った種。この地に合う形を成して一旦は根付いたものの、収量の少なさなどから廃れてしまいます。伝統野菜として脚光を浴びるようになったのは2000年代に入ってから。地元の有機農業家が中心となって原種を復活させたのです。
それにしても、一体なぜこぶができるのか? 未だに全容は解明されていませんが、石灰分を含む土壌と清らかな湧き水を併せ持つ雲仙岳のふもとの環境が大きく影響しているようです。強烈な個性の見かけとは反対に、味はクセが少なくあっさり。こぶの部分には甘みがあります。油との相性がよく、加熱するとうま味が増すので、炒め物やパスタの具材に、あるいは白ワインで煮てザワークラウトのようにした一品もお薦めです。
この野菜は10年ほど前に、イタリアに本部を置くスローフード協会から、最も希少価値の高い食材の一つとして「プレシディオ」に認定されました。世界的にも珍しい、こぶのついた葉物野菜。雲仙のパワーを湛えた優しい味わいを、旬の時季に楽しんでください。(談)
●食べ頃:1~3月
●大きさ:40cmほど
●選び方:葉の色が淡い、茎がしっかりしている
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