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世界の年越し事情は?欧米からアジアまで、大晦日の過ごし方

年の瀬が迫ると、年末年始の過ごし方に思いをめぐらせる人も多いだろう。特に一年の最終日である「大晦日(おおみそか)」は、除夜の鐘を聞いたり、年越しそばを食べたりするなど、私たち日本人にとって特別な日である。

 
では、日本以外ではどうだろう。一年を終え、新しい年を迎える準備をする大晦日の過ごし方や風習にまつわる海外の話題をお届けしよう。

 

大晦日は「歳神様(としがみさま)」を迎える日

大晦日は、毎年やってくるので漢字を読める人が多いだろうが、なかなかの難読漢字である。大晦日の「晦日(みそか)」とは、毎月の最終日を指す。12月の晦日、最終日ともなれば、一年を締めくくる重要な日だ。

 
そして、元日は幸運をもたらす「歳神様(年神様とも書く)」がやってくる日でもある。大晦日には、寝ずに過ごし、神様をお迎えする日という習わしもあったようだ。

 

世界の人は大晦日をどう過ごす?

日本では神道などの宗教的な要素がある一大行事だが、世界の国ではどうだろう。今回は、アメリカ合衆国や中国、フランス、スペイン、デンマーク、タイを巡ってみよう。

 

アメリカ合衆国

アメリカの大晦日のイメージ

 
いうまでもないが、アメリカ合衆国は広大な面積を有するため、6つのタイムゾーンがある。つまり、大晦日から新年へのカウントダウンが合計6回も行われることになる。

 
大晦日の過ごし方は日本とはまるで違い、賑やかなお祭りのような雰囲気である。最も大きなイベントは、ニューヨークのタイムズスクエアで行われるカウントダウン。このイベントを象徴するのが「ボールドロップ」だ。カウントダウンと同時に、電飾で飾られたボールが降下し、下がりきると周辺のビルから紙吹雪が舞い散る。

 
この様子はテレビ中継でも放映される。走路尾の封鎖に加えて、エリア内への入場規制により大混雑となる。毎年100万人以上が集まる、誰もが知っている一大イベントだ。

 
家族と過ごすことが多い日本とは違い、友達や恋人とワイワイ楽しく夜更かしをするイベントといった位置づけであろうか。

 

中国

中国の大晦日のイメージ

 
中国ではもともと旧暦に基づいて新年を祝う。そのため、新暦の大晦日と1月1日はそれほど重要視されていない。

 
中国の正月(旧正月)といえば、「春節(しゅんせつ)」である。日にちは、1月下旬から2月中旬で毎年変動する。2020年の春節は1月25日、2021年は2月12日となる。

 
春節の前日から1週間が連休として定められており、この期間は1年で最も豪華な祭りが行われる。特徴的なのが爆竹を鳴らすことだ。それは、昔からの言い伝えによる。昔「年(ニエン)」と呼ばれる恐ろしい怪物が人を襲うなどの危害を加えていたが、この爆竹によって寄せ付けないようにしていたという。しかし近年は、大気汚染や火災が発生することなどから、爆竹を禁止する地域もあるようだ。

 
また、ニエンは紅色を恐れるため、人々は紅色の「春聯(チュンリエン)」と呼ばれる大きな札を家の前に貼る。このほか、春節の期間は、獅子舞や龍舞などの伝統的な娯楽が行われる。

 
春節の連休にはのべ何十億もの人が一斉に移動。年越しの夜に家族や親族が集まって食事を共にする風習がある。年越し料理は、「団円飯(トワンユワンファン)」や「年夜飯(ニェンイエファン)」と称され、とても重視されている。

 
団らんしながらの年越しでは、日本の「紅白歌合戦」のような「春節聯歓晩会(しゅんせつれんかんばんかい)」というテレビ番組を見る人が多い。

 

フランス

フランスの大晦日のイメージ

 
キリスト教圏では、年越しは宗教や伝承などとはあまり関係ないが、華やかに祝う傾向がある。例えばフランスでは、大晦日の夜から年明けにかけて大きな盛り上がりを見せる。

 
最も盛大なイベントは、首都パリのシャンゼリゼ通りを歩行者天国にして実施するカウントダウンパーティーだろう。例年数十万人もの人が集まるといわれ、凱旋門にはプロジェクションマッピングによって、世界の国旗や年明けまでの秒数カウントダウンなどが映し出される。

 
カウントダウンは、23時59分50秒から始まる。盛り上がりは最高潮に達し、年明けと同時に周辺から花火が打ち上げられる。人々はシャンパンで乾杯したり、シャンパンを瓶ごと振ってかけ合ったりするなど、思い思いのスタイルで新年を祝う。

 
もちろん、年末年始の過ごし方は時代とともに多様化している。洞窟でコンサートを催しディナーを楽しんだり、森でオオカミの群れと年を越したりするなど、趣向の変わったイベントやツアーなども増えている。

 

スペイン

▲出典:スペイン観光公式サイトURL

 
スペインでは、ほかの欧米の国と同じく、クリスマスは家族で過ごして、新年を迎える際は友達とパーティーなどをする人が多いといわれている。そのなかで、12月31日の夜中12時、年が変わる時に鳴る鐘の音に合わせて、ブドウを12粒食べる習慣がある。

 
新年を迎えて0時になると、マドリードにあるプエルタ・デル・ソルの鐘が12回鳴り、1回鳴るたびに1粒ブドウを食べる。この鐘の音は、テレビなどでも中継されて、スペイン全土に放送される。なお、「12」という数字は1年が12カ月であることちなんでいるといわれており、12粒すべて食べることができると願いが叶うと言い伝えられている。鐘が鳴り終わるまでに、12粒食べるのは思ったより大変で難しいそうだ。

 
この習慣は、フランスからの影響という説や、1900年代初頭にブドウが豊作すぎて低価格で販売されたことで人々が食べるようになったという説があるが、現在も年末になるとスーパーなどにはブドウが並び、12粒入りのものが売られている。

 
さらに、スペインでは赤い下着が縁起物とされており、履いて年越しをする人も。若者たちは赤い下着をプレゼントしあったりすることもあるという。

 

デンマーク

デンマークの大晦日

 
デンマークの年越しは花火とともにある。住宅街のあちこちで、一般市民が自由に花火を打ち上げる風習が特徴だ。規制も厳しくないため、街を歩いていてもどこから花火が飛んでくるかわからないというスリリングなカウントダウンだ。この日はあたりに煙が立ち込めるほどだという。しかし、負傷者が出ることもあり、安全には気をつけたいところだ。

 
もちろん、花火だけではない。デンマークの人が重要視しているのは、大晦日の18時にデンマーク女王マルグレーテ2世から送られる国民へのメッセージ中継だ。国民に今後の展望などを語りかけ、皆はテレビの前でそれを注意深く聞き心に刻む。テレビでは女王のスピーチに続き、王宮の楽団による演奏やカウントダウンなどが行われる。

 
ちなみにデンマークでは、大晦日が過ぎ正月になると、相手を祝福するため、要らなくなった皿を相手の家の前に投げて割る「皿投げ」の風習がある。

 

タイ

タイの大晦日

 
タイの新年は、新暦の1月1日と、先述した中国の旧正月、タイの旧暦の4月13から15日(「ソンクラーン」という)と、3回もある。

 
新暦の年越しでは、カウントダウンイベントが各地で開催され、なかでも首都バンコクで行われるイベントが最も盛り上がる。主要な場所に多くの人々が集まり、ミス・バンコク・コンテストやレーザー光線ショー、花火の打ち上げなどが行われる。

 
また、バンコクの大型商業施設「セントラル・ワールド」の広場と大通りに屋台などが軒を連ねる。国民的歌手やその年にヒットした人気歌手によるコンサートも行われるなどして賑わうなか、人々は酒食を楽しむ。

 
タイ旧暦の正月は、現在は4月13日から15日に固定されている。太陽が1年の周期を終え、新たな「白羊宮(おひつじ座)」の時期に入ることを祝う日である。仏像や仏塔、年長者の手に水をかけて清める伝統的な行事だ。近年ではエンターテイメント性の強い「水かけ祭り」として広まり、はしゃいで楽しむ人も多いという。

 

地球上のすべての人と年明けを祝おう

歳神様を待ちながら静かに除夜の鐘を聞いたり、家族でテレビを見たりするのが一般的な日本の大晦日だが、海外では少々派手に祝う地域もある。宗教的な意味合いがなく盛大に花火を打ち上げて新年を祝う国があれば、古代からの言い伝えを守り、今でも赤色や爆竹による魔除けなどを大切にしている国もある。

 
もちろん、ここで紹介した過ごし方以外にも、その国や地域ごとにさまざまな伝統がある。このような世界の多様性を知るのは重要なことだ。一年を締めくくる日である大晦日は多くの国の人にとって特別な日だろう。また、地球上のすべての人と新しい年のめでたさを分かち合う気持ちを大切にしたい。
 
 

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